だが、テクノロジー企業が解決できない問題もいくつかある。それは大衆のメディアへの信頼が薄れていることなどだ。ギャロップ社が行った最近の世論調査によると、米国内の回答者のうち、「ニュースを十分に、正確かつ公正に伝えている」としてメディアを信頼している人々は32%にとどまった。この数字は2015年時よりも8%ポイント低く、少なくとも1972年以来の最低だ。信頼感の低下が最も急だったのは共和党支持者の間で、メディアを信頼しているとの回答は前年の32%から14%に急落した。
ニュース産業のビジネスモデルが紙媒体からデジタル媒体へと進化したことも、偽ニュース現象をつくりだした。それほどの昔でない時代には、新聞が実質的に市場を独占していた。新聞に次ぐメディアには、ラジオやテレビがあった。
現在は、インターネットが何百万もの潜在的なニュース発信元を生み出している。ブロードバンド接続の環境されあれば誰でも、天空にコンテンツを送り出して、それをニュースと呼ぶことができる。
かつて街角で市場を独占した新聞は、今ではオンラインでの閲覧が可能だが、そこでは競い合って人々の関心を引かなければならない。無料閲覧が可能なオンラインのニュースサイトには質の高い内容を発信しているものもあるが、中には陰謀説をあおったり、政治的主張のために、虚偽と分かって情報を発信するものもある。
利益追求の圧力も問題の解決に役立っていない。紙媒体への広告獲得のビジネスモデルは崩壊し、デジタル広告もそれに取って代われるほど急速には成長していない。フィナンシャル・タイムズ紙を含む多くの新聞社は電子版の有料化に乗りだし、これが最大の収入源となった場合もある。
無料閲覧を阻止する有料情報の提供と、ニュースの内容に懐疑的なデジタル人口の増加が合わさると、偽ニュースが繁栄する環境が整う。読者らは「本物の」ジャーナリズムを敬遠している。そんなものは信用していないからだ。その代わり、自分の先入観に合うなら偽の情報でも受け入れる。
フェイスブックやグーグルなどのテクノロジー企業は、この問題に真正面から取り組まなければならない。そうしなければ、偽ニュースは、まさに「本物」になってしまうだろう。
By Matthew Garrahan
(2016年12月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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