自民党主導の「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)の年内成立が確実視される中、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表(52)が「日本はギャンブル大国。既存のギャンブルも含め、依存症対策を法律で義務づけてほしい」と訴えている。依存症に苦しんだ自らの過去を公表し、各地で相談会などを開催。9日も国会内で緊急シンポジウムを開き、与野党議員らに対策を求めた。
依存症だった父はギャンブルが原因で母と離婚。母の実家で、祖父が親類の子たちを連れパチンコに行く環境で育ち、自然とギャンブルに親しんだ。結婚相手も依存症で、新婚旅行先の米ラスベガスでは帰りの飛行機に乗る直前までスロットマシンに興じた。
自身は出産と子育てで遠ざかったが、夫がギャンブルで借金をしていたことが発覚。900万円を肩代わりした。責めると「自分ではやめられない。助けて」と泣き出した。
夫婦で心療内科に行き、自助グループに参加。そこで借金の肩代わりが誤りだと知り、悔しくて今度は自分が買い物依存になる。子の幼稚園代を滞納する一方、ブランドもののバッグを15分で5個買って200万円使い、泣きながらタクシーに乗ったことも。うつ病を患って「死にたい」と思った時、医師の勧めで回復プログラムに通った。「初めてこの世に居場所ができた気がした」という。
「依存症は病気。早期発見・介入が大事」と、体験を伝えるため全国を回った。ギャンブル依存症は500万人を超えるとされ、草の根の活動では追い付かないと思い、仲間に呼びかけて2014年に「考える会」を発足させた。
ここ数年は政党や地方自治体に招かれ、政策提言もしてきた。カジノ自体に反対はしない。だが、公営ギャンブルやパチンコ、宝くじなどを管轄する省庁がばらばらなことが問題だと指摘。省庁を超え、独立的にギャンブルを管轄する機関の必要性を主張する。
「ギャンブル依存症は、多重債務や貧困、自殺などの2次的な問題を引き起こす可能性がある。こうした現実に目を向け、既存のギャンブルも含め、予防教育や回復支援などの依存症対策が必要だ」と訴える。
9日に国会内で開かれたシンポジウムには与野党国会議員らが出席。ギャンブル依存症対策の法案作成に向けた超党派の議員連盟が必要だとの意見で一致した。【石塚淳子】