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「朝、目が覚めるとなぜか泣いている」理由は? 『君の名は。』の謎をぶった斬る

「朝、目が覚めるとなぜか泣いている」理由は? 『君の名は。』の謎をぶった斬る

ニコニコ生放送の人気番組「山田玲司のヤングサンデー」。今回は10月12日放送の“ニコ論壇時評”「君の名は。が好きな人はバカなのか? 問題と糸守町に墜ちたものの正体とは?」の内容を書き起こしでお届けします。映画『君の名は。』の大ヒットの理由と残された数々の謎に、山田玲司氏が独自の視点で切り込みます。

シリーズ
山田玲司のヤングサンデー > 「君の名は。が好きな人はバカなのか?問題と糸守町に墜ちたものの正体とは?」ニコ論壇時評
2016年10月12日のログ
スピーカー
漫画家 山田玲司 氏
乙君 氏
しみちゃん 氏
参照動画
「君の名は。が好きな人はバカなのか?問題と糸守町に墜ちたものの正体とは?」ニコ論壇時評10月12日号

「震災前に戻りたい」素直な気持ち

乙君氏(以下、乙君) そして?(笑)。 山田玲司氏(以下、山田) あと「運命の人に出会える」ってことと、もう1個、最大なのは、やっぱり、みんな思ってる、誰もが思ってる、「震災前に戻りたい」っていう気持ちを正直にぶつけた、というね。
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乙君&しみちゃん氏(以下、しみちゃん) あー。 山田 みんなが体験した、あれ以前とあれ以後ってことを、しっかりと避けずにぶつけたってことが、やっぱりそのときの気分。あの後、いろんなことがはっきりしちゃうんだよ。みんな、夢から覚めちゃった。 だから、なんとなく、「このまま、80年代以降の幸せが続いていくんじゃないか」って思っていたら、あそこでバーンって1発カタストロフが来ちゃって、目が覚める。やらなきゃいけない。処理しなくちゃいけなくなっちゃう。いろんなものを解決しなきゃいけない。 モヤモヤしてる状態は終わらせて、はっきりさせなきゃいけないから、『(マッド・)マックス』が、「希望を持つな」と。 乙君 なるほどね。 山田 ってことになるわけだ。それで、(『アナ雪』の)「寒くてもへっちゃらよ」って、そういうタフな方向に行こうとしたんだけど、「やっぱりあの頃がいい」って戻しちゃうわけよ。 乙君 あー。 山田 そうすると、そういうふうに「がんばろう」って思ってたんだけど、「やっぱりあの頃がよかった……」っていう泣きが入るわけだよ。 乙君 あー! そっかそっか。 山田 だからもう、これは仕方ないよな、と。俺なんかだと、「いやいや、先に行こうよ」「あの頃のままだったらまずいよ」って思う。 乙君 うん。 山田 多くの人が思ったはず。そういう人にとっては、「逆効果だ。モヤモヤするわ」って思ったのも、すごくよくわかる。 乙君 なるほどね。 山田 うん。 乙君 なるほど。わかった。

神話を信じる「ムーの一族」

山田 それで、そうなってくると、最終的にこの映画がどこに着地するかというと、もう一方的に、赤い糸神話、「誰か運命の人に必ず会うことができる。運命の人はいるんだ。そして、会うことは可能なんだ」って。もうほぼ、「ネッシーはいるんだ」みたいな。 (一同笑) 山田 「UFOはいるんだ」「MJ-12は本当なんだ」みたいなレベルで、運命を信じる人たちで。これが、いわゆる勅使河原くんが持っていたのはなんですか? 『ムー』ですね。 乙君 あー、そうだ。 山田 あいつは『ムー』を読んでるから、あんなわけのわからないことに乗ってくれるわけじゃん。 乙君 そうですね。 山田 あれを、いわゆる「ムーの一族」って言うんですよ。 しみちゃん (笑)。 乙君 「ポー」じゃなくって?(笑)。 山田 はい。 (一同笑) 乙君 「ポー」じゃなくて、「ムーの一族」。 山田 樹木希林さんの『ムーの一族』。つまり、これは「あ、そうか」と。僕が大好きな『ブック・オブ・モルモン』に近いっていうか。 yamadareiji161012_15 (一同笑) 山田 まあ、モルモンの方は「I Believe」ですから。 しみちゃん はい(笑)。

泣きながら目覚めた理由は?

山田 「I Believe」ですから。信じる人のことを言ってるわけで、「信じるんだよ」っていう。だけど、泣きながら目が覚めるんですよ。奥野さん、これがなぜか考えました? 乙君 はい。 山田 信じてるのに、泣きながら目覚めるのはなぜかというと、現れないんですよ(笑)。 yamadareiji161012_16 山田 現れないからですよ、本当は(笑)。 乙君 ムンクが(笑)。 山田 現れてないんですよ。ほとんどの場合は、信じてるのに現れない、という。それは、目覚めて、朝、泣きます。 乙君 そうだったのか! 山田 そうですよ。そこからのスタートで、会えましたってところまでいくから、みんな、「あー、よかった」って。 乙君 夢がかなわないってことを、無意識に浄化作用として涙が流れて起きてる、ってところから、夢がかなうまでが。 山田 そうです。 乙君 の落差なんですね。……落差というか、まあ。 山田 何回も何回も観れば、何回も何回も「うん、会える」「うん、会える」って思って帰ってこれるから、これを10回観たら、もう10回分、「I Believe」になれますから(笑)。 しみちゃん (笑)。 山田 よく言うじゃないですか、女の人が「これだけ待ったんだから、絶対いい人が出てくるはずだよ」みたいなことを(笑)。 乙君 あるある。「生きてりゃいいことあるよ」みたいな意味でね。 山田 いや、違う。「これだけ待った以上、そのへんの男じゃ満足できない」とか言い出す人がいるじゃない(笑)。 乙君 どんどん、あれが高くなっていく、っていうの。 山田 そういうことが起こりがちじゃないですか。男もそうだよ。 乙君 そうですね。 山田 いいおっさんになって、まだ「20代前半の……」とか言って、ふざけんなよ、バカヤロー(笑)。そういうことって、起こりがちじゃないですか。そうなると、そりゃ泣きますよ、朝目覚めて(笑)。そんなことを信じてるのに。 乙君 じゃあ、もう、ほとんどの人が実は朝泣いてますよ。泣いてることすら、忘れてるのかもしれない。 しみちゃん (笑)。

田舎ヤンキーの恋愛は手近なところで?

山田 基本的に、赤い糸信者さんというのは、今、限りない一人旅の途中にいるんです(笑)。 乙君 それでーー! 山田 だから、朝目覚めてなぜか涙が出てた、みたいなところで、もう、反射的に泣いちゃうんだよ。「私だ」みたいな。そりゃ、しょうがないでしょ。泣いてもしょうがないです。泣いていいんです。泣きましょう(笑)。 乙君 あー。 山田 そうなんですよ。ただ、これ、ちょっと気になるのが勅使河原くん。 しみちゃん うん。 山田 ちゃんとね、付き合ってました。 しみちゃん はい。 乙君 あの子と? 山田 東京来てました。 しみちゃん そうですね。 山田 田舎には、赤い糸がある、みたいな言い方なんですよ。なにそれ、ヤンキーはすぐ結婚する、みたいな感じですか? 田舎のヤンキーは。 (一同笑) 乙君 そんなこと、俺に言われても。 山田 マコト・シンカイ、そういうことですか? それは、手近ですましちゃいます、みたいなことですか? 乙君 まあ……。 山田 これ、ちょっと違うんじゃないですか? 乙君 でも、あの女の子が、たぶん積極的だったんじゃないんですか? 山田 でも、いい子です。勅使河原くんもすごくいい子です。 乙君 うんうん。

糸守町とはなにか?

山田 それで、ちょっといろいろ考えたんですけど。これ、糸守町。糸を守る。赤い糸伝説を守っている町。そこで、組紐やってる。そして、時空のねじれ、みたいなことを、そこで引っかけて表現している。糸守町とはなにか? しみちゃん はい。 山田 これはやっぱり、ジブリと、かつての旧ディズニーですね。そして、かつての少女漫画じゃないかな。だから、「私なんか……」って言ってる女の子が、「遅刻しちゃう!」って言って、たまたまぶつかったイケメンが、「あんな奴、ムカつく!」って言ってたのに、必ずくっつくっていう。 乙君 あー。 山田 必ず保証された出会い、と。女の子は空からゆっくり降りてくるんです。必ず、僕のもとへ(笑)。 (一同笑) 山田 降りてきますから。 しみちゃん はい。 山田 「それが、俺たちが信じてた世界じゃねーか」と。そこに、いわゆる隕石が落っこちて、終わりにしちゃおうとするわけです。エルサ登場ですよ。 「そんなん嫌だ。あそこに住んでた人たち、どうするの? 滅びゆくジブリ、旧ディズニーをどうするの? そこに住んでいた架空のキャラクターたちをどうするの? 助けなきゃいけないでしょ。やっぱり助けましょう」っていう話。 それで、そこで助けて、「やっぱりあのままがいいんだよ」「信じたいんだよ」って。これにツッコミ入れてたら、あのへんから楽しめるわけがねー、って。(笑)。 乙君 そうそう。いや、それは本当にそう。 山田 ツッコむ人は見るな、っていう(笑)。 (一同笑) 山田 だから、それは「そうだよな」って思いながら、「ダメじゃないかな」って思うんですけどね。 乙君 うんうん。

宇宙系男子はオムツが買えない!?

山田 ただ、まだ問題があるんですよ、この作品。 乙君 まだあんの?(笑)。 山田 あれを作った男たちって、どういう男たちなのかなというのと、三葉は本当に幸せになれるのか問題を、ちょっと考えたほうがいいんですよ。 乙君 どういうこと? 山田 だって……。 乙君 三葉は幸せに……。 山田 三葉は出会った後にも、人生があるわけじゃないですか。 乙君 そうそう。 山田 「会えたね」の後の話ですよ。やっぱり、そこにも想像をめぐらさなきゃダメじゃないですか。 乙君 ダメなんですか? 山田 うん、クリエイティブ・チルドレンとしては。 乙君 はいはい。その後ね。 山田 あれを作ったのは、いわゆる宇宙系男子じゃないですか。 乙君 ……うん。 山田 宇宙の人たちじゃないですか、マコト・シンカイは。 乙君 そう……なんですかね。 山田 古くは、レイジ・マツモト……松本零士先生とか、石ノ森章太郎先生とか、ホリエモンとか、イーロン・マスクとか。 乙君 はいはい。 山田 これを男のロマンと言う、少年とも言うわけだよ。それで、その視点から作ってる映画だから、生活はできないんじゃないかな、って(笑)。あの人たち、たぶん、オムツとか買えないと思うんだよね(笑)。 イーロン・マスクとか、ホリエモンとかが、オムツ買えないんじゃない。「俺、行くから」って、たぶん行っちゃうじゃないかな、って思って。 乙君 ほうー。 山田 「俺、建築の下見に行くから」とか言って、三葉は1人で子育てする感じになるんじゃないかな、みたいな(笑)。 乙君 そんな現実なの? 待ってるのは。

  

※続きは近日公開

山田玲司のヤングサンデーyamadreiji

漫画家・山田玲司が多彩な経験と圧倒的な知識を元に「テレビでは語られない角度」で恋愛、社会問題、漫画、映画、音楽、人生とは何か? などさまざまな問題を斬っていきます。

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