「TGO」が鮮明にとらえたフォボス
【2016年12月9日 ヨーロッパ宇宙機関】
欧・露のミッション「エクソマーズ」の周回探査機「TGO」は、11月20日から28日にかけて火星上空を2周する間に、初の試験観測を実施した。その際に撮影された火星の画像は先週公開されたばかりだ(参照:アストロアーツニュース「火星周回探査機「TGO」、試験撮影好調」)。
軌道周回2周目の11月26日、TGOは火星の衛星「フォボス」の観測と撮影を行った。フォボスは火星から約6000km離れており、現在4.2日周期で長い楕円軌道(230km~9万8000km)を周回中のTGOが火星に最接近したタイミングでの撮影となった。大きさ27×22×18kmのフォボスを7700kmという近距離から撮影した画像は実に鮮明だ。
TGOがとらえたフォボス(提供:ESA/Roscosmos/CaSSIS)
フォボスのカラー画像は、複数のフィルターを使って撮影された数枚の画像から作成されている。フィルターは、鉱物の組成の違いを明らかにできるよう最適化されており、画像に青っぽい部分や赤っぽい部分が見えている。
「高解像度のフォボスの画像は、ヨーロッパ宇宙機関の『マーズエクスプレス』やNASAの『マーズ・リコナサンス・オービター』などによるミッションでも撮影されましたが、今回の画像はTGOが非常に短い時間で撮影できることを証明した申し分のない結果です。他の2つの搭載機器で得られたデータの分析も進められています」(TGO搭載の「CaSSIS」カメラ主任研究員 Nick Thomasさん)。
「試験的な軌道周回と、その間に得られた較正用データに満足しています。これで、来年の終わりに本格的に開始するミッションでの観測精度が向上します」(TGOプロジェクトサイエンティスト Håkan Svedhemさん)。
試験観測を終えたTGOは、2017年の終わりまでに、ほぼ真円を描く軌道に入る予定だ。そのために必要となる、火星大気を利用した減速「エアロブレーキング」の準備が、今後のミッションの焦点となる。
本格的な観測開始後、TGOは火星のメタンなどを含む大気の調査や、地表下の水や氷の探査、表面の立体画像作成などを行う。さらに、2020年に打ち上げられる「エクソマーズ第2ミッション」の探査車や科学調査プラットフォームなどのデータ中継役なども担うことになっている。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ宇宙機関: http://www.esa.int/ESA
- ロスコスモス: http://www.roscosmos.ru/
- アストロアーツ:
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