病院に突っ込んだタクシー 運転記録装置のデータ分析へ

病院に突っ込んだタクシー 運転記録装置のデータ分析へ
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3日、福岡市の総合病院にタクシーが突っ込み、3人が死亡し1人が重体になっている事故で、タクシーには、ブレーキやアクセルなどが作動した状況を記録する「イベントデータレコーダー」という装置が搭載されていることがわかり、警察はデータを分析して、どのような運転が行われたか調べることにしています。
3日、福岡市博多区の原三信病院に個人タクシーが突っ込み、いずれも建物の外にいた、入院患者の遠藤一行さん(53)と知り合いで見舞いに来ていた花田盛幸さん(44)と妻の美佐代さん(44)の3人が死亡しました。
建物の中にいた20代の女性1人が意識不明の重体となっているほか、6人が軽いけがをしました。
運転手の松岡龍生容疑者(64)が逮捕され、5日午後、過失運転致死傷の疑いで検察庁に送られました。
警察によりますと、事故を起こしたタクシーには、ブレーキやアクセルが作動した状況や、エンジンの回転数などを記録する「イベントデータレコーダー」という装置が搭載されているということです。
これまでの調べによりますと、松岡容疑者は、事故の直前におよそ300メートル離れた公園に立ち寄り、その後、走り出してすぐにブレーキが利かなくなったという趣旨の供述をしているということです。
イベントデータレコーダーはすでに押収されているということで、警察はデータを分析して、どのような運転が行われたか詳しく調べることにしています。
死亡した遠藤一行さんは6年前から福岡市博多区内の市営住宅で妻と2人で暮らしていました。
足が不自由だったため月に一度の掃除当番をすることができず、ほかの住民が代わっていたということです。
同じ市営住宅に住む80歳の男性は「もの静かな方でした。奥さんも体を悪くしているので、これまでご夫婦で苦労していたと思います。本当に心が痛みます」と話していました。
死亡した花田盛幸さんと妻の美佐代さんは、小学2年生のひとり娘との3人家族で、美佐代さんと娘が毎朝仲よく歩く姿が見られていたということです。
病院によりますと、3人は入院していた知り合いの遠藤さんの見舞いに訪れていたところ、事故に巻き込まれたということです。
事故を目撃した人によりますと、現場では「お父さん、お母さん」と泣きながら叫ぶ女の子の声が聞こえたということです。
通学路で見守りをしている83歳の男性は「事故の前の日にも母親と娘が仲良さそうに歩いていました。突然亡くなって本当に残念です」と話していました。

200m手前の交差点で停止せず

事故を起こしたタクシーとみられる車が、直前に200メートルほど手前の交差点を一時停止せず通過するのが目撃されていました。
近くの会社に勤務する男性が同僚が運転する車に乗って右折するため、交差点で信号待ちをしていたところ、正面から白いタクシーが、かなりのスピードで直進して来たということです。
男性は取材に対し、「現場は交通量が多く、危険を感じたので『強引な運転だ』と一緒にいた同僚と話した。目撃したタクシーが事故を起こしたと考えると非常に怖い」と話していました。

松岡容疑者は

逮捕された松岡龍生容疑者は30年以上の経験があるベテランのタクシードライバーでした。
自宅の近くに住む76歳の男性は「毎朝8時半から9時ぐらいにタクシーで出て行き、夕方6時ごろに帰ってきていました。週に1、2回は、車を点検している姿を見かけていたので、事故を知って驚きました」と話していました。
所属していた個人タクシーの組合によりますと、福岡市内のタクシー会社で勤務したあと、平成6年から個人タクシーを続けているベテランで、3か月ごとに行う車の点検も欠かしていなかったということです。
組合の幹部は「慎重に運転するという印象を持っている。ベテランで経験も豊富だったのでどうしてあの人がという思いだ」と話していました。