ワシントンはドナルド・トランプ氏の到来と利上げに備えている。そんな中、中国は自国が包囲されたと感じても許されるだろう。
中国は、世界で最も借り入れの多い企業部門と振れの激しいことで悪名高い不動産部門、そして融資の資金をまかなうために金融市場での借り入れに依存する多数の銀行を抱えている国だ。
このため中国経済は金利上昇観測に特に敏感になる。実際、金利上昇の見通しはトランプ氏の大統領選出以降の米ドル高と相まって、すでに新興国市場の債券と株式を売り急ぐ動きを引き起こした。
■小幅な上昇でも企業活動を圧迫
「トランプ要因はより積極的な米国金利の引き上げをもたらす。12月に予想されている利上げだけでなく、来年も数回あるとみている」。みずほ証券アジア(香港)のチーフエコノミスト、沈建光氏は、利上げが広く予想されている来週の米連邦準備理事会(FRB)の政策決定会合に先駆けてこう語った。
「ドル高は人民元の為替レートを安定させようとする中国政府の努力を困難にする。政府は金融政策を引き締めなければならないかもしれない」
中国の企業債務は山と積み上がっている。その巨大な規模――現在、国内総生産(GDP)の250%超にのぼり、2008年の125%から大幅に増加している――は、短期金利が小幅に上昇しただけでも、企業の活動は圧迫される。デフォルト(債務不履行)が発生し、ひいては経済成長が阻害されかねないことを意味している。
英スタンダード・ライフ・インベストメンツの新興国市場担当エコノミスト、アレックス・ウルフ氏は、既存の債務の返済に必要な資金を調達するために短期金融市場に依存する企業がどんどん増えており、デフォルトリスクが高まっていると指摘。「金利の上昇、特に短期金利の上昇は、比較的弱い企業にかかる重圧を強め、デフォルトのリスクを高める」と言う。この数週間、金融状況が逼迫するにつれて、短期金利の指標である6カ月物の上海銀行間取引金利(SHIBOR)は急騰した。
■融資残高の2割程度が不良債権化
格付け会社フィッチ・レーティングスの試算は、公式統計からはうかがえない中国企業部門の苦悩の度合いを明らかにする。フィッチによると、中国の銀行システムの融資残高のうち15~21%がすでに不良債権化している。これに対し、公式統計の不良債権比率は2%未満だ。
こうした状況を背景に、中国の資本流出は急増。11月に700億ドルに迫り、中国政府の直面する課題は先鋭化している。資金が中国から流出しているため、債務を返済できない企業にもたらされる苦境にもかかわらず、国内の金融状況を引き締める以外にほとんど選択肢がない。