The Economist

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

利益相反? トランプ企業、資産価値の実態

(1/3ページ)
2016/12/9 6:30
保存
印刷
その他

The Economist

 トランプ氏の事業と大統領職との間に利益相反が生じる可能性が問題視されている。英エコノミスト誌が、同氏の企業グループの資産価値と事業収益などを分析した。同氏が政治にビジネスを持ち込んだとしても、同グループに大きな利益はもたらさないとみられる。

所有するゴルフコースでスイングを練習するトランプ氏(スコットランドのアバディーン近郊にあるトランプ・インターナショナル・ゴルフリンクスで)=ロイター
画像の拡大

所有するゴルフコースでスイングを練習するトランプ氏(スコットランドのアバディーン近郊にあるトランプ・インターナショナル・ゴルフリンクスで)=ロイター

 インド、ムンバイ南部にある新興地区ウォルリで現在、新たな高級分譲マンション「トランプタワー」の建設が進んでいる。建築現場の様子は、他の建設現場と何ら変わるところはない。だが、そのマンションの広告案内──ドナルド・トランプ氏の写真のわきに黄金色の高層ビルがそびえ立つ──は「夢」を売っている。

 そこに込められた顧客へのメッセージはこうだ。「トランプ氏は最高クラスのディールメーカー(ビジネスマン)です。世界の主要都市を股にかけ、今や彼に匹敵する取引をできる者はいません。まさにアメリカンドリームを実現した人物です」──。

■在任中に100億ドル稼ぐ?

 ムンバイのトランプタワーを建設するインドの不動産開発大手ロドハは、少し前まで自社のウェブサイトに「次期米大統領、おめでとうございます」というメッセージを載せていた。だが、現在このメッセージは削除されている。トランプ氏が所有する企業グループの様々な事業と今後米大統領に就任して担う仕事との間に利益相反が生じる可能性が指摘され、大騒ぎになっているからだ。

 トランプ氏は、自らを世界の大物実業家との伝説で飾り立ててきた。それに呼応するように、彼のグループの中核企業、米トランプオーガニゼーションが巨大な国際的縁故ネットワークに変貌するのでは、という疑念が今、怒りを伴いつつ膨れ上がっている。

 米国民は、トランプ氏が世界各地で何十億ドルという規模のプロジェクトを展開しているとの記事や、彼が各国の実業家とにこやかに握手する写真、海外にあるトランプ氏の名前を冠した異国風の高層ビル(それらのビルはまるで米国的倫理観の退廃を象徴するようだ)の写真など、彼が様々な形で自分の成功をアピールするのを目の当たりにしてきた。

 中道左派の米経済学者ポール・クルーグマン氏は、トランプ家がトランプ氏の大統領在職中に得る利益は100億ドル(約1兆1300億円)に上る可能性があると示唆した。

 ただ、トランプ氏が常識では考えられない手法でビジネスを展開してきたことを考えると、そんなことが果たして可能なのか現時点で判断するのは時期尚早だ。実際に利益相反のリスクがあるのかどうかを理解するにはまず、同氏の会社を冷静にとらえる必要がある。

■実は並の不動産企業

 トランプオーガニゼーションは、決して世界的に知られた企業ではない。そこそこの歴史を持つ、主に米国の不動産を扱う小さな企業にすぎない。もしトランプ一族が今後4年間で、もうひと財産築くつもりなら、このさえない企業を根本的に再構築する必要がある。

 トランプ氏が政治と自分のビジネスとの境界を故意に曖昧にしようとしているのなら、その理由は、自分の会社を大いに発展させられる可能性があるからというより、むしろ脆弱な部分を抱えているからだと言うべきかもしれない。

 トランプオーガニゼーションについての情報源は、トランプ氏が連邦選挙委員会に提出した財務開示文書以外、ほぼない。本誌(英エコノミスト)は、2015年に提出された文書を基に同氏が関係する170余りの法人の財務データを集計した。一部の資産についてはその価値と収入について幅のある数字しか記されていないため、本誌独自の推定や第三者機関による推定を加えた。

 ではまず、規模から見てみよう。トランプ帝国の企業価値はざっと43億ドル(約4800億円)、年間総売上高は4億9000万ドル(約550億円)に上ると推定される。

トランプ帝国の中核企業、トランプオーガニゼーションの2015年の資産(推定)。資産のほとんどは米国の不動産だ
出所:The Economist
画像の拡大

トランプ帝国の中核企業、トランプオーガニゼーションの2015年の資産(推定)。資産のほとんどは米国の不動産だ
出所:The Economist

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 次へ
保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

関連キーワード

ゴルフコースホテルライセンスドナルド・トランプミット・ロムニーロス・ペロートランプタワーマンション

【PR】

【PR】

The Economist 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

ニューヨークのトランプタワー

利益相反? トランプ企業、資産価値の実態

 トランプ氏の事業と大統領職との間に利益相反が生じる可能性が問題視されている。英エコノミスト誌が、同氏の企業グループの資産価値と事業収益などを分析した。同氏が政治にビジネスを持ち込んだとしても、同グル…続き (12/9)

トランプ新政権の下で米経済成長が拡大するとの期待からドルも米株式相場も上昇している=ロイター

ロイター

忍び寄るドル高の危険

 世界で最も影響力のある通貨がその力を見せつけている。トランプ氏が次期米大統領に決まってから3週間で、米ドルは先進国の複数通貨を組み合わせた通貨バスケットに対し、歴史に残るほどの急激な上昇を演じた。現…続き (12/5)

政府主催の第3回世界インターネット大会でビデオ演説する習近平国家主席。「中国はインターネット主権の理念を堅持する」と語った(16日)=AP

AP

中国、サイバー新法を制定 情報管理を国内保管

 中国政府は、国内のネットワークセキュリティーを高めるためとして、このほど新法を制定した。情報の国内での保管義務や重要ネットワーク機器の認証制度など、外国企業には事業の障害となりそうだ。法律が転用され…続き (11/29)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

リーダーのネタ帳

[PR]