先日、千葉県のあるゴルフ場の支配人と話す機会があった。そのコースは、カート道路を使ったセルフカート方式を導入しているそうで、キャディー確保に苦労することもなく、その分、料金も安く設定しているので、メンバーからの評判も悪くない。
近年、このタイプが増えているようで、このコースはさらに楽しんでもらおうと、晴天で足元がしっかりした日に限って、乗用カートのフェアウエー内走行を許可しているという。いよいよ日本も米国のラウンドスタイルに近づいてきたということだろう。
■グリーン上にタイヤの跡が…
ところがある日、グリーンキーパーが顔色を変えて飛んできた。聞くと、グリーン上に乗用カートが横切ったと思われるタイヤの跡があるという。
バンカーショットをしたら、後から来る人のために丁寧に砂をならすのがマナー
カートに乗ったままグリーンに近づかないよう、グリーン手前約50ヤードの地点に、カート道に誘導する案内板を設置しているが、これを無視してグリーンエッジまで行ってしまう不届き者もいる。しかし、そのままグリーン上を横切って次のホールに行ったというとんでもないケースに、支配人はため息をつく。
「まさか、そこまでやる人がいるとは……。よかれと思ってやりましたが、考え直さなきゃいけないんですかねえ」
信じがたい話だが、これが現実かもしれない。こうなると、ディボット跡は埋土しなさい、グリーン上のピッチマークは自分で直しなさいといったどころではない。「カネを払っている」のをいいことに、「何でもあり」の状態である。ちなみに、殺し文句のようなこのひと言だが、プレーフィーはみんな払っている。
かつては、初めてコースに出る前に、先輩ゴルファーから基本マナーをたたき込まれたものだ。いわく、
「ショットをしたら、クラブを2、3本持ってボールのところまで急げ」
「今から打つ人の前に出るな。その視界に入るな」
「大声を出すな。叫ぶのは“フォアー”のときだけ」
「速く歩け。足を引きずるな」
「バンカーショットの後は砂をならせ」
しかし、これらはもはや“死語”になりつつあるのか……。
若い人たちもゴルフを楽しむようになったのはいいことだ。だからといって、マナーがなおざりにされていいはずはない。