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【スポーツ】

[ラグビー]仏トゥーロンで奮闘中の五郎丸を直撃 一流選手と濃密な時間

2016年12月7日 紙面から

試合中の表情は日本時代と変わらないように見えた【切り込み】試合前の円陣でコーチの指示を聞く五郎丸=フランス・トゥーロンで

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 「充実しています」−。昨年のラグビーワールドカップ(W杯)での大活躍で日本中にラグビーブームを巻き起こした五郎丸歩(30)。今もテレビCMで姿を見ない日はないほどの人気だが、トップリーグのヤマハ発動機を退団、スーパーラグビーのレッズ(オーストラリア)を経てフランスのトゥーロン移籍後は、なかなか肉声を聞けない。その五郎丸が、フランスリーグ初先発フル出場を果たした11月13日のパリ戦後、単独インタビューに応じた。日本代表で世界を驚かせ、今度は言葉も通じないフランスに乗り込み、個人として世界に挑戦する五郎丸の貴重な肉声をお届けする。 (取材・構成=大友信彦)

 −フランス初先発のパリ戦は80分フル出場。9月上旬に渡仏してから約2カ月。どんな時間だった

 五郎丸「ネガティブな感覚になることはなかったです。むしろ充実していた。試合のジャージーを着たいという思いでひとつひとつ積み重ねていたし、焦りはまったくなかった」

 −出られない間は、どういうことに重点的に取り組んできたか

 「普段と変わらないです。全体練習が終わってから、コーチとエキストラでパスやキックの練習をしたり。もちろん、試合に出たいし、自分の武器であるキックを前面に出していくトレーニングもしていました。ここでは全体練習の時間が少ないんです。シーズンが長いし、選手一人一人が成熟しているので、自分のことは自分で高める。みんな、自分でエキストラメニューに取り組んでいます」

 −改めて、フランスに来た決断の理由を

 「世界有数のトップチームから誘われたのは光栄なことですからね。断る理由はなかった。家族も一緒に行けるし、失うものはないと思いました」

 −レッズ時代より体が一回り大きくなったのでは

 「そんなことないですよ(笑)。体重もあまり変わってないと思う。ただ、リハビリをしっかりやって、体をケアできたのは良かった」

 −メンタル面もリフレッシュできた

 「レッズに行ったときはW杯からトップリーグとずっと休みなしで、内から湧き上がってくるものがなかった気がする。5月にけがをしてからは、4カ月以上もラグビーをできなかった。こんなにラグビーから離れたのは中学生以来かもしれない。大学2年であごを骨折したときも、3週間くらいで試合に復帰しましたからね。完全にスイッチオフできる時間があったのは良かった」

 −トゥーロンというチームの印象は

 「世界中のスター選手が集まっていますから。ラグビー選手としてだけでなく、人間的に成熟した人がたくさんいて、勉強になることが多い。周りの人が何か困っていそうなときに、スッと自然に話し掛けたり、サポートしたり。ファンへの応対も含めて、一流選手はどこをとっても一流ですね。この選手の中で過ごす時間は、練習だけでもものすごい経験になる」

 −トップ選手と一緒に練習して学ぶことは

 「基本の大切さですね。FBにはウェールズ代表のハーフペニーもいますが、特別なことをするわけじゃなく、当たり前のことを当たり前にこなしていく。僕も身体能力が高いわけじゃないし、いい見本になります」

 −トゥーロンでの生活は

 「生活しやすいですよ。英語も通じないけれど、それがかえって新鮮(笑)。アジア人はほとんどいないから目立つし、町中でも声をかけられるけど、家族と一緒のときはそっとしていてくれる。ファンも成熟していると感じます」

 −レッズ入団発表のときは「失敗したい」と言っていました

 「失敗しないと成功もない。というか、僕は(海外に)出た時点で成功だと思っている。うまく行かないことがあっても失望はないですね。日本の人は『レギュラーでなきゃ…』『キッカーでなきゃ…』と思うだろうけれど、日本では経験できないことをたくさん味わえている。幸せです」

 −今後の目標を

 「いや、何もイメージしてないです。目の前のことをしっかりやっていくだけ。19年W杯のことも何も見えていない。今は日本ラグビーを背負わずに、自分のことに集中しています。個人として世界で戦えるなんて、誰でも経験できることではないし、チャンスがあるならやるだけ。年齢的にもラストチャンスと思ってここへ来たわけですから。

 それに、ここでは想像もつかないことがいっぱい起こる。試合への移動手段にしても、いきなり飛行機をチャーターしたり、市内のバス移動を白バイが先導したり…。そういうのにいちいち驚いていたらやってられない。考えすぎても意味がない。だから、目の前のことを全力でやるだけなんです」

 −期待しています

<五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)> 1986(昭和61)年3月1日生まれ、福岡市出身の30歳。185センチ、99キロ。3歳でラグビーを始め、佐賀工−早大−ヤマハ発動機。早大2年時の19歳で日本代表入り。2015年W杯では副将として全4試合にフル出場。日本代表キャップ57。通算得点711は日本歴代最多。

 16年はスーパーラグビー・豪州レッズでプレー後、フランスTOP14のトゥーロンに移籍。11月6日のリヨン戦でリザーブから仏デビュー。同13日のパリ戦で初先発。ポジションはFB。

 

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