大隅氏、メガネも世界初新素材“ノーベル賞級”

2016年12月11日6時0分  スポーツ報知
  • 8日、スウェーデンで記者会見を行う大隅良典さんと萬里子夫人(共同)

 今年のノーベル医学生理学賞受賞者となった東工大栄誉教授の大隅良典さん(71)が愛用しているメガネは、国内生産量の95%以上を誇る福井県鯖江市で製造されたものだ。最大手の「シャルマン社」が日本の技術の粋を結集させ、8年間の研究の末に開発に成功した世界初の新素材「エクセレンスチタン」を用いた「ノーベル賞級メガネ」が、世界中で売れまくっている。

 見事にたくわえられたアゴひげとともに大隅さんのトレードマークとなっているメガネは、鯖江市で生産されたものだ。

 福井県眼鏡協会などによると、大隅さんの愛用品はシャルマン社のブランド「ラインアート」の「XL1465」モデル(希望小売価格4万3000円)。8年間にわたって東北大などと共同研究し、2009年に開発に成功した新素材「エクセレンスチタン」と、こちらも開発に5年間を費やした微細レーザー接合技術により、掛け心地の良さを飛躍的に向上させた商品だ。

 4万円以上と高価なブランドながら現在最も国内で売れている商品で、米国など世界でも好調なセールスを記録しているという。シ社は今年6月、実用化技術を顕彰する「井上春成賞」を受賞。まさに「ノーベル賞級メガネ」だ。

 細胞の自食作用「オートファジー」の仕組みを発見し、日本の研究力の高さを世界に示した大隅さんだが、鯖江市もまた、世界に名を轟(とどろ)かせ続けているメガネの名産地だ。一自治体ながらイタリア、中国と並ぶ「世界3大メガネ生産地」と称されている。

 1905年、後に「国産メガネの祖」と称される増永五左衛門が冬の農閑期の副業のために、市内の農家に呼び掛けてメガネフレームの製造をスタート。戦後、需要の高まりとともに国内メガネ生産のトップを担うと、81年には市内のメーカーが世界で初めてチタン製フレームの開発に成功させ、一躍、世界に「SABAE」の名が広まり、市内のメガネ製造業は1200億円産業に発展した。

 シャルマン社の創業者、堀川馨会長(82)は「誠に名誉なことだと思っております。受賞決定の時、(会見で)隣にいた奥様も弊社の商品を掛けられていました(笑い)。一地方メーカーではありますが、大隅先生が掛けていることを誇りに思い、世界を相手に研究を続けていけたらと思っております」と話している。

 ◆シャルマン 1975年、メガネ部品製造業「堀川製作所」の販売部門として設立。世界100か国以上に販売し、15年の売上高は207億円。従業員は国内約600人、海外約1400人。

 ◆大隅 良典(おおすみ・よしのり)1945年2月9日、福岡市生まれ。71歳。67年東京大教養学部卒、74年理学博士。米ロックフェラー大のノーベル賞受賞者エーデルマン博士の研究室に留学し、東京大助手、助教授を経て、96年に基礎生物学研究所(愛知県)教授。2009年に同研究所名誉教授となり、東京工業大特任教授に就任。14年に東京工業大栄誉教授。神奈川県在住。

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