2016年に読んだ本、約70冊のなかで、個人的に面白かった本、今年のライフイベント的に印象に残った本、を10冊挙げてみます。今年出版された本に限定はしておらず、順位は不同です。
参考までに、2014年、2015年に選んでいた10冊、についてはこちらをどうぞ。
それではいきますよ〜。
影山知明 「ゆっくり、いそげ」
日本語のことわざで言うと「急がば回れ」、ラテン語だと「フェスティナ・レンテ」というそうです。その言葉をそのまま運営会社名とし、中央線で最も乗降者数の少ない西国分寺駅で「クルミドコーヒー」というカフェ(2013年に食べログカフェ部門第1位)を経営されている方による経済・ビジネス書です。
本では、マッキンゼーやベンチャーキャピタルで成長・効率重視のビジネス最前線にいたエリートの店主が、カフェというプラットフォームを利用して、参加費任意のコンサート、コーヒー債、地域通貨などのさまざまな試みを行って、付加価値の高いカフェを作りあげられた経験が語られます。
そのような試みを事例として、必ずしもお金が唯一の価値であると前提にしないで、経済・価値・交換の本質的な意味について考えてみよう、という経済読みものの体をとっている本です。
ご本人が前書きで語られているとおり、「そんなのって、ローカル駅のカフェという小さな経済圏でだけ成り立つ理想論じゃないの?」って思われる方もいるかもしれませんが、それでもバリバリ効率主義でもなく、嫌消費でもない経済の中間点、について考えるたくさんのきっかけを与えてくれた本だと思います。
斉藤祐也ほか 「フロントエンドエンジニアのための現在とこれからの必須知識」
今年の技術書枠です。HTML, CSS, JavaScriptなどのフロントエンド開発について、直近の技術トレンドや便利なツールが、広範囲にわたってまとめられています。「フロントエンドは変化が早くてちょっと苦手だな...」と思っているエンジニアの方がざっと概況を把握するには、うってつけの本だったかと思います。
全てがプログラマー向けの話、というわけではなく、HTMLやCSSを書くにあたって、便利なエディタやコマンドラインツール、最近のWEBデザインのトレンド、についても触れられているので、少し凝ったブログを運営したい、という方にも便利に使える本かもしれません。
リンダ・リウカス作 鳥井雪訳 「ルビイのぼうけん」
既に過去のエントリでも触れていますが、今年購入した絵本第一位として、こちらの絵本を挙げておきます。
前半が、プログラミング的エッセンスを少しだけ取り入れた寓話、後半はもう少し本格的にプログラミング的思考で問題を解いてみる演習、という構成になっています。
前半の寓話は、ほんとうに触りなのですが、物語そのものが面白かったのか、5歳の息子にも受けが良く、今でも「読んで〜」と持ってくる頻度の高い絵本です。後半の演習は、まだ難しいと思うので、取り組ませていませんが、職業プログラマーである私からみても、年長/小学校低学年向けの導入本として優れたテキストになっていると思います。
紫原明子 「家族無計画」
2015年のベスト10のなかで、ペパボ創業者家入一真さんの「我が逃走」を挙げていましたが、こちらはその家入さんの奥様だった方のエッセイです。
今年は個人的にリコンというライフイベントがあったので、そこからの興味、というのもあったのですが、単純に紫原さんの文章が軽快で読みやすくて面白かったです。このダンナ様にしてこの奥様あり、というご夫婦だったのだなぁ、と思いました。
その後、紫原さんは「りこんのこども」という、ご自身の離婚とその後の子育て経験をもとにした取材をまとめた書籍も出版されており、個人的に今後の活動に注目している方のひとりです。
角田光代・穂村弘 「異性」
作家の角田光代さんと、詩人の穂村弘さんが、往復書簡の形式で異性をテーマにさまざまな切り口から語ったエッセイ集です。
言葉、とくにレンアイを扱った文章に関してはプロであるお二人の往復書簡だけあって、「なるほど〜」と頷ける内容が多かった本だと思います。特に女性の好みの変わりづらさ、について書かれたエッセイのなかの
「初めて会ってから3分以内に、その人と恋人になれるか、友人がいいか、それ以下か、というクラス分けは決まります。一度決まったクラスが、その後のつきあいで変わることってまずないですね」
の一節(これはどちらの方の文章でもなく、穂村氏が聞いた会話、なのですが)は、「今年最もダメージを食らった文章」大賞をあげたいです。
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棚瀬一代 「離婚で壊れる子どもたち」
こちらも、過去のエントリで既に採り上げていた本ですが、リコン後の面会交流について、自身の考え方を大きく変えさせれるきっかけとなった本でした。自分と子どもにとって、非常に重要な問題についてのアクションに具体的な変化があった、という意味で、個人的には外せなかった本です。
山口敬之 「総理」
今年のトレンド枠です。アメリカ大統領選で、ドナルド・トランプ氏が次期大統領に当選した日のエントリで話題に挙げた本です。本当はトランプ氏に関する本を挙げたかったのですが、なかなかしっくりくる本がありませんでした。まぁ政治家としてのトランプ氏の評価もこれからでしょうしね。
この本自体は、政治をテーマにしていますが、ドキュメンタリーとして読みやすく、安部さんの他にも「麻生さん、やっぱりいぶし銀でかっこいいな!」とか、そんなミーハーな興味で面白く読めてしまうのでお薦めです。
また安部内閣の外交手腕についても比較的分量を割いて解説されており、「アメリカがトランプに変わって、日本の外交大丈夫なの?」と不安に感じる方にも一定の示唆を与えてくれる本だったと思います。
ちきりん 「自分の時間を取り戻そう 」
比較的最近に刊行された、ちきりんさんによる「生産性」をテーマにしたビジネス書です。
今年は一年を通して、子どもの送迎のためにほぼ定時の時間内で、これまで通りの業務をこなさないといけなかったため、否が応にも自分の仕事の生産性について考えざるをえませんでした。
書籍では、管理職になりたての30代、や、仕事と育児の両立を迫られるワーキングマザー、など具体的にイメージしやすい人物モデルを例にあげて説明が組み立てられていたので、内容がすっと頭に入りやすかったと思います。
押切もえ 「永遠とは違う一日」
今年は最後まで読み切れた小説、というのが意外と少なかったのですが、その中では山本周五郎賞の候補にもなった、モデルの押切もえさんが書かれたこの作品が、すぐに読み切ってしまったうえに、ちゃんと面白かったなぁ、と印象に残りました。
山本周五郎賞の選評を改めて読み返すと、正当派でオーソドックスではあるものの、ややワンパターンでハッピーエンドすぎる、という評価が多かったようです。なるほど。でも、たまには小説がハッピーエンドすぎたって、いいんじゃない?
染谷昌利 「世界一やさしい ブログの教科書 1年生」
最後はこれ!やっぱり今年思いのほかハマってしまったもの、といえばブログだったので、この本を挙げておきます。
ブログを書くのは数年ぶりだったのですが、その間にGoogleアナリティクス(UI分かりにくすぎ!)や、Search Consoleなど、とりまくツール群が大きく変わっていたり、人気ブロガーさんの顔ぶれが変わっていたりしていたので、それらの変化に追いつくのに大いに役立ったと思います。
以上、私的2016年本ベスト10冊、を挙げてみました(ここまでお付き合いありがとうございましたっ)。
その年のベストを考えるときには、必ずしも世間的に話題になったものだけでなく、その年に自分に起きた出来事と紐付いたものも入れておくと、後から見返したときに「このときはそんなことがあったなぁ」とか「こんなことを考えていたのだなぁ」と振り返られて面白いと思います。
最近ではブログにかける時間が多くなってきているせいで、読書量が減ってきているのが悩みどころですが、2017年もよい本に巡り会えたらいいなぁ、と思います〜。