それによれば、まず最初に嫌いなのが肉、というか肉食。スミスの代表曲のひとつ"ミート・イズ・マーダー"もまさに肉食を糾弾した曲だし、昨年のコーチェラ・フェスティヴァルでもモリッシーは出演していたステージで肉の匂いが会場から漂ってきたため、途中でステージを放棄してしまうというアクシデントもあった。この時、モリッシーは「肉が焼かれている匂いがするけど、人肉であることを願うよ」と言い捨てたとされている。また、昨年のオランダのフェスではモリッシーが出演する日には肉類は会場では売らないという措置も取られたほどだ。
2番目は元ザ・スミスのマイク・ジョイス。というのも、スミス時代の印税の配分がおかしいとしてマイクはモリッシーとジョニー・マーを相手に89年に告訴したという経緯があったから。結局、この係争はモリッシーとジョニーが100万ポンド(和解時のレートで約1億8千万円)をマイクに支払うという形で示談で落ち着くことになったが、モリッシーはこの裁判のことを深く根に持っているともいわれている。また、モリッシーはマイクとアンディ・ルークのスミスでの役割を「芝刈り機の部品のように交換可能なセッション・ミュージシャン」と同等だと語ったとされていて、この発言が逆にマイク側の弁護人に引用されることにもなった。
3番目はカナダ。なぜというと、アザラシ狩りが行われているからで、2006年に『リングリーダー・オブ・ザ・トーメンターズ』をリリースした際にはカナダへのツアーもボイコットしている。肉食と同様、モリッシーのこうした主張は動物愛護の観点から行われている。
4番目はジャーナリストで、1991年のシングル"キル・アンクル"のB面曲となった"Journalists Who Lie"でモリッシーは次のように歌っている。「彼らは自分の名前を語ろうとしているだけ/おぞましい嘘を広めることで/自分たちの名前を有名にしてくれたその人たちについての嘘を/さあ、刺してくれ/刺してくれよ」。
5番目は元10000マニアックスのナタリー・マーチャント。10000マニアックスは1993年のEPで"エヴリデイ・イズ・ライク・サンデイ"のカヴァーを収録し、モリッシーはこれをひどく嫌ったとか。その返答ソングがシングル"ボクサーズ"のB面曲となった"ハヴ・ア・ゴー・マーチャント"で「きみの腕のなかに眠る女の子赤ちゃんは/この世の中へのきみの唯一の大きな貢献」「少女はお父さんから嫌われたことをはっきり知ったことでしょう」などと歌っている。
6番目は『NME』。スピナーは『NME』はモリッシーにとってジャーナリストとは一線を画する存在で、数十年にわたって愛憎関係を繰り広げてきたと解説。なお、モリッシーは『NME』を相手取って2007年に掲載された記事をめぐって自分が人種差別的に見えるように意図的にインタヴューを捏造されたと訴えを起こしていたが、6月にNMEが謝罪記事を掲載し、その後和解に至っている。
7番目はイギリス王室。かねてから王室批判を繰り返しているモリッシーはエリザベス女王即位60周年記念の祝賀期間にも王室は「この惑星に棲む人間で最も過剰に報酬を与えられ最も無意味な存在」だと発言している。また、ウィリアム王子とケイト・ミドルトンの結婚についてはロイヤル・ウェディングを「ロイヤル・ドレディング(王室のおぞましい行事)」と揶揄し、次のように語っていた。「ロイヤル・ドレディングの週の間、ポリー・スタイリンがこの世を去りました。イギリスのアートとサウンドに、それもたくさんの人たちが彼女のような表現を求めていたまさにそんな時期に計り知れない貢献を果たしたというにもかかわらず、ポリー・スタイリンの死はイギリスのテレビのニュース・メディアからは完全に黙殺され、その代わりに、ケイト・ミドルトンという個人的なところではなにも知られていない人物をほめそやし涙ながらに訴える内容の報道が何時間も何時間も垂れ流されました。ここで言わんとしているところは明らかです。つまり、人が人生のなかで達成することは、人が生まれ落ちた地位や境遇に較べればまったく意味がないということです。ここはシリアか?」
8番目は誕生日。モリッシーが誕生日そのものが嫌いなのかどうかはわからないが、スピナーはザ・スミスの1987年の『ストレンジウェイズ・ヒア・ウィー・カム』の"アンハッピー・バースデイ"の歌詞を引き合いに出している。「きみの不幸せな誕生日を願いたい/きみの不幸せな誕生日を願いたい/きみは悪そのものだから/きみは嘘つきだから/きみが死んでも/悲しいのはちょっとだけ(でも泣かないよ)」。
9番目は弁護士。これはモリッシーの『マルアジャスティッド』中の"ソロウ・ウィル・カム・イン・ジ・エンド"の歌詞から。「ローヤーズ(弁護士)……ライヤーズ(嘘つき)/ローヤーズ(弁護士)……ライヤーズ(嘘つき)」。
10番目は成功した友人で、これはまさにまんまな楽曲が存在するからで、それが1992年の『ユア・アーセナル』の"ウィ・ヘイト・イット・ホエン・アワ・フレンズ・ビカム・サクセスフル(友達が成功するとぼくたちは本当に腹が立つ)"だ。
11番目はケイティ・ペリーとラッセル・ブランドの結婚。もう離婚してしまったふたりだが、実はモリッシーはふたりが婚約した時にしきりに思いとどまるように説得したことでも知られていて、ケイティはモリッシーと初めてお茶をしながら会った時に次のように促されたという。「モリッシーはラッセルの友達で素晴らしい人なんだけど、結婚についてはなかなか困ったことになっちゃって。嘆いたり、ため息をついたりして『左手の第3指、それはやめておきなされ』などと言ってて、すごくきれいな言葉で詩的だから、あの人の歌詞みたいだったの」。さらにモリッシーを式に参列させるのはあまりいい思いつきではないかもしれないともケイティはこう語っていた。「式に来てくれたら本当に嬉しいと思うんだけど、でも『歩く悲しみおじさんみたいになって式をまぜっかえすようなことはしないでね』とは断ってはあるの」。
12番目は犬。動物愛護に燃えるモリッシーだが、昨年ホップ・ファーム・フェスティヴァルの会場で犬に襲われ、人差し指の第1関節部分に亀裂骨折を負ったので、嫌いになったのではないかというスピナーの談。
13番目はジェット・コースター。ザ・スミス時代にモリッシーはビリー・ブラッグとカナダの遊園地でファンから追い回されながらもいろんな乗り物に乗って楽しんだというが、ジェット・コースターに乗った時には気持ち悪くなってもどしてしまったとか。以来、ビリーは好んでこの話を人に解説するのだという。
14番目はダミアン・ハースト。ハーストはイギリスの現代美術界を代表するアーティストと言われ、ガラスケースの中に4メートルもある巨大なサメをホルムアルデヒドのなかに保存したり、牝牛と仔牛を切断したものをホルムアルデヒド中に保存したりした作品などで有名。当然、動物愛護を訴えるモリッシーの敵に当たるわけだが、『バム!』誌で次のようにも語っている。「ぼくはアートにおける動物の利用され方には納得がいかないね。たとえば、ダミアン・ハーストとか。ダミアン・ハーストの首が彼もやっているように袋詰めにされて死んだ動物として売り買いされたらどう思う?」
15番目はレコード会社。これまでモリッシーはHMV、パーラフォン、サイアー、RCA、リプリーズ、マーキュリー、アタック、サンクチュアリー、デッカ、ロスト・ハイウェイ、メイジャー・マイナーなどのレーベルを渡り歩いてきて、昨年から新作は出来上がっているのにレーベルとの契約ができない状態が続いている。こうした心境をモリッシーは次のようにピッチフォークにも語っていた。「レーベルというのはもうたいがいは新しい才能と契約したがっていて、それはそうすればその新人アーティストのすべてについて自分たちが面倒をみたというふうに見られるからなんだよ。もはや音楽でリスクを試みられることはないんだね。社会的な意見を発する曲もない。個性もない。これはみんながそれぞれすぐにでも交換の効く部品だとレコード会社に思われているからなんだよ」。
最後は雨。なぜかというと、昨年スウェーデンで開催される予定だった屋外ライヴを雨天のためモリッシーが中止にしたからだとスピナーは指摘している。
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