最近、新規に出店する「セブンイレブン」の標準的な店舗面積は約200平方メートルです。百貨店や大型スーパー、ショッピングセンターは数万、いや十数万平方メートルにもなります。そんな小さなお店ですが、約1万9000店舗を束ねるととても大きな力になります。1年間の総来店客数は約70億人、おにぎりの販売個数は約21億個、全店舗の売上高は4兆3000億円です。
■イノベーションで需要創る
今回、読者の皆さんには、この小さな街のお店に、革新的な商品やサービスなどの新たなアイデアを吹き込んでもらいたいのです。お店を拠点として考えてもらっても構いません。駐車場やお店の屋根、配送のトラックなどの活用もありです。店舗にあるマルチコピー機はネットでチケット会社や自治体などとも結ばれています。
コンビニ業界は、10年ほど前に飽和や成長の限界説がささやかれました。しかし、セブンイレブンは新たな商品やサービスを創造して成長を続け、乗り越えてきました。
ブレークスルーが可能だったのはイノベーションがあったからです。例えば、セブンイレブンでは2000年代になってからセブン銀行を立ちあげました。金融機関の支店が減りつつあったころに、24時間いつでも現金の預け払いが可能で「お財布代わり」として利用者に支持されました。セブンプレミアムというプライベートブランド(PB)商品では、共働き世帯の増加などが進む中、時間や手間をかけずに料理できるおいしい食品や便利な商品を有力メーカーと組んで開発しており、売上高は1兆円を超えました。昨年からはグループが扱う商品をネット経由で注文してセブンイレブンの店頭で受け取れる「オムニチャネル」にも挑戦中です。
かつてセブンイレブンに来店されるお客様の年齢層は20代の若い人が多かったのですが、今では50歳以上が最も多くなりました。セブンイレブンに求められる便利さが変わるのも当然です。読者の皆さんには、これからのセブンイレブンに求められる「便利さとは何か」について考えていただきたいのです。私たちは「近くて便利」という標語を掲げて、便利さの創造に取り組んでいます。皆さんと変わり続けるコンビニの便利さを追求して、より社会インフラや拠点としての役割を果たしていきたいと思います。
井阪隆一・セブン&アイ・ホールディングス社長の課題に対するアイデアを募集します。投稿はこちらから |
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■編集委員から 「コンビニエンスストアだからしょうがないよね」。以前、井阪隆一社長を取材した時に印象に残った言葉です。セブン―イレブン・ジャパンで、お弁当などの商品開発担当だった井阪さんは品質や味覚について、消費者から冒頭のような感想を聞くと悲しい気持ちになったそうです。
100円玉の世界です。デパ地下などの商品に比べると極めて手ごろな価格ですが、価格と品質はトレードオフの関係になりがちです。それでも井阪さんは消費者に「おいしい」と言ってもらえるように取り組みました。同僚とは「『しょうがない』と言われないようにしよう」と誓い合ったそうです。
井阪さんだけではありません。セブンイレブン社内には妥協を許さない厳しい姿勢が至る所に埋め込まれています。その真剣さが需要を創造する源泉にあるのだと思います。読者の皆さんのアイデアにも真剣に向き合って今日的な「便利さ」を具現化してくれるでしょう。(編集委員 田中陽)