混迷の香港長官選、きょう選挙委メンバー選挙　民主派が中国の政治介入に反発

　【上海＝河崎真澄】香港で来年３月に行われる行政長官選挙の行方が混沌（こんとん）としてきた。再選をめざしていた現職の梁振英長官が９日に「不出馬」を唐突に表明し、任期中に民主派の大規模デモを招いたとして中国が梁氏に責任を負わせたとの見方が広がった。１１日には長官選に投票権をもつ選挙委員会（定数１２００）委員選が行われるものの、香港に高度な自治が保障された「一国二制度」は中国による露骨な政治介入で形骸化が進んでいる。

　香港政府のトップである長官は選挙委による間接選挙で選ばれる。ただ、同委メンバーは中国の意向を反映しやすいよう親中派が多い金融や不動産、教育など職業別の団体ごとに枠が割り当てられている。１１日の選挙には、中国全国人民代表大会（全人代）香港代表３６人など、確定済み１６６人を除く１０３４ポストに１５５３人が出馬した。

　中国側は水面下で委員選候補らへの工作も行っているもようだ。ただ、今年９月の立法会（議会）選で、香港で民主的に選ばれた議員が中国の一方的な判断で資格を剥奪されたことに民主派など住民が反発を強めており、親中派は委員選で勢力を弱める恐れがある。

　委員選に出馬した候補のうち４００人近くは民主派に近いとみられている。

　現段階では民主派が主流になる可能性はないが、香港政治に詳しい立教大学の倉田徹准教授は、「民主派候補が（定数の４分の１を超える）３００人以上当選すれば北京に対する異議申し立てになる」と話す。

　５年に１度の共産党大会を来年秋に控え、香港の政治混乱を最小限に押さえ込みたい中国の側も、民主派に一定の譲歩を迫られる。

　他方、来年３月の長官選には、政府ナンバー３の曽俊華・財政官（閣僚）ら親中派の数人が意欲を見せている。１１日の選挙結果を受け、どの候補者が、民主派と折り合いをつけつつ中国から“お墨付き”を得られるかに血道を上げるといった、いびつな政治的混乱が起きるとみられている。

　今月１５日には、選挙制度の民主化を求めた学生らが街頭占拠を続けた「雨傘運動」が強制排除されて２年となる。その運動から生まれた「独立派」が今年、香港で急速に力をつけたことにも中国は危惧。次期長官には、国家に対する反逆行為を取り締まる「国家安全条例」の制定を強く迫るとの見方も広がっている。

　返還から来年で２０年を迎える香港は、再び「政治の季節」を迎え、長官選をめぐって波乱が予想される。

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