シリア政府軍が掌握したアレッポ東部ハナノ地区に戻ってきたシリア人一家=2016年12月4日、AP
【カイロ秋山信一】内戦下のシリア北部アレッポで、アサド政権側が11月から攻勢を強め、反体制派支配地域は約3週間で3分の1程度に縮小した。政権側には、反体制派を支援する米国で来年1月にトランプ政権が発足する前に決着をつけたい思惑があるとみられる。一方、反体制派支配地域は政府軍やロシア軍による空爆や包囲戦術で疲弊し、住民は食料や医薬品の窮乏に直面している。
アレッポでは内戦初期の2012年夏以降、政権と反体制派が街を二分し、勢力が均衡していた。だがロシアやイランの支援を受ける政権側が徐々に圧力を強化。今年9月には反体制派支配地域を包囲し、主要補給路を断った。
さらに11月15日から空爆と地上攻勢を連動させ、反体制派の防御線を突破した。今月7日には中心部の旧市街も制圧。政権側の当局者はロイター通信に「ロシアはトランプ米政権発足前に作戦を終わらせたがっている」と話した。反体制派も政権側支配地域にロケット弾を撃ち込むなど戦闘は激化。在英の民間組織「シリア人権観測所」によると、11月15日以降にアレッポで民間人464人を含む約790人が死亡した。
アレッポ南東部に追い込まれた反体制派支配地域には推定20万人の住民が残っており、食料や医薬品が底を突きかけている。
「輸血用の血液がなく、昨日も6人が輸血できずに死んだ。重傷者も約500人いる」。反体制派の記者、ムハンマド・シャケルディさん(26)は7日、毎日新聞の電話取材に証言した。近くで空爆があったようで、電話口から爆音が響いた。ボランティアの救急隊員、イブラヒム・ハッジさん(26)は「薬がなく、墓地もいっぱいになった。死者を葬る場所さえ作れない」と訴えた。
政権側は9月以降、反体制派の戦闘員には投降、住民には自主的な退避を求めてきた。11月の戦闘激化後、数万人が政権や少数民族クルド人勢力の支配地域に避難した。だが、政権側が反体制派を「テロリスト」と位置付けているため、「テロリストの協力者」とレッテルを貼られて拘束、拷問されることを恐れ、反体制派支配地域にとどまる住民も多い。