ボブ・ディラン、村田沙耶香、蓮實重彦らが話題に。2016年の国内外文学賞まとめ
ボブ・ディランの受賞で物議を醸した『ノーベル文学賞』をはじめ、蓮實重彦の受賞会見も注目を集めた『三島由紀夫賞』、受賞時は現役コンビニ店員だった村田沙耶香が選ばれた『芥川龍之介賞』、押切もえが候補となった『山本周五郎賞』、村上春樹が受賞した『アンデルセン文学賞』など、大いに話題を振りまいた今年の文学賞。CINRA.NETでは、2016年内に発表された(2015年度を含む)文学賞の受賞者と受賞作品を振り返る。
国内編
『芥川龍之介賞』
第154回(2015年下半期)
本谷有希子『異類婚姻譚』(『群像』2015年11月号)
滝口悠生『死んでいない者』(『文學界』2015年12月号)
第155回(2016年上半期)
村田沙耶香『コンビニ人間』(『文學界』2016年6月号)
1935年に文藝春秋の創業者・菊地寛によって創設された『芥川龍之介賞』は新進作家による純文学の短編・中編小説が選考対象。副賞100万円。選考委員は宮本輝、村上龍、高樹のぶ子、山田詠美、小川洋子、川上弘美、島田雅彦、奥泉光、堀江敏幸。2016年下半期の選考から吉田修一も参加する。
『岸田國士戯曲賞』『三島由紀夫賞』の受賞歴もある本谷有希子は、劇作家・演出家としても活動。4度目のノミネートで受賞した。滝口悠生は1982年生まれ。2011年にデビューし、2015年に『愛と人生』で『第37回野間文芸新人賞』を受賞した。
『第155回芥川龍之介賞』を受賞した村田沙耶香は現役のコンビニ店員という話題性や、作家仲間から「クレイジー沙耶香」と呼ばれるキャラクター性でも話題を集めた。受賞作の単行本は発行部数25万部を超えるベストセラーに。
『直木三十五賞』
第154回(2015年下半期)
青山文平『つまをめとらば』(文藝春秋)
第155回(2016年上半期)
荻原浩『海の見える理髪店』(集英社)
1935年に文藝春秋の創業者・菊地寛によって創設された『直木三十五賞』は、新進作家によるエンターテイメント作品の単行本が選考対象。副賞100万円。選考委員は浅田次郎、伊集院静、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、東野圭吾、宮城谷昌光、宮部みゆき。
青山文平は1948年生まれ。経済関係の出版社に18年間勤務した経歴の持ち主。荻原浩は、広告制作会社やコピーライターなどを経て作家活動を開始。5度目のノミネートで『直木賞』に輝いた。
『第29回三島由紀夫賞』
蓮實重彦『伯爵夫人』(『新潮』2016年4月号)
蓮實重彦『伯爵夫人』(新潮社)
1997年から2001年まで東京大学総長を務めた批評家・作家の蓮實重彦。受賞時80歳、22年ぶり3作目の小説での受賞となった。会見における「はた迷惑な話だと思っております」「日本の文化にとって非常に嘆かわしいこと」といった発言でも話題を集めた。
新潮文芸振興会によって1988年から実施されている『三島由紀夫賞』は、小説、評論、詩歌、戯曲が対象。副賞100万円。選考委員は川上弘美、高村薫、辻原登、平野啓一郎、町田康。
『第29回山本周五郎賞』
湊かなえ『ユートピア』(集英社)
湊かなえ『ユートピア』(集英社)
松たか子主演で映画化もされた『告白』がベストセラーとなった湊は、読後に嫌な気持ちになるミステリ作品を指す「イヤミス」の代表的作家。「イヤミスの女王」とも称される。なお候補作には押切もえの連作短編集『永遠とは違う一日』(新潮社)も挙げられていた。
新潮文芸振興会によって1988年から実施されている『山本周五郎賞』は、大衆小説や時代小説が対象。副賞100万円。選考委員は石田衣良、角田光代、佐々木譲、白石一文、唯川恵。2017年度から白石に代わり、荻原浩が就任する。
『第67回読売文学賞』小説賞
古川日出男『女たち三百人の裏切りの書』(新潮社)
1949年に読売新聞社が創設した『読売文学賞』は小説、戯曲・シナリオなど6部門に分かれる。副賞200万円。選考委員は池澤夏樹、伊藤一彦、小川洋子、荻野アンナ、川上弘美、川村湊、高橋睦郎、辻原登、沼野充義、野田秀樹、松浦寿輝。
『第69回野間文芸賞』
堀江敏幸 『その姿の消し方』(新潮社)
堀江敏幸 『その姿の消し方』(新潮社)
『第38回野間文芸新人賞』
戌井昭人『のろい男 俳優・亀岡拓次』(文藝春秋)
『野間文芸賞』と『野間文芸新人賞』は講談社の初代社長・野間清治の遺志で設立された野間文化財団によって開催。『野間文芸賞』は1941年に創設された。副賞300万円。選考委員は奥泉光、佐伯一麦、高橋源一郎、多和田葉子、町田康。
『野間文芸新人賞』は1971年に『野間文芸奨励賞』から改称。副賞は100万円。選考委員は小川洋子、島田雅彦、保坂和志、星野智幸、松浦理英子。
『のろい男 俳優・亀岡拓次』の作者・戌井昭人は鉄割アルバトロスケットを主宰。受賞作は安田顕主演、横浜聡子監督で映画化もされた。
『第11回中央公論文芸賞』
東山彰良『罪の終わり』(新潮社)
中央公論社の創業120周年を記念し、2006年に創設。エンターテイメント作品が対象となる。副賞は100万円。選考委員は浅田次郎、鹿島茂、林真理子、村山由佳。
『第70回毎日出版文化賞』文学・芸術部門
島田雅彦『虚人の星』(講談社)
毎日出版社によって1947年に創設された『毎日出版文化賞』。文学・芸術部門、人文・社会部門、自然科学部門、企画部門、書評部門の5部門から構成される。賞金は100万円。
『第52回谷崎潤一郎賞』
長嶋有『三の隣は五号室』(中央公論新社)
絲山秋子『薄情』(新潮社)
1965年に中央公論社が創設。小説と戯曲が対象作品となる。副賞は100万円。選考委員は池澤夏樹、川上弘美、桐野夏生、筒井康隆、堀江敏幸。長嶋は2002年に『猛スピードで母は』、絲山は2005年に『沖で待つ』で『芥川賞』を受賞している。
『第42回川端康成文学賞』
山田詠美『生鮮てるてる坊主』(『群像』2015年9月号)
前年の優れた短編小説に与えられる『川端康成文学賞』。1974年に設立。副賞は100万円。選考委員は辻原登、堀江敏幸、村田喜代子、角田光代。選考委員で太宰治の次女でもある作家・津島佑子は選考会前の2016年2月に死去した。
『第44回泉鏡花文学賞』
川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』(講談社)
泉鏡花の生誕100年を記念して制定。鏡花の出身地である石川・金沢が主催する。鏡花の文学世界に通じる「ロマンの薫り高い作品」が対象となる。賞金は100万円。選考委員は五木寛之、村松友視、金井美恵子、嵐山光三郎、山田詠美。
『第50回吉川英治文学賞』
赤川次郎『東京零年』(集英社)
1967年に設立され、講談社が後援している『吉川英治文学賞』。50回目の節目となった今回は、赤川次郎が受賞した。選考委員は浅田次郎、五木寛之、北方謙三、林真理子、平岩弓枝、宮城谷昌光。副賞は300万円。
『第7回山田風太郎賞』
塩田武士『罪の声』(講談社)
KADOKAWAおよび角川文化振興財団によって2010年に創設された『山田風太郎賞』。ミステリーや時代小説、SFなどジャンルを問わず、対象期間に発表された「最も面白い」と評価された作品に与えられる。副賞は100万円。選考委員は奥泉光、京極夏彦、筒井康隆、林真理子、夢枕獏。
『第29回柴田錬三郎賞』
井上荒野『赤へ』(祥伝社)
集英社が主催する同賞は、1988年に創設。副賞は300万円。選考委員は伊集院静、長部日出雄、桐野夏生、津本陽、林真理子。
『第66回芸術選奨』文学部門
大臣賞
乙川優三郎
乃南アサ
新人賞
津村記久子
文化庁が主催する『芸術選奨』。演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論等、メディア芸術の11部門が存在する。