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トランプ政権に期待する愚かしさ

従属していることに気づかないほどの対米従属

 アメリカのトランプ次期大統領が次々と政策提言を行っています。それらが実際に実行されるかどうかはわかりませんが、TPP離脱はほぼ間違いなく実行すると見てよいでしょう。

 日本で対米自立派と言われる人たちの中には、トランプがTPP離脱を打ち出したことで、トランプを支持するかのような声をあげている人もいます。しかし、アメリカの次期大統領に期待している時点で、彼らは対米自立派ではなく対米従属派です。要するに、彼らは自分がアメリカに従属していることに気づかないほどアメリカに従属しているのです。

 そもそも、トランプはTPP離脱後に二国間貿易協定を進めると明言しています。そうなれば、アメリカは日本に対してTPP以上に厳しい要求を突きつけてくるはずです。トランプに期待しているような人たちが望む世界が訪れるとはとても思えません。

 ここでは、弊誌増刊号「貧困・格差・TPP」に掲載した、京都精華大学専任講師の白井聡氏のインタビューを紹介したいと思います。(YN)


月刊日本2016年5月号増刊 貧困・格差・TPP

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岩月 浩二,植草 一秀,内田 聖子,郭 洋春,亀井 静香,菊池 英博,佐伯 啓思,佐高 信,山田 俊男,佐藤 優,篠原 孝,白井 聡,鈴木 宣弘,施 光恒,玉木 雄一郎,田村 秀男,マハティール 元マレーシア首相,稲村 公望,水野 和夫,三橋 貴明,藻谷 浩介,安田 節子,山岡 淳一郎,山崎 行太郎,山田 正彦 ケイアンドケイプレス 2016-05-12

永続敗戦レジームとは何か

白井 ……日本の政官財学メディアの中枢は「永続敗戦レジーム」に囚われているため、アメリカに抵抗することができません。彼らはむしろ進んで国を売り渡すことで、既得権益を享受しようとしています。

 「永続敗戦レジーム」についてごく簡単に説明すると、あの戦争に負けたという事実をちゃんと認めていないが故に、ずるずると対米従属が続いていく状況のことです。その中核には「敗戦の否認」があります。これは知識としては敗戦したことを知っているが、現実としてはそれを認めていないということです。

 その一番象徴的な現象は、8月15日が「終戦記念日」と呼ばれていることでしょう。日本人の歴史認識の中では、あの戦争は日本の敗北によって終わったのではなく、あたかも自然に終わったかのように考えられているのです。

 「敗戦の否認」はいわゆる「逆コース政策」から本格化しました。それまで占領軍は民主化と脱軍国主義を推進し、日本を戦前と断絶した国にしようとしていました。しかし、冷戦構造の中で、アメリカは日本を自由主義陣営に留めておくために、あの戦争を指導していた保守勢力の復権を許し、彼らに日本を統治させることにしたのです。これにより、あの戦争について明らかに多くの責任を負っていた人たちが次々と復権していきました。

 これは本来許されざることです。敗戦によって国を破滅させた人たちが再び支配者の座に就くなど、決してあってはならないことです。

 そのあってはならないことを合理化するためには、敗戦の責任ひいては敗戦という事実そのものが曖昧化される必要がありました。つまり、日本はあの戦争に負けていないので、あの戦争を指導していた人たちが引き続き権力の座に留まったとしても何の問題もないということにされたのです。

 「敗戦の否認」は、戦後の経済的成功によって実体を得ることになりました。経済的に豊かになることで、敗北の痛みをリカバリーすることができたからです。さらに、自由主義陣営が冷戦に勝利し、勝者の立場に立つことができたことで、「敗戦の否認」は完成を遂げたと言えるでしょう。

 しかし、冷戦構造の終焉は、日本にとっては新たな敗北の始まりでもありました。日本は冷戦下で発展・復興を遂げてきましたが、それはアメリカの庇護によって可能になったことです。冷戦時代には、アメリカは本音では日本に色々と文句があったとしても、日本を重要なパートナーとして遇してきました。しかし冷戦構造が崩壊してしまえば、もはや日本を庇護する必要はありません。アメリカにとって日本は庇護の対象から収奪の対象へと転換しました。まさにTPPがその典型です。

 日本の支配層がこれに抵抗できないのは、彼らがアメリカに免責されることによって地位を守った勢力の後継者たちだからです。彼らは敗戦を否認することによって権力を維持してきたが故に、際限のない対米従属を続けるしかないのです。これが「永続敗戦レジーム」の構造です。


永続敗戦論 戦後日本の核心 (講談社+α文庫)
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白井 聡 講談社 2016-11-18

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