2015年の文学賞はベラルーシの作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ氏が受賞。今年はなんといっても、歌手のボブ・ディラン氏の受賞が世界に衝撃を与えた 写真:AP/アフロ

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12月10日、スウェーデンのストックホルムでノーベル賞の授賞式が行われる。ノーベル賞といえば、毎年のように「村上春樹氏の文学賞受賞なるか?」という話題で持ちきりに。

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来年2月には3年ぶりの新刊を発表することが明らかになっており、またもや世界の注目度が高まりそうだ。でも、ちょっと待って。日本人では春樹氏以外に「ノーベル文学賞」に近い作家はいないの? 3人の“名物書店員”に聞いてみると――。

まず、「本屋大賞」の実行委員でもあるオリオン書房ノルテ店(立川)・白川浩介さんが挙げたのは、なんと石原慎太郎氏。

「ノーベル文学賞って、バルガス=リョサや莫言みたいに政治にコミットした作風じゃないと選ばれにくい傾向があると思うんです。そう考えた時に日本人作家で真っ先に思いつくのが石原氏。大学時代に書いたデビュー作『太陽の季節』を世界中の人に読んでいただいて、“障子破り”の名シーンを堪能してほしいです(笑)」

続いて聞いたのは、こちらも「本屋大賞」実行委員の丸善ラゾーナ川崎店(川崎)・高頭佐和子さん。彼女が推すのは、詩人、翻訳家、絵本作家、脚本家として幅広く活動する谷川俊太郎氏。作品は15カ国語に翻訳され、世界中で読まれている。

「無垢な子ども、悩める青少年、様々な苦難を味わった大人…。誰にも響くまっすぐで深い言葉を持つ日本の詩人は他にいないのでは? ポーランドの詩人、ヴィスワヴァ・シンボルスカの『終わりと始まり』(未知谷)が、震災後の日本でベストセラーになったように、谷川さんの詩を必要とする人々は世界中にいると思います」

最後に、岩手県内に9店舗を展開する「さわや書店」(盛岡)で 数多くのイベントを仕掛けてきた栗澤順一さん。彼は高橋克彦氏に期待したいと言う。

「我が岩手県が生んだ作家なので、力を入れて応援しています。『火怨』『炎立つ』『天を衝く』の陸奥三部作は、マイノリティの悲哀、反体制、反戦といった近年のノーベル文学賞受賞のキーワードをいくつも内包。また自らのルーツに誇りを持つ姿勢は、いつの時代でも、どんな社会でも、大きな共感を呼ぶはずです」

他にも、「ノーベル文学賞に近いかも?」という作家として、『薬指の標本』がフランスで映画化されるなどヨーロッパでの人気も高い小川洋子氏、ロックな作風が国境を超える力を持つという古川日出男氏らの名前が挙がった。

彼らの推薦コメントを聞いていると、川端康成氏(1968年)と大江健三郎氏(1994年)に続く日本人ノーベル文学賞受賞者が出る日も遠くはない気がする。文学の神様、来年こそはお願いしますよ。
(石原たきび)

(R25編集部)

※コラムの内容は、R25から一部抜粋したものです
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