佐藤陽
2016年12月8日16時35分
■老いの現場を歩く:1(マンスリーコラム)
みなさん、「2025年問題」って、聞いたことありますか?
「2020年東京五輪なら知っているけど、2025年問題はわからない……」という方が多いかもしれない。
一言で言うと、約650万人いる団塊世代(1947年~49年生まれ)がすべて75歳以上になり、医療・介護の提供が追いつかなくなる問題のことだ。遠い未来のように感じるかもしれないが、今から9年後に迫った喫緊の課題といえる。
私は、朝日新聞横浜総局で記者をしていた時、この状況に危機感をもち、同僚と特別取材班を組んで、13年11月から16年4月まで、神奈川版の紙面で「迫る2025ショック」というタイトルで記事を連載した。
患者宅を訪問して診療・ケアにあたる医師や看護師、介護職員などに何度も同行取材しながら、日本社会で起きている老後の現実問題、2025年以降に起きてくる問題、それらに対する先進的な取り組みを約160本の記事にまとめた。読者から多くの反響を受け、今年6月に連載を再構成し「日本で老いて死ぬということ」(朝日新聞出版)として出版した。
2025年問題について数字を挙げて説明しよう。
○全国で、後期高齢者と呼ばれる75歳以上の高齢者は、2025年までに10年と比べて約760万人増え、2179万人になる。全人口に占める割合は、11%から18%に。
○65歳以上の認知症高齢者は、280万人から470万人に。
○一人暮らしの高齢世帯は、498万世帯から700万世帯に増える。
○高齢者の増加分の約半数は、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、愛知といった大都市部の6都府県に集中している。
■119番通報、でもベッドに空きがない
それでは、具体的にどんなことが起きるのか。わかりやすく架空のストーリーで説明すると……。
2025年のある晩。東京都内…
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朝日新聞社会部