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所得税、小手先の見直し=働き方改革の本気度疑問-17年度税制改正大綱〔深層探訪〕

時事通信 12/10(土) 8:30配信

 自民、公明両党は8日、2017年度与党税制改正大綱を決定した。鳴り物入りで始まった所得税の配偶者控除改革は、共働き世帯も対象にする「夫婦控除」創設案が挫折し、パート世帯の控除拡大で決着。小手先の見直しに終わった税制改正は、安倍政権の看板政策である働き方改革の本気度に疑問を残した。

【図解・政治】2017年度税制改正のポイント

 ◇税調幹部、無念隠せず
 「やりたかったことはあった。それがこんなに小さな話になってしまった」。自民党税制調査会の重鎮議員はこう嘆き、落胆の色をにじませた。

 自民党税調と財務省は、配偶者控除を廃止して「夫婦控除」の導入を狙っていた。専業主婦が大半だった1961年の配偶者控除創設当時とは異なり、今やサラリーマン世帯の6割以上が共働き。所得の有無に関係なく、夫婦であれば誰でも恩恵を受けられるようにするのは時代の流れとの思いが強かった。

 8~9月には自民党の宮沢洋一税調会長、茂木敏充政調会長らが相次いで夫婦控除導入に意欲を表明。安倍政権の働き方改革も動きだし、実現するかに見えた。

 だが夫婦控除には巨額の財源が必要になる一方で、税収確保のために高所得層を対象から外すと、増税となる世帯が急増する。秋口に強まった衆院解散観測もあって、首相官邸や公明党が慎重姿勢に転じると、わずか1カ月で立ち消えになった。

 結局、配偶者控除を残した上で適用対象となる配偶者の年収上限を103万円から150万円に拡大する「小手先の見直し」(自民党税調幹部)で決着した。その裏には、経済界への配慮もあった。最低賃金が引き上げられる中で、パートで働く妻が就労を抑制する「103万円の壁」を維持すれば、人手不足が深刻化しかねないためだ。

 ◇恩恵はパート世帯だけ
 財政再建も足かせになった。安倍晋三首相は6月、消費税率10%への引き上げの先送りを表明。一方で基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年度の黒字化を目指す財政再建目標を堅持した。この結果、「増税するわけにもいかないが、減税するわけにもいかない」(財政当局幹部)というジレンマに陥り、抜本改革を掲げつつも税収確保にも目配りせざるを得なかった。

 8日記者会見した宮沢会長は「長年の懸案に答えを出し、成果があった税制改正だった。今後数年間かけて行う所得税改革の方向性を打ち出すことができた」と胸を張って見せた。

 大綱は所得税の抜本改革を明記したが、夫婦控除については「直ちに採用することは難しい」と結論付けた。17年度税制改正はパート世帯に恩恵を及ぼすだけで、社会の担い手として増加が期待される、パートでない共働き世帯の負担軽減は先送り。夫婦控除の挫折を見た経済官庁幹部は「本当にできるのか」と、改革の行方を危ぶんでいる。

最終更新:12/10(土) 12:57

時事通信

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。

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