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国際学力テスト 基礎になる豊かな言葉

 学校教育の転換期に有用な警鐘の一つと受け止めたい。

     経済協力開発機構(OECD)の2015年の学習到達度調査(PISA)で、日本の「読解力」が前回4位から8位に落ちた。

     一方、他の2分野、「科学的応用力」は4位から2位へ、「数学的応用力」は7位から5位へ上昇した。

     テストは3年ごとに無作為抽出の15歳を対象に3分野で行われる。暗記知識ではなく、応用的な力を見る。今回は72カ国・地域が参加した。

     PISAと日本の教育政策には因縁がある。03年調査で読解力が14位と急落、「ゆとり教育」が原因と批判され、課程の見直し、全国学力テスト復活につながった。「PISAショック」である。

     文部科学省は、2分野の上昇は授業時間増加など「脱ゆとり」課程の成果とする。読解力の成績低落については「今回導入されたコンピューター利用の出題・解答方式に不慣れなのが一因」と推論するとともに、まとまった長文を読み解き、自分の言葉で表現する力や語彙(ごい)の不足もあるのではないかとみる。

     それは専門家や学校教育現場からも指摘されるところだ。

     背景には、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などによる頻繁な短文のやりとりに慣れたり、情報を専らネットに頼ったりしていることがある。文章を書いて考えを表現し、読んで理解することが不得手になりがちだ。

     近年、学校教育は「言語活動」に力を入れ、グループ討議などをするが、話を双方向で交わし進展させるのは必ずしも容易ではない。

     20年度から順次実施される小、中、高校の次期学習指導要領の策定が今大詰めを迎えている。

     基礎的な学力の上で、主体的に課題を見つけて探究し、協働して解決を図る。「正解」は一つではなかったり、存在しなかったりする。重視するのはその過程で育む思考力、判断力--という次期要領の理念は「アクティブ・ラーニング」と呼ばれるが、これはPISAの出題理念と重なり合うところがある。

     今回PISAは日本の読解力に課題があることを示した。語彙の不足に対し多様で豊かな言葉を身につけるという課題を示したともいえる。

     工夫された読書計画や実りあるディベートなど、先進校の取り組みや研修の成果を共有したい。

     また今回科学に重点を置いたPISAの質問調査では、日本の学習意欲が全体平均に比べて低く、成績の割には楽しんだり、関心を深めたりしていない。気になるところだ。

     これも創造的な観察・実験授業など、改善工夫例を生かしたい。

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