「保育所に預けられない子ども、ここにもいるんですよね」。10月下旬、名古屋市内に新設される保育所を巡り、市と業者に説明を求めた近隣住民が集まった。1歳の娘を抱いた30代の女性が、言葉を詰まらせながらもはっきりした口調で訴えた。

 集まった住民約50人は保育所計画に不満を持つ人がほとんど。「なぜこんな狭い場所に」「送迎の車で渋滞する」「同意もなしに納得できない」。約1時間半で飛び交ったのは批判的な意見ばかり。それでも女性が声を上げたのは、「幼稚園に子どもを入れられる家庭ばかりじゃない。本当に一つでも多く保育所が欲しい」と願うからだ。

 市が運営業者を公募してから約1年。業者は「保育所は本来、必要な施設なのに」と戸惑う。子どもを育む施設は、住民にしこりを残したまま来年3月に完成する予定だ。

 名古屋市は8日、10月1日時点で認可保育施設に入れない待機児童は200人だと公表した。4月1日時点では、保育所の増設などで2014年から3年続けて待機児童ゼロを達成していた。だが、今年度は住民の反対などで、目標の23地域中、12地域で保育所新設の見通しが立たない。

 住民が建設に反対するケースは各地で起きている。13年はさいたま市で、「静かな老後を過ごしたい」などと反対。事業者が撤退した。千葉県の市川市や佐倉市、大阪府豊中市などでも反対があり、保育所の開園を断念した。

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