SF的宇宙とは何か
小泉:今日は円城さんが翻訳された『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』についてお話を聞けたらと思っています。これはそういうことをインタビューする連載で。いつも変なお願いばかりしてすみません。
円城:全然大丈夫です。前の仕事に比べると、はるかにふつうだし……。
小泉:実は、まだ1本しかインタビューしていないんですけど。
円城:ジム・シェパードでしたっけ。
小泉:そう。小竹由美子さんにお話を聞いてきました。たまたま、ジム・シェパードの場合、刊行したばかりというのもあったのですが、小竹さんはいろいろな人を訳していらっしゃるので、また何度も出てきていただく予定なんです。でも、あまり発行時期とかは関係なくですね、まあ、翻訳した人とか、その周辺にいる人とかにインタビューをしていこうかなと思っているところです。
円城:はい。いかようにも。どうでも。
小泉:で、チャールズ・ユウ。あの、私、グレッグ・イーガンとかもまったく理解しないまま読んで感動するような人間なんですけども、
円城:何の問題もないですよ。イーガンの『白熱光』とかクロックワーク・ロケット三部作とか、学術誌に出せよ、って感じだし。
小泉:この人は、さらにSF的な知識がなくても全然大丈夫ですね。
円城:これ別にSFて言わなくていい小説ですね。ただ、この人はこういう人だっていう。
小泉:見た目はすごくSFっぽいですけどね。ハヤカワから出てますし。タイトルにSFって書いてあるし。でも、あとがきには「一般文芸の世界で活躍するSF的な小説の作家」と紹介されていますね。
円城:本人もあんまりSFって意識しないで書いていると思うんですよ。
小泉:でも、読んだときはSF的なことはあまり気にしないで読んでいたんですけど、でもちょっと、あまりにもSF的な部分がわからないのでですね、もうちょっとわかってもいいんじゃないかなと思いまして。
円城:でも、特にわからない部分って、何かありましたっけ?
小泉:まず、SF的宇宙っていうのは、何なんでしょうか。
円城:特にないと思いますよ。考えてないと思う。
小泉:えー。考えてないんですか。
円城:チャールズ・ユウにとってはもう、世界はこういう世界だっていうことなのでは。
小泉:この、最後に「はじまりの宇宙:宇宙13」ってあるじゃないですか。ここで世界は1回崩壊しているんですか?
円城:これは、なんだっけかな、電子版か、豪華版みたいなやつについていた「おまけ」なんですね。だから、そんなに本筋には絡んでない。
小泉:すべてを読み解く鍵かと。よく映画や海外ドラマの演出で最初に最後のシーン出すみたいな、それの逆パターンのようなものなのかと思っていたんですけど、おまけなんですね。
円城:まあ、宇宙に番号が付いてたりするので、この番号の宇宙ではこうっていう。
小泉:ああ、宇宙13では壊れたと。
円城:なんでしたっけ、割れちゃうんですよね。おまけに出てくる宇宙。
小泉:SF的な宇宙以外の宇宙っていうのは、どうなっているんですか。
円城:たぶんあるんだと思う。ミステリ的な宇宙とか。宇宙は、エンタメ施設なんですよね。この世界では。っていうか小説1冊1冊が宇宙みたいなイメージですよね。だからこれは、そういう宇宙。SFっぽい小説1冊っていう宇宙。それくらいの意味だと思います。
トウがユウを訳すことになった経緯
小泉:読む側としてはあまり気にしなくて、まあ、わからなかったら飛ばして読んでしまってもいいようなところも、訳す側としてはそうもいきませんよね。これ、訳しているときにつらくなかったですか。
円城:特には。なんだろう、理数系の大学院生のホラ話っていう、ほぼこういうノリなので。
小泉:ああ、同じ穴のムジナ的な理解があったんですね。
円城:これ僕が訳さなくても全然よかったんだけど、確かに何が何だかわからないかも、院生とかやったことがある人のほうがいいかもねっていうのはありました。ユウもどうも調べるとそういうバックグラウンドなんですよ。理論屋さんぽい空気を感じる。
小泉:これは解説にもちょっと書いてありますが、円城さんが最初に見つけて。
円城:何かの賞の候補になったりで、アメリカの賞を見ている人の間では知られてたんですが、翻訳はされていなくて。賞を獲ったときは、リチャード・パワーズが選んだはず。僕はたまたま、サンフランシスコにいたときに、フェリーターミナルに入ってる本屋さんに行って手にとって。ああ、バカなタイトルだなあ、と。
小泉:円城さんが翻訳する経緯になったのはどういうきっかけで?
円城:『本の雑誌』に、こういうのがあって、おもしろかったっていうのを書いて、誰か訳してくれないかなと思ってて、その後、東京創元社から「どうアレ、訳さない?」って聞かれて。「本業の翻訳の人にやってもらいましょうよ」って言って。なんだかうやむやなうちに断った形になったような。
小泉:え、断ったんですか(笑)
円城:で、ハヤカワから出てる。「訳せるでしょ」「訳せないですよ」みたいなやりとりががあって、それがあやふやになっている間に早川書房のほうから「下訳もつけますから」って言われて、「下訳がつくならその人が訳せばいいじゃないですか」って言ったんだけど。
小泉:身もふたもない……そこは、いや、やっぱりそこはトウがユウを訳すっていうのが大事なんだと思います。
円城:下訳ついてもらったことは全然隠してなくて、むしろ公表してほしい。共訳とかにしてもらって構わないんですけど。まあ、下訳までつけてもらえるんだったら……というのもあって、やることになりました。なんか「お前がやらないと出ない」みたいなムードになって、それならしかたない……っていうことに。
小泉:翻訳するまでにまず、原書を紹介されていましたね。その後、さらに、すごく変なかかわり方をしていますよね。訳が出る前にこの本をネタに小説を書いているじゃないですか。『松の枝の記』。これ、読みました。
円城:はいはい。二人で交互に勝手に翻訳を書いちゃう話ですよね。僕は基本的に身の回りに起こった事を書く人なので。
小泉:あんなことが身の回りで起こっているんですか。
円城:だいたいそんな感じ。ユウとはやりとりしたことないですけどね。
どっか行っちゃう系
小泉:こないだ小竹由美子さんにジム・シェパードの話を聞いた時に、ジム・シェパードが明らかに勘違い、間違っている部分は勝手に直して訳してしまうという話を聞いて、ふと思ったのですが、『松の枝の記』はそれをさらに、極端にした話ですよね。これがあっての、『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』となると、これ、本当に訳しているのかな? みたいな素朴な疑問が。これまでの円城さんの活動などからも察するに、もしかしたら……。
円城:でも、あんまり変える余地がなかったんですよね。そうだよなあ、みたいな感じでそのままです。
小泉:下訳からこの本の文章になるには、どういった手が加わるんですか?
円城:まあ、一応全部変わっている。訳が間違っていないかどうか確認するために使わせてもらったというくらいで。最初は自分で訳してから下訳を見て、間違ってると、あああ~って直す。そういう感じです。書き直すのが前提だったので、下訳の人も小説っぽくはしていない。でも、内容面で特に変えたところはない、はず。
小泉:ふーん……。すごく、円城さんが書いているのかなっていう部分もありましたけども。もう、全然違う話だったりして…
円城:しないしない。ただまあ、チャールズ・ユウが思っていなかったことを、僕が勝手に思っている可能性があるんですけど、まあ、それはチャールズ・ユウが間違っているってことでいいかなって。
小泉:間違っているのはチャールズ・ユウのほうであると。最初、読んだときに軽妙なパワーズ、あるいはふざけすぎない『銀河ヒッチハイクガイド』みたいな印象を抱いたのですが、パワーズに選ばれたりしていたんですね。
円城:パワーズが選びそうだなっていうのはありますね。ボンクラ感が。
小泉:「こうして僕らはかつて一度も出会わなかった。」とか、どことなくパワーズっぽいフレーズですよね。
円城:一度も出会ったことのない恋人ですね。
小泉:円城さんもパワーズ好きじゃないですか。
円城:好きですね。
小泉:私も好きなんですけど、パワーズって、ちょっとエモいところがあるじゃないですか。
円城:あー、パワーズの英文はちょっとおかしいらしいですよ。パワーズを訳している人から聞いたことがあるんですけど、ふつうはこうは書かないだろうっていう英文らしい。
小泉:英文がおかしい?
円城:書き方がやっぱり理数系の人のっぽいらしい。僕にはよくわからないですけど。
小泉:理数系ってエモいんですかね。
円城:なんでしょうね。エモ耐性は低いかも知れないですね。
小泉:パワーズを読んでると、時々、エモいから無理~って思うときもあるんですよ。好きなんですけどね。
円城:パワーズはありますね。最近特にそういう傾向が強い。最初のほうはそうでもなかったはずなんだけど。
小泉:チャールズ・ユウは、パワーズより軽妙で読みやすいですね。この人もパワーズ好きなんですね。
円城:一応謝辞には書いてありますね。
小泉:チャールズ・ユウも、そこそこエモいじゃないですか。
円城:まあ、ギークですからね。ギークはどうしても色んな耐性が低くなる……だって、彼女だってコンピューター。OSに惚れてる。
小泉:パワーズの描く人工知能ヘレンみたいのと同じじゃないですか。でも、私は円城さんの作品に、パワーズやチャールズ・ユウのようなエモさを感じたことはなくて。
円城:え、でも結構同じ方向ですよ。
小泉:え、あれはエモいんですか。
円城:まあ、僕はたいてい、小説でどっか行っちゃいますね。まあ、この本もどっかいっちゃいますね、これも。どっか行っちゃう系ですね。
小泉:どっか行っちゃう系。
円城:同じ場所で一回り大きくなるとかじゃないんですよ。どっか行っちゃうの。ほとんどどっか行っちゃうの。あ、また今回もどっか行っちゃったって。旅立っちゃう。それはかなりエモ要素のはず。
小泉:でも円城さんの小説は全然エモエモしくない感じがするんですけど……
円城:いや、そうでもないと思いますよ。かなりエモいと思います。ヴォネガットをどう読むかみたいな。角度によっては異様にエモいっていう。でもそういう感覚がない人にとっては、シニカルなおじさんじゃないですか。
小泉:エモ方によると。パワーズ好きなのも、チャールズ・ユウを訳したのも、円城さんはそんなにエモくないのになんでかしらと思ってたんですけど、円城さんもエモいということなんですね。
円城:趣味的なものはありますよね。いつもそういうものばかり読んでるとつらいけど、定期的に読まないとつらい。
だれもわかっていないかもしれない結末を語る
円城:あ、SFじゃないって言いましたけど、けっこう大仕掛けは大仕掛けで、でもそれは誰もわかってないっぽい。で、僕はわかった気になっているんですけど、チャールズ・ユウもわかってないかもしれない。
小泉:なにがわかったんですか?
円城:なんで2回繰り返すのかっていうことですよね。同じ話をなんで2回繰り返すか。しかも、解決はよくわからないですよね。どうしてそれで回避できるの? っていうのがわからない。わからないんだけど、ふつうに考えると回避できていない。この手のお話の中で、ああいう設定にしちゃったら回避できるわけなくて、そこはSFじゃなくて、なんかちょっとエモ語りだからいいことになっているんだよね? っていう回収だと思われている。でもたぶん、チャールズ・ユウが書いているのは多分ソウテンイの話で、がっちり物理の話なんじゃないかなと。
小泉:…ソウテンイ?
円城:相転移。フェーズ・トランジションですね。あれですよ、氷が水になるとか、水が水蒸気になるとか。
小泉:氷が水になることが相転移?
円城:固体、液体、気体っていうのをそれぞれ相って言うんですよ。個相、液相、気相って。それが変化するから相転移。もう、全然違うものにがっつり変わる。で、その時の仕組みっていうのが物理の中の物性理論という分野で80年代くらいに仕組みが一応わかったということになっていて、相転移の場合、システム全体がガッって変わるんですね。これは結構謎なことです。バタフライ効果とか、蝶が一匹羽ばたけば世界の気象が、みたいな話もありますが、現実にはそういうことは起こっていない。世界は膨大なスケールの積み重ねでできていて、どこかのスケールだけが、「ちょっと俺革命するよ」とか言っても、その影響は消えてしまう。スケールっていってるのは、原子のスケールがあって、分子のスケールがあって、ミクロのスケールがあって、統計力学的スケールがあって、熱力学的スケールがあって、人間のスケールがあって、星のスケールが、みたいなことですけど。上下のスケールが、「じゃあ俺も」「俺も」「俺も」「俺も」みたいに、影響が広がっていく形になっている必要があって、その影響がそれぞれのスケールを通じて、みんな同じ風に「よし、やるぞ」ってなったら相が変わる。っていう理解ができたんです。
小泉:なるほど、全然なるほどじゃないけど、なるほど。
円城:くりこみって言うんですけど。
小泉:なに? くりこみ? どういう字ですか?
円城:くりこむはけっこう、日本語としてこなれてないので、ひらがながいいんじゃないかと思うんですけど、繰り込み、ですね。
小泉:ははは(笑)。くりこみ。
円城:ウフフ(笑)。くりこみと呼ばれるんです。くりこみ相転移なんです、これは。
小泉:なるほど、これはくりこみ相転移。ええと、私たち、なんの話をしていたんでしたっけ。
円城:お話がなぜ二重になっているかっていうと、なんかこう、こういうリアルの上にもう一個リアルがあるわけですよね。
円城:上の視点から、こっちを見ている、タイムマシンで。
小泉:はい。
円城:で、箱も中にもう1個箱が入っていたりしますね。
小泉:箱、入ってますね。はい。
円城:で、そういう多重化のプロセスは一回で終わるのかというと、終わらないで、無限に続いている。ふつうに考えると、ループから抜け出せないってことは、このプロセスがずっと続くってことだから。
小泉:じゃあ、もう何度も繰り返してきているってことですか?
円城:全部無限にあって、全部が、「よし、がんばるぞ、俺変わるぞ」って言ったときに、全ての階層において、バーンて変わるっていうので、今言った話みたいになる。
小泉:バーンて。この本、このSF的な宇宙では結局相転移するんですか?
円城:あの、撃った瞬間が、変わるとき。で、そこまではみんな、メタから見ても同じことを繰り返しているんだけど、そこで、それも気持ちって言えば気持ちなんですけど、そこでこういう全部のメタの階層の中で、バーンって1本筋が通って、液体になりますよみたいな感じで、人が変わる……。
小泉:撃たれることも繰り返してたじゃないですか?
円城:それはこの中で繰り返している。で、相転移なので、その前と後はあんまり関係ない。全部の階層で同じ事が起こって、ゴーンって変わるっていうのが大事。相転移したあとはその前のことは知らない。相転移だから(笑)。あ、この笑いはなんだかわからないと思うんですが、笑えるんです。
小泉:ゴーンって。なるほど。いや、わからない(笑)。
小泉:ユウは何に変わったんですか?
円城:撃たれたけど、ケガしただけで済んでますよね。死なないところに弾丸が突き抜けるまでには、あの、いくつも死んでいる階層とかはあって。それはいっぱい、メタメタメタって見ているときに、この辺では生き残りました!とか言っても、他のところではいっぱい死んだりしているので、変われない。
小泉:メタメタメタって。なんで今回は変われたのか? 相転移が起きたから?
円城:たぶん、そういう話。
小泉:ふーん…。
円城:だから、お父さんが箱の果てにいるとかもそうなはずで。お父さんが箱の果てにいますよね。
小泉:いましたね。
円城:お父さんが箱の箱の果てにいるというとかいうのも、極限はやっぱりちょっと違うのでっていうイメージがたぶんあるんだと思うんですよね。
小泉:お父さんは、これは、どういう状況になっちゃってるんですか?
円城:お父さんは、入れ子の入れ子の入れ子の入れ子に潜っていって、よくわかんないところに着いちゃったんですよね。で、帰ってこれなくなっているんですよ。有理数列の極限が有理数じゃないことがあるみたいに、お父さんも極限、物語の限界にまで突き抜けてしまっている。収束先から収束列に戻ろうとしても戻れない、みたいな。
小泉:ユウは、いちおうお父さんのことは探してはいる。
円城:ずっと探してはいる。でもその世界にはいない。
小泉:これ、自分を撃ってしまうっていうところがけっこう始まりのポイントというか、トリガーじゃないですか。でもけっこう撃つの遅いですよね。撃つまでの話がけっこう長い。
円城:そうですね。冒頭に書いてある割には遅いですね。
小泉:これ、撃たなくてもよかったんじゃないですか? 撃たないと始まらないんですか?
円城:撃たないと深刻な状態にならないからじゃないですかね。
小泉:撃たなくてもお父さんを探せたのかしら、とか思ったのですが。
円城:引きこもりが解消されないといけないので、引きこもりが解消されるためには自分に撃たれるくらいしないとだめってことでは。
小泉:なんで撃ったんですかね。自分を見たら逃げろっていうルールがあったのに。
円城:撃った理由はわかんないですよね。そこは面白さ優先で撃ってしまったんじゃないですかね。物語的な面白さではなく、生き方としての面白さ優先で。
小泉:生き方としての面白さ優先!ところで、これはマトリックスみたいに映像化するといいのではないかと思ったりもしたんですが。
円城:けっこう、映像でやると最後のほうが説得力がないかもしれない。そこらへんが今一つ、難しい。
小泉:この「くりこみ相転移」が起きたっていうのは、チャールズ・ユウもわかっていないかもしれないところなんですね。
円城:思ってないかもしれない。でも、チャールズ・ユウはくりこみ自体は知っているはず。どうも経歴を見ると。
小泉:くりこみっていうのは、そもそもなんなんでしょうか。
円城:Renormalization. それをいまいちうまく訳せないのでくりこみって言っているんですけど、それ自体は朝永振一郎がノーベル賞とったやつですよ。それです。チャールズ・ユウは、この本の中で経路積分の話とか、いっぱい「*」がついているページとかあったじゃないですか、ああいうものを書いているので、たぶん知っているんですよ。統計物理の話なんですけど、そういうのがイメージや発想の元にあって書いている。で、想像ですけど、タイムマシンって楽しいなって思っていて、自分が出てきたらどうしよう、撃つと面白いんじゃない? 撃ったらどうなるんだろうとかずっと思って、でもそれだけじゃ書けないんですよね。タイムパラドックスを解消できないから。でもその時に、あ、相転移とか使えばきっとうまくいくはず! とか思ったと、僕は勝手に想像しているんですけど。たぶん、そう。そうじゃないとただ2回繰り返しているだけなので。あまりそう進むと思わないじゃないですか。SFなら絶対こうは進まないはずで、何かあるんですよ、たぶん、こうなるはずの形が。
小泉:なるほど。
円城:僕もこれふつうのSFとして読んでいたら訳さなくてもいいなと思ったんですけど、きっとそういう背景がある。ほんとかどうかは知らないですけど、そういうことを考えさせてくれただけで十分だともいえる。
小泉:この本には、くりこみ相転移があって、それはチャールズ・ユウもわかっていないかもしれないと。
こまごまとした、読みどころ
小泉:でもやっぱりSF小説として読むには、文章がなんていうか、上手すぎるというか。あ、それは円城さんの訳だからなのか!
円城:あ、でもこんな文章ですよ、本当に。ああ、意識してあんまり長さを変えずに訳したんですけど。チャールズ・ユウの文章って異様に長いんですよ。切れない。自分の文章なら切る。
小泉:原書を読んだわけじゃないんですけど、なんていうんですか、すごく大雑把な言い方するとジャンルものSFの文章じゃないな、みたいな印象を受けました。
円城:まあ、本人もSFという意識がないみたいだし、SFマニアでもないみたいだし。
小泉:エドがいいですね。犬のエド。
円城:存在しない犬。捨てられてる。
小泉:お母さんの描写も素敵で。
円城:ずっと同じ時間を暮らしていてね。訪ねて行くと、ちょっとあんた、とか怒られる。
小泉:ずっと同じ時間の中に入るまえのお母さんを回想しているじゃないですか。
円城:昔のお母さんね。
小泉:お母さんがなんかどんどん退行していくと。それはお父さんとユウがタイムマシンを作っているせいなのか、それともお父さんとの夫婦仲のせいなのか、単なる更年期障害なのかわからないんですけど、「ましな1年がすぎた後、母は一定のパターンに陥っていた」。これ、前払い済みのタイムループに入る前の話なんですよね。タイムループに陥る前にすでに一定のパターンに陥っている。「金曜日の夜に自室へと退場していき、週末中出てこないこともあった。月曜日の朝に再登場し、全てはまた正常に戻った」。このお話は父-子の話なんで、ちょっとお母さんは本流からそれた感じの扱いなんですけど、なんだか妙に共感してしまいました。
円城:今のお母さんはぐるぐる回っている。いいですね。養老院がすごくいいんですよ。
小泉:本人もわかっててちょっと外に出てきちゃうあたりも。外って、タイムループの外に。
円城:「外に出てるの?」って(笑)。同じ時間を何度も暮らしてるはずなのに。
小泉:出れるんだ、みたいな。本当に老人ホームから出てきちゃう感じで(笑)
円城:そういう、細かいところがよかったですね。
小泉:SF的な宇宙の世界観がわかっていないなりにも、読み進めていって、あの宇宙のサバイバルキットが出てくるとちょっと感動しますね。
円城:感動しますね。お父さんがすっごく不器用でいい人なんですよね。いや、全然いい人じゃないんだけど。すごいだめな人なんだけど。失敗した研究者っていう感じの人ですよね。
小泉:これ、お父さんは、今、いちおう、チャールズ・ユウが生きているマイナー宇宙31とかそういうのが、娯楽施設としてできたりするような概念を、ヘマをやったにせよ、発見しかけた人の何人かのうちの1人ではあるんですよね?
円城:でもマイナー宇宙31への移民ですよね。宇宙の仕組みを見つけた人ではある。
小泉:そういうのを見つけちゃったから、世界は、宇宙13では壊れた?
円城:これ、そんなにつながりはないんじゃないかなあ。そんなにないと思う。まあ、でも宇宙が壊れるみたいな題材とかいうのを考えてしまう人ではある。だからなんか、タカヤマ=フジモト排他原理とか出てくるじゃないですか。それっぽいんですよ。なんかね、物語工学があるんですよね。継時上物語学。
継時上物語学とは何か
小泉:最初に出てきますよね。継時上物語学。これはなんなんですか?
円城:これ、日本語版の最初のほうに誤字があって、誤字があってはいけないところに誤字がある。これ第何刷かな。一応2刷があって、2刷では直っているはずなんだけど……。あ、ここだ。「記憶と想定」とあるところ、これ、「想定」じゃなくて「想起」なんです。(54ページ)。記憶と、思い起こすことが区別できなくなるから、自分は今、過去形の物語を読んでいるのか、過去にいて現在形なのかがわからないっていう、謎の等価原理なんですけど。
小泉:これがちょっとよくわかんないなあと思いながらスルーして読んでいました。
円城:そこは一般相対性理論のパロディなんですね。
小泉:あー、なるほど。なるほどじゃないけど、なるほど。
円城:一般相対性理論では、自分は地球の上に立っているのか、1Gで加速するロケットの中にいるのか区別できない。継時上物語学的には、登場人物は自分がどういう語りをされているのか判断できない。区別できないし、それは視点次第、みたいな。だから、相対性理論の一般向け解説書みたいなものとあんまり変わらないところもある。
小泉:そうなんですか。そういう小説なんですか。
円城:そういうことが、あるっぽい、みたいな雰囲気でおすところが。
小泉:これ、円城さんが観測できる範囲での読者の反応はいかがでしたか。
円城:あんまりいないですね、読んだ人は(笑)。これSFを読む人が読むと混乱すると思うんですよ。というのも、半分まではSFっぽいけど、その後の処理がやっぱり家族小説っぽくなるじゃないですか。だからどうしても「えっ」って、なる。もっと冒険に行くのかと思ったら、繰り返すだけだったっていうのと、解決がよくわからないっていうので、SFとしてはそんなに評価されないのではないかなと。
小泉:なんか、SFと主流文学という言い方もあれですが、SFっぽいんだけどSFじゃない、少しSFみたいなせいで読者を獲得しかねているもったいない良作といえば、リチャード・パワーズの『ガラテイア2.2』が思い浮かびます。たとえば、私の夫はパワーズが好きなんですけど『ガラテイア2.2』はちょっと、みたいな……
円城:だめ? 僕、ガラテイアが一番好きなんですけどね、そういう人少ないですね。
小泉:私もあれが一番好きなんです。
円城:ガラテイアもだいたい起こっている通りのこと、当時の研究のことが書いてある。パワーズは基本的にそうで、だいたい起こっている現在の科学の最先端より、ちょっと先くらいを書くんですよね。だから割と本当のことが書いてあって、ガラテイアとか、当時のニューラルネットワークとかも、ふつうに、そうだよね、やろうと思えばこういうことやってた人いたはずだよね、やってた人いるよねっていう話だったんですよね。
小泉:あれは起こっている話だったのか、あれ。そういう話だったんですか。それにしても、あれもエモいですよね、あれ。なんでそういうことを書く人があんなにエモくなるんでしょうか。
円城:なんでしょうね。しょうがないんじゃない?(笑)。『舞踏会に向かう3人の農夫』とかは、そんなでもないですよね。その後、研究者や大学人ものになって、まあ、最初のやつも自分のこと書いているんだけど、だんだん自分のことを書いていくことになっていくと、孤独な男、みたいになっちゃう。
小泉:なるほど…。『SF的な宇宙~』に話を戻しますと、訳してて訳しづらかったところとかありますか?
円城:特に訳しづらいところはなかった……から引き受けたというのもあるけど。
小泉:楽しかったですか?
円城:割と自分が書いたんじゃないか疑惑ですよね(笑)
小泉:やっぱり!
円城:だいたい書いた、みたいな、そんな感じです。
小泉:そうなんですか。
ラフカディオ・ハーンを直訳に戻す
円城:自分にぴったり感がないとなかなか、僕は翻訳の人ではないので……と言いながら、いろいろなものをやっていますけど。
小泉:翻訳もする小説家、たとえば、村上春樹とかは翻訳するモードと創作モードは全然違う、きっかり分かれているみたいなことを言ってるじゃないですか。円城さんはそういう境界が極めてあいまいというか、デロ~っと混じっているというか。それもすごいですよね。あんまり翻訳したい!っていう感じではない。
円城:まあ、翻訳する人はいるんで、やってくれるといいなって。そんなに面倒な英語じゃないんですよ、チャールズ・ユウ。長いけど。面倒なやつは訳そうとは思わないですよ。それは誰かが訳してくれれば。といいつつ、ラフカディオ・ハーンの翻訳とかもやっていますが、これは、ちょっと楽しいかな。
小泉:それも下訳ありで?
円城:ハーンはもう翻訳がいっぱいあるので、それが下訳代わり。ただ違うのは、直訳するっていう。
小泉:なんでハーンなんですか?
円城:ハーンは英語で書いているのに、みんな日本語に訳して、日本語が、まあ、あの人は20世紀の頭の人じゃないですか。で、初期の翻訳は朴訥なんですけど、日本語に他の人が訳して……ハーンは日本語ができないから……翻訳が出るんですけど、だんだん翻訳がうまくなってくる。この100年くらいかけて、すごく洗練の度合いが上がっていて、みんななんとなく、小泉八雲はちゃんとした日本語で怪談を書いていたのだなあ、みたいなイメージがあるんですけど、全然違いますからね。
小泉:あ、そうなんですか。私、小泉八雲がちゃんとした日本語で怪談書いているのかと思ってました。
円城:英語で書いてる。しかもあんまり英語も美しくはない。怪談っぽい。怪談だからですけれど。だから今も、河出から、えーと誰だっけ、個人全集が出始めているんですけど、それとかも今までもハーン研究の成果を踏まえた美しい訳ですけれども、ハーンはそんなにきれいに書いてないし、そもそも日本人向けに書いていない。
小泉:なんと!
円城:20世紀頭に、アメリカ人に向けて書いている。っていうのを直訳すると、かなり楽しい怪談。しかも、日本語の語彙がまったく説明されていない。これ、当時読んでてどうなのっていう。たとえば「耳なし芳一」だったら、「ミミ・ナシ・ホーイチ」とカタカナで訳す方針です。だってローマ字でそう書いてある。注もない。
小泉:では、100年をかけてだんだん洗練されていったハーンの怪談を円城さんはまた戻している、直訳に戻している?
円城:直訳に戻して、当時のアメリカからは日本はこういう風に見えていて、今の日本と過去の日本と同じくらいの距離がある感じにする……
小泉:なんか、鳥を野生に帰すみたいな……。そんな素敵なことをやっていらしたんですね。どこでやっているんですか。
円城:角川の『幽』っていうところでやっています。。それは1回終わってっていう感じですね。
雨月物語について
小泉:河出の現代語訳で思い出しましたが、円城さんは、『雨月物語』を訳してやっていますね。あれも翻訳といえば翻訳ですよね。あれはどうでした?
円城:そうですね。あれは難しかったですね。疲れたかな。あまりオフィシャルに言えることはないですね。
小泉:おっ。
円城:河出とかなり仲が悪くなりました(笑)
小泉:なんと、まあ。
円城:いや、悪くなってはいないんだけど。あんまりオフィシャルには言えないことが結構ありましたね……。
小泉:必要に応じてカットしますのでお聞かせください。
円城:やっぱり現代作家が現代日本語に訳すのは、あらかじめの統一した方針が決められないし、やり方も暗中模索だから、どうしてもモメがちになる。校閲さんは原文に忠実にいきたいわけだし、あの人がやってよかったものがどうして自分ではダメなのか、とか、そりゃなりますよね。そういうのでふらふらすると、編集部と書き手の意見が収束しないから、同じところを赤で消して、復活させて、赤で消して、みたいなやりとりになったりですね。
小泉:それは、円城さんが「作家性」を求められて現代語に訳したもの、その過程において現代風にアレンジされた言葉なりフレーズなりに関して「雨月物語にはそんなことを書いていません」っていう、平行線が続くという感じですか?
円城:その辺の落とし所が決まらないのと、ここはこういう風にアレンジしますって合意していたはずのものに赤が入ってくるとか、こっちが赤で直したものが、向こうの赤で返ってくるとか、分量も多いので起こるわけですよ。
小泉:まさに赤字で赤字を洗う……
円城:そういうの続けたら仲、悪くなるよね。だから悪くならないように手順を先に決めないと。
小泉:あの、町田康さんが『宇治拾遺物語』をやったじゃないですか。すごく面白くて、あれはもう文学的事件だくらいびっくりしたんですけど。
円城:あれが出たあとに、他はどうするかっていう話ですよ。(以下削除。)
小泉:あのシリーズは、現代語への飛躍みたいなものが、ある程度作家にお任せという感じなのか、それとも編集側である程度のラインが決まっているのか、そのレベル感はどう決まるのかなと思ってました。
円城:場合場合。
小泉:じゃあ、『雨月物語』は円城さんとしては道半ばでリリースしてしまった感じではあるんですか?
円城:うーん……。かなり怒ってた時期もあったんですが、内容としてはいいところかな、と。僕は幸いに『雨月物語』だから、元々、何かすごいことをするつもりはなくて淡々といけばいいや、と。ただ、作業プロセスはよくなかった。
小泉:この本はそういうことはなかったですか?
円城:本当はもう1回、通したかったかな。でも言い出すとキリがない。それも作業プロセスの決め方次第なんですよね。
もう一度、SF的な宇宙と相転移と継時上物語学について
小泉:『SF的な宇宙~』の訳のほうに話を戻しますと、翻訳作業そのものはチャールズ・ユウと円城さんの感覚が似ていて割とスラスラいったと。
円城:うん。感覚はすごく似ていて、ただ、文章があまりにも長いって言われたら自分の呼吸で切りなおそうかと思ってたんですけど。
小泉:英文が長いと切って短くするんですか?
円城:けっこう、みんな短くしてますよね。従属節のありかたが違うから、切ったほうがいい場合は多い。でも基本的には切らないでいきました。あの、架空の彼女のところとか、長いですよね。やめろよって感じなんですけど。冒頭も長いですよね。チャールズ・ユウはいつもそうで、冒頭が変に長い。そこに掛け言葉とかも入ってるんですけど、長文にされると掛け言葉が訳せないので、短ければ無理やりやったりとかできるんですけど。同じ形容詞がたくさん並ぶところとかも、できるだけ数を合わせたりはしていて、そんなしなくていいことを割としているので、もうちょっと、僕のリズムでって言われたら短くなったでしょうね。基本、直訳型ですね。こういう話なので、チャールズ・ユウの間違いとかはないはず。間違えているんだか、ギャグなんだかわからない。
小泉:さらに円城さんが訳すとなると間違いなんてないんだ、という気になりますね。
円城:それもいいんじゃないかと。
小泉:最初はこの「SF的な宇宙」なるものを把握しようとがんばったんですが、
円城:けっこう早い段階で、まじめに考えようかと思っても無駄なんだなってわかるじゃないですか。
小泉:まあ、2回くらい読み直して頭を整理すれば、そっかそっかってなるんですけどね。ああ、マイナー宇宙31っていうのはタイムワーナー社が……
円城:タイムワーナータイム社。作っている途中に放棄したところなんですよね。
小泉:こういうところがいっぱいあるっていうことですよね。
円城:こういう宇宙がいっぱいあって、アトラクション用に作ったんだけど、ちょっと失敗して。作りかけの宇宙なんですよ。小説としても作りかけ、ということかも知れないあ。だからいろんな変なことが起きる。
小泉:それを「SF的な宇宙」って名付けたセンスがいいですよね。
円城:Science Fictional Universe.
小泉:タイムマシンの中でタイムマシンを修理しているの? ってなって。で、それが、どれくらいの大きさのところなのかっていうのが、靴箱と水族館の間、とか書かれていて、想像して絵を描いてみたりして。
円城:どれくらいのスケールのところにあるかっていう話ですね。それも物理的な発想で、スケールってなんとなく、10倍、100倍、1000倍みたいな、そういう上がり方をする、分子・原子…倍倍みたいなスケール。だから、靴箱と机、とかじゃなくて、靴箱と水族館の間くらいのスケール。
小泉:スケール。
円城:でも、そのあとに「電話ボックスくらい」って出てくる(笑)。電話ボックスくらいっていう割には手を伸ばせたりするんですよ。そんなに電話ボックスは大きくないはずなのに。適当。
小泉:まあ、最初は絵を描いてみたりして想像しようとしていたんですけど、だんだんそれもやめていって。
円城:どうでもいいんです。時間の行き止まりのところで寝たりしていますからね。そこでは何も起こらない。
小泉:ええと、まとめますと、2回繰り返すことが大事で、
円城:2回繰り返すことはたぶん必要なんですよ。
小泉:2回繰り返して、相転移が、そろう……?
円城:きっかけみたいなものがバーン!って。
小泉:バーンって。
円城:撃つっていうので終わります。
小泉:今日はもう少し、SF的な宇宙について掘り下げようと思ったんですけど、円城さんと話しているとなんだかそれもどうでもよいような気持ちになってきました。とりあえず、最後がどうなったのかわかったのでよかったです。わかったのかな。
円城:全然、違う人になった。
小泉:そうなんですか?!
円城:人格が変わった。タイムループも解消された。で、お父さんを助けに行って、お父さんも助かったと。お父さんを戻したところでどうなるんだとか、そういうのはあるわけですが。お母さんもあの状況だし(笑)。
小泉:お父さんもあそこにぶち込むのか(笑)
円城:とりあえず、まあ、助かった。一堂に会することはできる。とても辛い体験にはなるだろうけど。
小泉:だからやっぱりこれはSF小説として読むんじゃなくて、一風変わった、家族小説として。
円城:まあ、発想にきっとそういう物理的な現象があって、それを元に、でもまあ、このタイムマシンが動く原理も継時上物語学なので、ちょっと物語論小説。タイムマシンが動く原理は、記憶の中の光景と現実の光景が区別できないっていう原理で動いているので、その時点でふつうのSFではないよね、と。
小泉:フンワリした原理ですね。
円城:記憶と想起は区別できないっていうのは、現実世界と思い出が区別できないっていうのが、タイムマシンの原理と、物語が成立するのはそういう概念があるからだよねっていう発想ですね。
小泉:その設定だといろいろ書けそうですね。やり方によってはカズオ・イシグロ的な、なにか……
円城:うーん、他の短編集を読む限り、そういう人ではない(笑)。
小泉:これ、他の短編集は出たりしないんですか?
円城:こないだ一つだけ訳しましたけど。なんだっけかな。「OPEN」っていうやつをSFマガジンに、訳せって言われたので訳しました。
小泉:なんかもう、チャールズ・ユウ担当、みたいな。
円城:そうですね。でも短編集は難しそう。短編集が2冊あるんですけど。『Third Class Superhero』と『Sorry Please Thank You』。やや前の時代の実験小説っぽいのが多いのでちょっと難しいかな、と。『Third Class Superhero』は、マーベルコミックみたいな設定で、弱い超能力しか持っていない、ものをちょっと湿らせることができるモイスチャーマンとか出てくる。ちょっと湿らせられる(笑)。
小泉:モイスチャーマン、読んでみたいです。
円城:だからそういう、ジャンルの真ん中じゃなくて、ちょっと捻って、という人。
小泉:なんとなくわかってきました。ところでこれ、訳者あとがきがないんですよね。
円城:特に言われなかったんですよね。くりこみ相転移のこと書く気まんまんでいたんですけど。
小泉:あとがきでそれ、書いてほしかったですね。円城さんによる解説がほしかったですね。
円城:そうね、うん。
(終わり)