韓国パク大統領の弾劾議案 国会が可決 大統領の職務停止へ

韓国パク大統領の弾劾議案 国会が可決 大統領の職務停止へ
韓国の国会では9日午後、野党が提出したパク・クネ(朴槿恵)大統領の弾劾を求める議案の採決が行われ、可決に必要な国会議員の3分の2を大きく上回る234人の賛成で可決されました。これによりパク大統領の職務は停止されることになり、憲法裁判所で弾劾が妥当かどうかの審理が始まることになります。
韓国の国会では会期末の9日午後3時すぎから本会議が始まりました。本会議では、パク・クネ大統領の長年の知人、チェ・スンシル(崔順実)被告や側近らが起訴された一連の事件をめぐり野党議員がパク大統領の弾劾を求める理由として、「政策や人事に関する文書を大統領府の職員を通じてチェ被告に漏らすなど国家元首としての本分を忘れた」などと述べました。

続いて採決に移り、各議員が無記名で投票を行いました。開票の結果、賛成が234票、反対が56票、無効が7票、棄権が2となり、可決に必要な国会議員の3分の2を大きく上回る234人の賛成で可決されました。これは、パク大統領とは距離を置いてきた与党「セヌリ党」非主流派だけでなく、大統領に近い主流派の中からも一定数の議員が厳しい世論を意識して賛成票を投じたことを意味しています。

これによってパク大統領の職務は停止されることになり、今後180日以内に憲法裁判所が弾劾の妥当性を判断するまでの間、ファン・ギョアン(黄教安)首相が大統領の職務を代行することになります。

可決の瞬間、本会議場の議員たちは座ったまま静かに結果を聞いていました。韓国大統領の弾劾を求める議案が可決されたのは2004年当時のノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領の時以来12年ぶり、2度目です。

きっかけは韓国メディアの報道

一連の事件が注目を集めるようになったのは、ことし10月の韓国メディアの報道がきっかけでした。

パク・クネ(朴槿恵)大統領が長年の知人であるチェ・スンシル(崔順実)被告に演説の原稿を事前に渡して添削や助言を頻繁に受けていたと伝えました。この直後、パク大統領は、報道の内容を大筋で認め、国民に謝罪しました。

検察が大統領府の高官など関係者の捜査に乗り出すと、チェ被告は10月末に滞在先のヨーロッパから帰国。報道関係者らにもみくちゃにされながら検察に出頭する姿が大きく報じられました。

大統領が一個人の影響下で公務を行っていたとされる前代未聞の疑惑に国民の不満は爆発し、毎週土曜日、大統領の退陣を求める大規模な抗議集会が韓国各地で開かれるようになり、参加者の数は回を重ねるたびに膨れあがっていきました。

一連の事件を捜査していた検察は先月20日、チェ被告と大統領の側近2人を職権乱用などの罪で起訴。その際、「大統領は相当な部分で共謀関係にあった」と判断しました。これを受けて野党側は大統領の弾劾に向けた動きを本格化させ、与党内でも大統領は早期に退陣すべきだという意見が広がりました。

先月29日、パク大統領は一連の事件が明らかになってから3回目となる国民向けの談話を発表し、与野党が大統領辞任に向けた道筋で合意すれば、再来年2月の任期満了を待たずに辞任する意向を表明しました。しかし、国民の怒りは収まらず、今月3日にソウル中心部で行われた抗議集会には、1987年の民主化以降、最大規模となるおよそ32万人が参加し、大統領府から100メートルのところまで行進して、即時退陣を訴えました。

大統領の支持率が歴代最低の4%という厳しい世論を背景に、野党3党は、パク大統領の弾劾を求める議案を国会に提出し、9日、韓国の憲政史上2度目の大統領に対する弾劾議案の採決が行われることになりました。

韓国大統領の弾劾手続とは

韓国の国会法によりますと、国会の過半数の議員によって提出された、大統領の弾劾を求める議案は、議長が本会議で報告したあと、24時間以降、72時間以内に採決されなければなりません。採決の結果、国会議員の3分の2以上の賛成で可決されると、大統領の職務は停止され、首相が代行することになります。その後、憲法裁判所で大統領の弾劾が妥当かどうかの審理が行われます。
憲法裁判所は、国会が弾劾を求める議案の可決を報告してから180日以内に最終的な決定を下します。裁判官9人のうち、6人以上が弾劾は妥当だと判断すれば、大統領は罷免され、60日以内に大統領選挙が実施されることになります。

韓国では、2004年に当時のノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領が大統領選挙の際、みずからの陣営に不正な資金が流れた事件などをめぐって、国会で初めて弾劾を求める議案が可決され、ノ大統領は職務停止に追い込まれましたが、およそ2か月後に憲法裁判所が弾劾を棄却し、職務に復帰しました。

職務代行のファン・ギョアン首相とは

大統領の職務を代行することになるファン・ギョアン(黄教安)首相は検事出身の59歳で、2013年のパク・クネ政権の発足とともに法相を務めたあと、去年6月には首相に就任しました。

ファン首相はことし7月、アメリカの最新の迎撃ミサイルシステム「THAAD」の配備先に決まった韓国南部を訪れ、地元の住民たちに直接、理解を求めました。その際、反対派に取り囲まれて卵やペットボトルを投げつけられるハプニングもありました。

大統領府はパク大統領の知人や側近らをめぐる一連の事件で混乱した事態を打開するため、先月、ファン首相を更迭して野党に近い人物を起用する人事案を発表しましたが、野党側が「事前の協議がなかった」などと反発して立ち消えとなり、首相の更迭も見送られました。その後、ファン首相は南米ペルーで開かれたAPEC=アジア太平洋経済協力会議にパク大統領に代わって出席しました。