【動画】熊本城の石垣を耐震化する前の応急対応について、熊本城調査研究センター文化財保護参事の山下宗親さんが説明
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 4月の熊本地震の2回の大きな揺れで、石垣や建物に大きな被害が出た熊本城。文化財としての価値を損ねずに補強し、修復するにはどうすべきか。最新の土木技術や耐震技術を使って再建する検討が始まっている。

 熊本城は「武者返し」と呼ばれる反り返った石垣が、優美な景観を生み出していた。だが、熊本地震で城跡全体の石垣の3割にあたる約2万3600平方メートル、517面で崩落したり外側に盛り上がったりする被害が出た。加藤清正が17世紀初めに築城して以来、被害規模は最大。1889年の地震で被害を受けた場所の8割近くで今回、再び被害が出た。

 石垣は外側に「築石(つきいし、積石〈つみいし〉)」、その裏側に「栗石」と呼ばれるこぶし大から人頭大ほどの石が詰まっており、さらに内側に「盛り土」がある三層構造が多い。三つの異なる材料を組み合わせることで強度を増し、安定性を高めていると考えられている。

 一般的に地震で石垣はどのように崩れるのか。西形達明・関西大名誉教授(地盤工学)は、熊本地震以前に、モデルを使った実験やシミュレーションをしていた。①築石同士の隙間に差し込まれている「介石(かいいし)」が揺れで抜け始める②上下動によって栗石が大きく流動し、下に沈み込む③上部にある築石も支えを失って崩れ落ちる――という流れだ。今回の地震では、二の丸御門跡の石垣上部が丸く膨らみ、栗石が沈下して石垣が崩壊している様子などが見られた。

 さらに、西形さんが現地調査したところ、崩れた石垣には、栗石層が厚いものや、盛り土層がなく栗石だけが詰まったものも多かった。「栗石層が厚いと背面の土からの押さえる力が小さく、栗石が簡単に動く。そのため崩壊しやすかったのではないか」と話す。

 一方、天守閣北側などで地面が崩れた所があった。地盤工学会の調査団が調べたところ、地面が周辺より軟らかく、強度が低かった。長崎大の杉本知史助教(地盤工学)は「石垣の崩壊に地盤が影響した可能性もある。盛り土をして造成した所は一般的に揺れやすい。広範囲で地盤調査をしてから復旧を進めるべきだ」と語る。

 城の復旧について熊本市は20…

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