福岡の暴走事故、フロアマット2枚だけが原因ではない

福岡のタクシー暴走事故、ここにきて「フロアマットが2枚使われていたため」という方向になりそうだけれど、もう少し深く考えるべきだと思う。そもそもプリウスには『ブレーキオーバーライド』という安全コンセプトが導入されている。「アクセルとブレーキを同時に踏んだらブレーキを優先させましょう」という考え方だ。

仮にフロアマットに引っかかってアクセルが戻らなくなっても、ブレーキペダルを踏めば馬力を絞るようになっている。そういった意味ではプリウスというクルマ、優れた安全性を持ってます。さらにフロアマットにアクセルが引っかかるのは一番奥まで踏み込んだ時に限られる。奥まで踏み込まないとアクセルペダルが床面に届かないからだ。

普通のアクセル開度なら床まで届かない。100歩譲ってアクセル全開になり、なおかつブレーキオーバーライドが効かなかったとしても、ブレーキさえ強く踏めば、プリウスは負圧(アクセル戻した時にブレーキ力を高める装置)に頼らない強力なブレーキシステムを持つため暴走などしない。

今回の事故、警察の発表が最初からおかしい。当初「整備不良とプリウスの過去にあったブレーキのリコール」を疑い、メディアにそういった情報を流した。事故直後、複数のTVメディアから問い合わせがあったけれど、全てこの2点に集中した。当然ながら警察情報を受けての取材だと思う。

そもそも暴走事故の99%はアクセルとブレーキの踏み間違いか、フロアマットの引っかかりに起因する。自動車関係者ならどんなシロウトだってこの二つを疑う。なのに警察がフロアマットが2枚だったことを公表したのは本日。そしてブレーキオーバーライドの機能については未だ考慮に入れていない。

捜査関係者がクルマのことを全く解っていないかもしれない。この間、プリウスはクルマの安全性を疑われ(ユーザーは不安だと思う)、以前発生した軽微なブレーキシステムの不具合を針小棒大に報じられ、挙げ句の果てには「電磁波が運転手に影響を与えている。だからプリウスの事故率は高い」という記事まで出回る始末。

ちなみに電磁波については実際に計測したが電磁シールドなどでキッチリ対策してあり、電車に乗って平気な人なら全く問題ないレベルだった。もちろん電磁波に弱い体質の方もいる。そういった人は電車や普通のクルマも避けるべきで、プリウスだけ攻撃するというのもおかしい。また、プリウスの事故が多いのは、たくさん売れているからだ。

いずれにしろ警察は事故直前の情報を持っているハズ。エアバッグが開いた事故は、必ずEDR(イベントデータレコーダー)に、1)衝突時の速度。2)アクセルの操作状況。3)ブレーキの操作状況。4)加速していたのか減速していたのか、という情報が残っている。いつまでも自動車ユーザーの不安を煽る情報ばかり流していないで、正しい事故原因の公表をお願いしたい。