かみエシになるために
神絵師必勝法
Twitterやpixivなどのイラストを共有できるSNSにはいわゆる「神絵師(神のように絵が上手いイラストレーター)」と呼ばれる人々がいるが、彼らには共通点があるに違いない。神絵師の条件とは何なのか?彼らを神絵師たらしめている要素は何か?
Twitterのタイムラインに流れてきた神絵師の絵から彼らのイラストにおける特徴を炙り出すと、意外な共通点が見えてきた — 彼らの描く絵には署名(サイン)が入っているのである。
これこそが神絵師の絵を神絵師たらしめている重要なコーポネントだと考え、今回は神絵師となるために署名の練習をしたいと思う。
愚直に一筆書きでサインを書くと、以下のようになる。
何だこれは。もはや神絵師どころの問題ではない。
このサインの問題点を挙げると; 1. 字が下手であり、 2. 文字列がダサい、 3. そもそも一筆書きするのがおかしい。
見えてきた問題点から、1. 綺麗な字で 2. かっこいい文字列で 3. 日本語を一筆書きしない という改善案が考えられる。これを反映した署名が以下のものだ。
少なくとも自分の名前ではないので署名ですらない。中国書道に倣ったサインであり、1.と3.は(おそらく)満たしているが、2.に関しては歴史家の議論を呼ぶところかもしれない。(注:これは毛沢東のサインの模写である。)
試行錯誤の甲斐もあり、自分は以下のような署名を考えた。
筆記体とブロック体を混ぜることで読みやすく、かつ単純明快で親しみのある署名になったと思う。
これさえあれば神絵師間違いなしである。そこで、自分が4歳のときに幼稚園で描いた絵にこの署名を加えてみた。
署名の位置がおかしい気がするが、雰囲気は完全に神絵師のそれである。この子は将来有望だ。
余談
(この記事は「神絵師 Advent Calendar 2016」の9日目の記事として書かれたものです。)
こんにちは。やぷらすです。普段はTwitter(yaplus)とか茨城県にいます。
自分がまじめにペンを握って絵を描き始めたのはちょうど今から1年半前のことであり、それまではゲーム用にドット絵を描いたり、教科書の隅にマリオを書くくらいで、女の子の絵なんて恥ずかしくて書けないよ〜!という感じでした。
そもそも絵を描きはじめたきっかけは、自分のアイコンは自分のSNS上での顔だから、他人と同じものであるべきではない(≒自分で描くべき)だと考えたからです。
それまではペンタブも持っていなかったし、そもそも受験生ということもあり絵にうつつを抜かせる状態ではなかったので、マウスでぽちぽちとドット絵で自分用のアイコンを描いていたのですが、ある時Twitterのオタクから「ドット絵しか描けないのに偉そうに(大意)」というパンチを食らったので、「それだったら」と対抗心丸出しで受験が終わったタイミングでペンタブを購入しました。
もともと自分用の「最強の」アイコンが描ければそれでいいと思っていたので、はじめのうちは絵に対してあまり多くの欲はなかったものの、Twitter上で多くの「神絵師」の人の素晴らしい絵と自分のしょぼい絵を比べるうちに、神絵師の力(画力・財力・発言力)が欲しくなり、今回「神絵師(になりたい) Advent Calendar 2016」として参加しました。
以下では、1年半の間において絵を描き続けてきた反省(というよりも体験談)を記します。自分の絵はヘタクソだし、アドバイスを立場にもないと思うので、絵を描くコツのようなものは一切ありませんが、暇があれば読んでいただけると幸いです。
準備
絵を描くには道具が必要なので、まず形から入るためにもペンタブを購入しました。WacomのIntuos Pen & TouchのMサイズです。持ち運びに便利だし、正直筆圧感知は1024段階もあれば(僕が描く程度の絵であれば)十分に描けると思います。今は新型機も出ているらしいですが、新型機の付属ペンには消しゴムがないらしいので消しゴムが必要な人はこちらの旧型機を買うのもアリだと思います(ちょっと高騰気味だけど)。
次に、絵の練習法を知るために本を買う・Webサイトを見る…のではなく、絵を描いている姉にアドバイスを求めました。姉から得られたアドバイスは「絵の練習法はいろいろな本やサイトに載ってるけど、合う合わないは人それぞれだから、必要以上に頼らない方がいい」。
練習
姉からアドバイスを受けた時はそんな殺生な、と思ったものの、実際に絵を描くようになってからはなるほど合理的で適切なアドバイスだと思いました。
「絵を描く」とは漠然というものの、今思えばこれは「クソでかい主語」に近いと思いました。世の中には見渡すだけでリアル・コミカル、シャープ・フラット…など色々な絵があります。これに対して、絵の練習法はただ一つのフォーミュラがあるでしょうか?ちょっと難しいですね。
練習法に固執していてもしょうがないので、まず自分の描きたい絵をはっきりさせることから始めました。もともとアイコンを描きたかったので、1. シンプルな線画で 2. 甘ったるくかわいい 絵を目標に据え、これらに該当する絵をとにかく真似る — 模写を続けることにしました。
当然ながらディスプレイを見ながら絵を描くのと手元の紙に描くのでは感覚が大違いです。模写をすることで実際に手を動かして見ると、板タブでのデジタル絵に存在するアナログ絵との壁が見えてきます。当面の間は、模写を通してこれに慣れる作業を続けました。
出力
以下は絵を描き始めた2015年6月時点での絵です。「きんいろモザイク」の九条カレンちゃんを描いたのですが、今見てもひどい絵です。
この絵が「ダメ」な部分は一目見ただけでもたくさんありますし、実はこの絵を描くにあたってのレイヤー構成や描いた経過からも反省点はいくらでも炙り出せます。順次追っていきましょう。
まず、全体的に仕上がりがのっぺりとしており、プラスチッキーなチープさが感じられます。中途半端なアニメ塗りと不安定なGペンによる線画が原因といったところでしょうか。ハイライトの入れ方・色遣いの悪さもチープさを引き立たせています。
下の画像はこの絵の下書き(兼ラフ)です。
下書きは目に見えない部分なので、ある程度の粗相は許されるとは思いますが、ここからペン入れをするには線が定まっていなさすぎる。これでは、ペン入れの際にまたどこに線を引くかで悩むことになり、時間を余分に使ってしまいそうです。
そして、下書きと清書の両方から感じられるのは、全体的に線が太くディテールが曖昧になってしまっているところです。これでは、ただでさえ説得力のない線画がますますダメになってしまいます。
はじめの絵ということで画力についてはあまり触れませんが、構図もなんだかよく分かりません。そもそも、この絵は何を表現したいのでしょうか?
以上のように自分の絵を自己批判することで、今後絵を描くときのアンチパターンが見えてきそうです。今回は 1. 配色のセンスを磨き、 2. 下書きは清書のための線を描く。 3. 細い線でディテールを大事に 4. 何を描きたかったのかを伝えられるようにする。といったところでしょうか。
もちろんここまで自己批判をすることは毎回毎回ありませんが、ここで得られた反省を意識して次の絵を描いたり、上手な絵は自分の絵とどう違うのかを観察することは絵の練習に大いに役立ちました。
絵を描き終わってTwitterに上げて、満足する…で終わる人は少ないと思います。特に自分は人一倍世間体を気にする人間なので、上のように出来に関して検討したり、これを使って絵を見た人の反応を確認します。Twitterのlikes/RTs数も一つの指標になると思いますが、気にしすぎると逆にノイローゼになってしまうのでほどほどにしたいです。
処方箋
絵を描いていると時折「スランプ」と呼ばれる状態に陥ったりします。多くの絵描きはスランプの主な症状として、なぜかやる気が起きない、絵を描きたくない、以前描けたものが描けない…などを挙げます。
先ほど書いたように、人一倍世間体を気にする自分はTwitterのlikes/RTs数が少なかったり、他の絵を描いてる人と自分を比べて自己嫌悪に陥りがちで、これがスランプに一層拍車をかけることになります。
困ったときにすぐ姉頼みになってしまうのは弟の宿命でしょうか。再び姉にスランプに対するアドバイスを求めると、「自分もよくスランプになるけど、そういう時は絵を描くことから離れるといい」と言ってくれました。
絵を描くことに自分を押し潰される前に、逃げ道をいくつか作っておくとよさそうです。ゲームをしたり、アニメを見たり、プログラミングをしたり…自分は絵を描くことが全ての人間ではなく、ただの学生だということを忘れずにいると、自然に肩の荷が軽くなりました。
一年半が経って
以下の絵は先日挙げた絵と、その下書きです。
チノちゃんの誕生日が終わるまであと3時間というタイミングで急ぎで描く必要があった絵とはいえ、前の絵よりはだいぶマシになったのではないでしょうか。特に板タブに慣れたことで線画が安定し、上記の1.〜4.のアンチパターンも実践できていると思います。
Twitterでのlikes/RTs数も、キャラの誕生日絵・かつごちうさの二次創作ということを踏まえても、以前よりも多くいただけるようになりました(以前は同じごちうさの二次創作絵でも100likesを超えないことがほとんどでした)。本当にありがたい限りです。感謝の極みです。
しかし、この絵からも反省点はまだまだ見えてきます。キャラの下半身は描かれていないし、手の描き方もなんだかぎこちないです。シンプルさを求めているものの、影や衣類の立体感、光源の位置における説得力が足りていないのは致命的でしょう。そして、自分としては何より全体の曲線に悪い手癖が出てしまっているところがダメです。
ヘタクソでゴミのような絵から、現在の多少マシなゴミの絵の段階まで持ってこれたのは、曲がりなりにも暇を見つけては少しでも絵を描き続けていたからだと思います。
大きな目標としている 1. シンプルな線画で 2. 甘ったるくかわいい 絵 にはまだまだ遠いですが、絵を描き始めて2年になる2017年も絵を描き続け、さらに洗練された絵を描けて、あわよくば神絵師に近づけているといいな〜と思ってます。
これからもよろしくお願いします。
最後にもう一度
この記事は絵の描き方の指南や手順・アドバイスではないし、ただの自分の体験談ですので、この記事の内容は話半分ということにしてください。