私はアレルギー性鼻炎を患っているので、数カ月に一度、耳鼻科へ行って、診療を受けて処方箋をもらっている。
診療と言っても「いつもと同じ薬でいいですか」という確認だけで、1分もかからない。同じ薬を処方してもらって、薬局で薬をもらって終わり。
私の行く病院は、土曜が午前中のみ診療、日曜が休診である。平日は当然会社があって行けないので、土曜日の午前中だけが唯一のチャンスなわけである。
先日、薬が切れそうだったので、土曜日の午前中にいつもの病院へ行った。病院に行ってみると、なんと外で待っている人がいた。何事かと思って受付をしてみると、「30人待ちで、診療までに1時間半以上かかります」ということだった。
私は呆れ、憤りを抑えて、受付をせずに帰ってきた。その次の週は薬なしで過ごした。
病院は需給バランスがおかしい
なぜこんなことが起きてしまうのか。それは、圧倒的に需給バランスがおかしいのである。
ほとんどの人が平日は仕事で病院へ行く暇がなく、そういった人たちは土曜の午前中に集中する。当たり前の話だ。
以前、耳鼻科ではなく皮膚科に行った時も、同じ状況に遭遇した。その時はもっと悲惨で、待っている人も多く、「いつ診療できるかわかりません」と言われた。その時もあきらめて、診療を受けずに帰ってきた。
病院のシステムはこのままでいいのだろうか。
需給バランスがおかしいのは病院側だって当然ながらわかっているはずだ。それでもなお、頑なに土日通常診療をしないのはなぜなのか。私には理解できない。
役所や銀行とは事情が違う
役所や銀行も土日が休みである。不便なことも多い。
しかし、役所は郵送などで用が事足りることもあるし、住民票の請求などは、今やコンビニでも出来る。銀行だってインターネットが発達して、振込などの基本的な手続きはスマホで手続きが出来る。役所も銀行も、実際に行って手続きをしなければならないこともあるが、そのケースは稀であると言ってよい。すべての人が、平日に行かなければいけない用事が頻繁にあるということはない。
しかし、病院は違う。
病院は、ほとんどの場合、実際に患者が病院に行かなければ話にならない。平日に郵送で診療は出来ないし、スマホでの診療も、今はできない。
公共性の高い医療を扱う機関が、土日にシャッターを下ろしていていいのだろうか。
BtoCは土日営業が当たり前
公共性という観点からの議論も必要だが、ビジネス面から見ても、病院の土日休診はおかしい。
基本的に、BtoCは土日に営業しているものだ。
BtoCとは、個人(消費者)を相手にしてする商売のことである。例えば、飲食店や家電量販店など、街で見かけるお店屋さんをイメージすればいい。
マクドナルドやビックカメラが土日休みだったらどうなるだろうか。おそらく、売上は激減するだろう。
個人が消費行動を起こすのは、平日よりも土日である。それは、平日は仕事の人が多いからだ。
医療行為をサービスと捉えることに若干の抵抗はあるが、病院だってBtoCサービスである。ほとんどの患者は、土日に医療行為を受けたいと思っているはずだ。
それなのに病院が土日休診をしているのは、土日に病院を開けなくても、十分な売り上げがあるからだろう。
平日の売上で十分すぎるのだ。だからわざわざ土日に病院を開ける必要はない。
遅れすぎている病院のシステム
試しに、近くの病院をいくつか調べてみたところ、ほとんどの病院で土曜午前診療をやっていた。土曜の午後と日曜日は終日休診だ。
土曜の午前中だけでは不十分だ。なぜなら、冒頭の状況のように、そこに平日時間を取れない患者が殺到するからだ。
そもそも病院のシステムというのは、ネットで予約できないところが納得いかない。飲食店だって、美容室だって、今はほとんどネットで予約できる。なぜ病院はネットで予約ができないのか。
緊急の患者がいるのはわかる。医療時間が読めないのもわかる。しかし、私だってそんなに暇じゃない。
すべての病院の都合を受容しなければいけないほど、軽度の症状の患者は弱者なのだろうか。
利便性という観点において、病院のシステムは遅れすぎている。
まとめ
病院ぐらい平日に休んで行けばいい、という指摘もあるかもしれないが、そう簡単に休める仕事ばかりではないだろう。それはまた別の議論であって、土日に医療行為を受けられないのはおかしいだろう、というのがこの記事の主眼である。
医療機関は公共性が高いと思っているのは私だけなのだろうか。いやそんなはずはない。私と同じように思っている人は多いはずである。
「病気やケガに苦しむ患者を見捨ててまで、日曜日休みたいですか?」「そんなに自己の利益を優先させたいですか?」と、医師に対して意見をしたい衝動にかられる。
しかし、ここまで言っておいてなんだが、私は医師に対して、崇高な姿勢を求めすぎているのかもしれない。
医師だって一人の人間だ。土日は子供とだって遊びたいだろう。
ふと気になってちょっと調べてみたが、欧米でも日曜は病院は休診のようである。
日本の医療システムの歪さでまとめようとしたけれど、どうやら日本だけの問題ではないようだ。