宇宙輸送船 こうのとり6号機 打ち上げ成功

宇宙輸送船 こうのとり6号機 打ち上げ成功
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国際宇宙ステーションに物資を届ける日本の宇宙輸送船「こうのとり」の6号機を載せたH2Bロケットが、9日午後10時26分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、午後10時41分ごろ、予定どおりに「こうのとり」を切り離して打ち上げは成功しました。
宇宙輸送船「こうのとり」6号機を載せたH2Bロケットは、9日午後10時26分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。

H2Bロケットは、打ち上げのおよそ2分後には4本の補助ロケットを切り離し、およそ6分後には1段目を切り離しながら上昇を続けました。そして、打ち上げからおよそ15分後の午後10時41分ごろ、予定どおり、高度287キロ付近で、こうのとり6号機を切り離し打ち上げは成功しました。

今回のこうのとりでは、国際宇宙ステーションの新たな主電源に採用された日本製のリチウムイオン電池を送り届けるほか、深刻化する宇宙ごみを取り除くために、日本が開発中の新たな技術の実験が行われます。

こうのとりは、地球の上空を回りながら、4日かけて高度400キロ付近まで上昇を続け、日本時間の今月13日の夜、国際宇宙ステーションに到着する予定です。

採用されたリチウムイオン電池

国際宇宙ステーションの新たな主電源として採用され、今回のこうのとり6号機で送り届けられる日本製のリチウムイオン電池は、京都市の電池メーカー、GSユアサが開発しました。

一つ一つの電池には、英語で「for ISS」、国際宇宙ステーションの略称である「ISSのために」と記されています。1つの電池は、高さ26センチ、幅13センチ、重さ3キロ余りで、スマートフォン58個分の電力を蓄えることができます。

現在設置されているニッケル水素電池に比べて、このリチウムイオン電池は蓄えられる電気の量が、これまでの3倍に高められているということです。こうした電池を数十個束ねて、縦横それぞれ1メートル、高さ50センチの箱に詰め合わせ、1つのバッテリーとしています。

新しいバッテリーは全部で24個が国際宇宙ステーションに設置される計画で、今回のこうのとり6号機では最初の6個が運び込まれます。今後、こうのとり7号機、8号機、9号機でも、それぞれ6個ずつ、宇宙ステーションに運び込まれる予定です。宇宙ステーションでは、宇宙飛行士が船外活動を行ってバッテリーの交換を行うことになっています。

JAXAによりますと、リチウムイオン電池を採用した世界の人工衛星の中でのGSユアサの電池のシェアは35%で、世界で最も高くなっています。

GSユアサによりますと、これまでに各国の人工衛星、合わせて128機に搭載され、故障やトラブルの報告は寄せられていないということです。

7年をかけた厳しい検査

国際宇宙ステーションへの実際の設置にあたっては、宇宙飛行士の命に預かる極めて重要な機器となるだけに、採用候補となった2009年から、これまで7年間をかけて、安全性を確認する厳しい検査が行われてきました。

NASAの担当者らが何度も、京都市南区の工場を訪れ、一つ一つの材料について、どこからどのように仕入れたのか、それぞれの材料の安全性はどのように確認されているのか、といった材料に関する検査をはじめ、どのような工程で製造されたのか、製造を担当する人たちの訓練は、どのように行われているのか、といった点まで、極めて細かくチェックされたということです。

NASAの検査に対応した、ジーエス・ユアサテクノロジー、品質保証部の宮永直澄さんは「これまで経験したことがないほど細かく、かつ長期に渡る検査でした」と振り返ります。

厳しい検査を経て、ようやく実際に国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられることについて、電池の開発に当たった、ジーエス・ユアサテクノロジーの各務優太さんは、「これまで長年にわたり積み重ねてきた信頼性が認められ、命を預かる国際宇宙ステーションに採用されたと考えています。実際に取り付けられるのが楽しみです」と話しています。

日本製機器の採用は初めて

国際宇宙ステーションには、現在、合わせて48個のバッテリーがあり、太陽電池パネルで発電した電気を蓄電したうえで、サッカー場と同じくらいの広さの宇宙ステーション全体に電気を供給しています。

供給した電気は、さまざまな実験装置で使われるほか、宇宙ステーションの空調や照明など宇宙飛行士の生活に欠かせない機器で使われ、重要なライフラインとなっています。

現在使われているバッテリーは、これから劣化が進むと予想されることから、NASA=アメリカ航空宇宙局は交換が必要だと判断し、新しいバッテリーに、日本製のリチウムイオン電池を採用しました。国際宇宙ステーションの基盤となる重要な設備に、日本製の機器が採用されるのは初めてです。

日本製電池が運用延長に貢献

2011年に完成した国際宇宙ステーションは、当初、2020年までの運用となっていましたが、運用期間を2024年まで4年間、延長することになりました。

JAXA=宇宙航空研究開発機構によりますと、新たに主電源として採用された日本製の電池によって、今後、10年間は、電力の供給が続けられる見通しとなり、技術的な課題が解決されたことも、運用の延長が決まった背景にあるということです。