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頭部カメラで可視化 隊員の正当性証明へ

小型カメラでの駆け付け警護の記録イメージ

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣されている陸上自衛隊部隊は12日、安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」が解禁され、活動は新たな段階に入る。これにあわせて、陸自は派遣部隊の隊員の頭部に小型カメラを装着して行動を記録する。武器使用が従来より拡大することになるため、駆け付け警護の実施時に、隊員の行動の正当性を証明する「資料」として映像を活用する狙いがある。【町田徳丈】

     これまでに南スーダンに派遣された陸自部隊も、記録用のハンディー(手持ち)ビデオカメラを備品として所持していた。駆け付け警護が付与された派遣部隊は、目に近い位置に録画カメラがある「ウエアラブルカメラ」を使う。「両手が空いた方が武器を扱いやすい」(陸自幹部)というのが理由だ。

     映像の記録は、隊員の行動を「可視化」することで、検証可能にするのが目的だ。暴徒らに取り囲まれた国連職員らを救援する駆け付け警護では、妨害する相手を排除する武器使用が可能となるが、これが適切だったかが検証の対象となる。さらに、相手を傷つける危害射撃は「正当防衛・緊急避難」の場合に限られており、危害射撃が妥当だったかについても、映像が判断材料の一つになる。

     防衛省がこうした行動の正当性にこだわるのは、海外任務の特性が関係している。南スーダンでも暴徒と民間人が混在している現場に遭遇する可能性がある。自衛隊幹部は「民間人を見分け、撃たないように訓練している」と語るが、暴徒に向けて発射した弾がそれ、近くにいた民間人に当たる可能性はゼロではない。

     一方で、海外派遣された隊員の処罰規定にはあいまいな部分が残る。南スーダンでは国連と南スーダン政府が地位協定を結んでおり、派遣国の隊員が罪を犯すと、派遣国に裁判権がある。だが、隊員が海外で民間人を誤って死なせてしまった場合、日本の刑法の業務上過失致死罪には国外犯の処罰規定がない。そのため、隊員は法律的に宙に浮いた状態に置かれてしまう。

     自衛隊の海外任務の範囲を広げる安保関連法では、海外で多数の自衛官が上官の命令に反した場合に処罰する規定などを盛り込んだ。だが、海外で誤った武器使用によって民間人を傷つけた場合の規定は設けられなかった。政府が「訓練を徹底しており、海外で違法な武器使用を行うことは一般的に想定されていない」との見解に立っているためだ。

     民間人を過失で傷つけた場合、刑事責任は問えないとしても、国連が被害者側に賠償をしたり、防衛省が隊員を懲戒処分したりすることは可能とみられる。だが、PKOに詳しい伊勢崎賢治・東京外国語大教授は「日本は憲法で軍法会議を設置できず、軍法でも裁けない。隊員が日本の法律で処罰されないケースがあれば、相手国から非難を受ける」と言う。

     防衛省は「適正に武器を使用し、それでも民間人に危害を加えた時には、刑法35条の『正当行為』にあたり、隊員の違法性は問われない」と説明する。武器使用が適正だったかどうかが焦点となるため、行動を記録した映像は隊員の正当性を証明する証拠となる。

     ある陸自隊員は「派遣隊員が不当な責任追及をされなくてもすむよう、映像はきちんと残すべきだ」と話す。

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