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マスター:久遠 由純
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:0人
リプレイ完成日時:2016/12/02


みんなの思い出

1
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オープニング

※このシナリオは【KOB】連動シナリオです。
 優秀な成績をおさめたキャラクターには「メダル」が配付され、
 その数が多いキャラクターには、オリジナルの魔具が与えられるチャンスが与えられます。
 詳しいルールについては【KOB】特設ページをご確認ください。


●みんな集まれ!
 ゴールの取り払われたサッカーコートの前で、お笑い芸人を目指す高等部2年の滝田雅斗と山本仁が、寄って来た生徒達を前に競技内容の説明をしていた。
 いつもは『ときめき40(フォーティ)』というコンビ名でコント動画を撮ってネットに上げたり、ストリートライブなどを行ったりしているが、今日は違う。

 今日は学園挙げての祭典、【KOB】に協力しているのだ!

「この種目は『鬼ごっこ』や! 俺が鬼役で」
 滝田が自分を指差し、
「俺は審判をする」
 山本が軽く手を挙げる。
「参加者にはこのサッカーコートの中を逃げ回ってもらう訳やが、見て分かるように、四隅にボックスがあるやろ?」
 滝田が指さす先には、確かに、中が見えないようにか木で出来た簡易の電話ボックスのような物が、コートの四隅に設置されていた。
 山本が説明を引き継ぎ続ける。
「参加時間は二時間。その間に、鬼役の滝田が四つのボックスのどれかから現れて30秒くらい参加者を追いかける。30秒くらいっていうのは、まあ誰か一人が捕まるまでって目安だけど。で、計五回鬼が現れるんだけど、時間は決まってない」
「つまり、さっき現れたと思ったらすぐまた現れるかもしれんし、何十分も待たされたりするかもっちゅー緊張感があるわけやな」
 滝田がニヤニヤして言ってから、
「かと言って、待ってる間にボックスに張り付いて見張ったり中開けてみたりとかすんのはナシやで! あんまりひどいと反則と見なすからな。スポーツマンシップに則って、常識の範囲内で頼むわ。俺の動きを見ててもダメやぞ。ボックスへの移動は、スキル『蜃気楼』で姿消してくからな。ま、皆はそんなセコイことせーへんと信じてるで!」
 真面目な顔で付け足す。
「そんで、捕まったら罰ゲームや! 肉体的ダメージってよりも、精神的にイラッとくるようなモンで叩かれるで。それが何かは俺が出て来るまで分からん。出て来てのお楽しみや。その方がスリルあるやろ?」
 『精神的にイラッとするもの』とはなんだろうか、と皆の顔が少し不安気になるのを、滝田は楽しそうに見渡した。
「反則には気をつけてくれ。さっき滝田が言ったボックスの過剰な見張りとかに加えて、あとはコートから出ないこと。飛ぶのもなし。武器の使用、スキルの使用も禁止。鬼への妨害も反則だ。だけど、他の参加者への妨害はアリ。だから、普通に脚力や瞬発力の他に、そういった方向の能力や作戦も重要になるかもな! そこは各自で予想して行動の作戦を立てて欲しい」
 山本が取りあえず説明を終える。
「鬼が参加者に攻撃とかしてくることはないのか?」
 一人の生徒が手を挙げながら質問した。
「それはない。捕まえたヤツにだけ罰ゲームする。鬼は純粋に己の力で走って追いかけるだけや!」
「ちゃんと見てるからな〜、反則するなよ〜!」
 鬼役の滝田が答え審判役の山本が念を押すと、皆はざわざわと周囲の友人らと相談し始めた。

「ほなら参加する人はこっち集まってくれや〜!」

 滝田の声が響き渡った。


プレイング

パンダヶ原学園長・下妻笹緒(ja0544)
大学部2年3組 男 
鬼ごっこに参加。

ラブリーパンダちゃんたるこの私を捕まえたくなる気持ちはよく分かる。
痛いほど分かる。
であればこそ、待機位置は常に競技場の中心である【五】としよう。
パンダを見にきたが、微妙な位置にいてその姿を十分に見ることができない。
たとえ相手が鬼と呼ばれる存在であったとしても、そんな悲しい思いをさせるわけにはいかない。
だがしかし。かと言って易々と捕まるわけにいかないのもまた非情なる現実。
パンダはあくまで眺めて癒されるものであり、お触りは厳禁なのだ。

待機時は周囲の様子を観察しつつも、おやつを食べたりでんぐりがえしをしたりパンダダンスを踊ったり。
寒くなってきた時期でもあり、黙って突っ立っているのは愚策。
長期戦に備え栄養補給を行い、ウォームアップを兼ね軽く身体を動かしておくことで
いつ鬼が出ても良いよう備えたいところ。

逃げる際は普通に走って逃げるが、他の参加者に対し仕掛けることはしない。
ジャイアントパンダは心優しき動物ゆえ、喧嘩はしないのだ。
ただ鬼に対し「あっちを狙ってね★」とキュートなポーズで他参加者への指差しくらいはやるだろう。
パンダは優しき動物ではあるが、同時に小悪魔的な愛らしさも備えた存在だから仕方ないのだ。

捕まる可能性は私の計算上限りなくゼロに近いが…
万一捕まったら全身でくやしさを表現、両手足をじたばたさせようじゃないか。
逆に勝利をおさめた場合も、全身で喜びを表現。じたばたしよう。

歴戦勇士・龍崎海(ja0565)
大学部7年9組 男 
目的
依頼を楽しむ

動機
アルートアームの権利獲得の為
自分が強化した愛用の武器とどれだけ違うか興味がある

行動
「スキルの使用禁止とのことでパッシブも解除済みだよ」
「武器は使わなければ持っていてもいいってことだよね?」
服装は学園の男子ジャージ

配置は全部、五の場所
配置についたら、人数が多くいる場所とは反対方向のボックス二つを視界に入れる
「待っている間することないし、片方側だけなら過剰な見張りじゃないはず」
違反になるようなら、適度に上とか下とかみる

背後側から鬼が出ても間に他の参加者がいるから、反応が遅れても挽回可能なはず
「後ろに現れたか、囮に引っかかっている間に距離を取るぞ」

「正面からか、純粋な移動速度は遅い方だから他になすりつけるのは難しいか? なら鬼と相対して直前で触れるのを回避する方がましか?」
というのを最初は試し、有効なら次回以降も行う

場合によっては、「皆中央選択か、人のことを言えないが手堅いなぁ」

捕まったら、「罰ゲームかぁ。そういう使い方をしちゃいけないものだろっていうものじゃないといいな」

超絶回避・エイルズレトラ マステリオ(ja2224)
中等部3年1組 男 
特にネタや他人への過剰な妨害等は狙わず、他人の点数も調整しながら真っ当に勝ちに行く
自分が捕まらないことを最優先に、自分以外の参加者の得点の平均化を狙う

待機時は特に緊張しておくなどせず、長期戦に備えてリラックス
その際に1か〜4のボックスのどれかの方を向いておく
どこから鬼が現れても一定の時間が稼げるよう開始位置は常に五
音に注意し、周囲の物音や他の参加者の発言等を聞いておく
何らかの変化を察知した場合、自分が向いている方角のボックスに向かってダッシュ、
安全を確保しながら周囲の状況を確認する
自分が向いているボックスから鬼が出てきた場合のみ反転しダッシュ
自分が狙われていない時は鬼と他の参加者を観察、動きの傾向や癖、能力を分析
鬼の脚力や動きの機敏さが自分未満であるなら、鬼によく捕まる参加者が狙われている場合、
そばに寄ってわざと周囲でチョロチョロして鬼のヘイトをもらう行動を混ぜる
自分が鬼に追われている時は自分以外で高得点の参加者の方へ走って行き、
鬼のヘイトをなすりつけに行って自分以外の参加者の得点が平らになるよう調整を狙う
自分と同等以上の能力の参加者にはなすりつけは諦める
鬼が簡単に自分を狙ってくれないなら、深追いせず調整は諦める
鬼から逃げる際は追いつかれる前に反転し鬼の動きをよく見て、
鬼が自分を捕まえようとする瞬間に回避して切り返し、別の方角に逃げる
他の参加者を妨害する者がいればその人には近寄らない

天姫と未来を繋ぎし者たち・鳳 静矢(ja3856)
大学部4年8組 男 
魔法防御(ガッツ、集中力)・生命力(基礎体力)・移動力(脚力)・INI(瞬発力)が重要と予測

競技へは携帯品のくまの着ぐるみを改造した物を着込んだラッコ姿で参加
会話は白板を持ちそれに書く筆談(【】)で行う
【シズラッコ、鬼ごっこの大地に立つ!

また時々鳴き声(『』)を鳴らす
『キュゥ!

*行動*
位置は二と四を交互に
二の時は2と3
四の時は1と4の出現箱を注視して
どちらかから鬼が出てきた場合はなるべく素早く逃げられる様にする

鬼を待つ間は携帯品の比翼鳳凰扇片手に舞い踊り
待つ間もだれないように楽しむ
『キュゥキュゥー♪

鬼出現時は即座に逃走開始
他者の妨害はせず
出来るだけ他者とは別方向に逃げて
複数人が狙われない様にする
【やれそら逃げろー!

自分が狙われた場合は
鬼に追いつかれそうになければ普通に移動
追いつかれそうな場合は全力移動でとにかく逃げる
『キュゥー!?

基本は自分も勿論参加者がなるべく捕まらない事を目指す
【ウィンウィンがラッコのスポーツマンシップ!

もし自分が捕まった場合は
正座して甘んじて罰を受け入れる
【潔く罰ゲームを受ける…これがラッコ流!

自分が一位だった場合は歓喜の
一位以下でも他者をたたえる踊りをダンス使用で行う
『キュゥー!

また競技前から大鍋で豚汁を作っておき
競技後それを温めて持ってきて
コック服を着こんだラッコック姿で
参加者&滝田・山本の皆に振る舞い食べる
【競技が終われば鬼も逃走者もノーサイド!

ピーマンはフェンリルの餌・ミハイル・エッカート(jb0544)
大学部4年9組 男 
・準備
鬼役脅かし用アイテムを調達
ゴリラの着ぐるみ(無かったら頭だけの被り物)
○ンコの模造品

・服装
企業戦士の戦闘服
いつものダークスーツ

・初期位置
すべて五

・行動
待機中
ザッシィを読む

初期位置が同じ参加者達にノロケまくる
「俺の婚約者はまさに大和撫子だ。羨ましかろう」
頼まれてもいないのに彼女の写真を見せたり
美人とか、料理が美味いとか、清楚で優しいとか誰も聞いてなくても大いに自慢

競技スタートしても最寄の誰かを追いかけてノロケ話を聞かせる
「おい、まだ話は終わってないぞ。彼女は俺には勿体無いほどのお嬢様だぞ」
鬼から逃げている誰かの邪魔になったり、とてもウザイ
悪気は無い
溢れんばかりの愛がそうさせるんだぜ

鬼に追いかけられたら全力逃走
最寄の誰かに鬼を擦り付け
誰もいなければ、時速60km越えの全力移動で参加者の誰かに接近

フィールドのコーナーに追い詰め
ターンをするならそれを見越して斜めショートカット

鬼も同様に動くだろう
左右フェイントかけて別方向へGO
インフィの瞬発力は世界一ィィィィ

鬼に追いかけられてない時は体力温存休憩

俺の勝利を婚約者に見せるんだ!!

・捕まったら
さっさと済ませろ(態度でかい
・叩かれたら
(イラッ)
あとで覚えてろよ

・終了後
光纏色を抑えて光迷彩&侵入使用
さっと抜けて最寄のボックスへ
ゴリラ被って死霊粉をふりかけディアボロ風
模造ウ○コを手に鬼役を追いかけ投げつけ
バレバレでもイラッとさせれば良し

翼万能説・咲村 氷雅(jb0731)
大学部6年5組 男 
必要なのは体力、脚力、瞬発力と警戒心辺りか

位置は一、五、三からランダムに
ストレッチなどで適度に緊張を解し万全を整え何時でも全力で逃げれるよう準備しておく
基本は左右どちらか半分を警戒し様子を見ているが過剰な見張りは禁止されているし
そもそも出てくる前に分かってしまってはつまらないので様子見は程々に
残り半分は振り向かずに他参加者の反応や音で鬼が来るか判断
逃げる時はコートの端は逃げ道を狭めるので必ず避ける
最初は誰もついて来なければ単独で逃げ
鬼に狙われれば他が居る所へ逃げ身代わりにする
直接的な妨害はせず、自身が妨害を受けない限りは擦り付け以外はしない
妨害を受けた場合は回避を優先しつつ隙を見て足払いや先回りして鬼への壁に使う

競技終了後
幻衣を活性化しエッカートの離脱に気づかせないよう滝田に話しかけ注意を引く
エッカート登場でそちらに注意が行くと同時に幻衣を使用し姿を消して
逃げる滝田の足を引っかけ転倒させるなどして逃走を妨害しゴリラの餌食になってもらう

揺籃少女・ベアトリーチェ・ヴォルピ(jb9382)
中等部2年1組 女 
■位置
1.五
2.三
3.一
4.五
5.四

■行動
鬼ごっこ…予想以上に…年上…アンド…男性社会…つまり…紅一点…ガンバルゾー…。
楽しんだら…勝ち…同意…ジャスティス…。
一番も…狙うけれど…楽しめると…ハッピー…。

2時間で…5回…つまり…大分暇…。
暇な時間…配置同じ人…居たら…ノンビリお喋り…居なかったら…地面にお絵描き…ジャスティス…。絵は…学園長とか先生の…似顔絵…渋い…。
鬼が出たら…直ぐ止めて…エスケープ…。

鬼…出たら…得物…確認…要チェック…。
叩かれると…嫌な得物…多そう…ガッデム…特に…痛いの…加わりそうな…ヤツ…ダッシュで…逃げる…心構え…。

逃げる時…ダッシュ…シュタタタタ…。
小回り…活かして…カクカク逃走…切り返し…重要…。鬼…バランス崩したら…そのまま…一直線に…距離…取る…アバヨー…。
追い詰められても…諦めない…諦めない…心…奇跡…呼ぶ…らしい…。

叩かれる時…ガード…無粋…耐えねば…目は…ギュッと瞑るかも…だけれども…。
多分…手加減…してくれる…はず…期待…。



リプレイ本文

●鬼ごっこ開始!
 サッカーコート内で参加者達が思い思いの場所に移動する。滝田の姿は既になく、どれかのボックスにスタンバイしているようだ。

「プライドに賭けて絶対に捕まる訳にはいかないな」
 咲村 氷雅(jb0731)が緊張を和らげるかのように、常に身に着けている青い蝶の髪飾りに手をやった。
 四隅のボックスを便宜上1〜4と番号を付け、咲村は1番と2番のボックスの間に位置を取る。

 2番と3番ボックスの間には、ラッコの着ぐるみを着た鳳 静矢(ja3856)がいた。さっと白いボードとマジックを取り出すと、
【シズラッコ、鬼ごっこの大地に立つ!】
 と書いて掲げた。
 今回はこういう趣向で行くらしい。
 任意で『キュゥ!』という鳴き声も出せます♪

 他の面々はコート中央に集まった。

 ジャイアントパンダ姿の下妻笹緒(ja0544)はどんな時でもパンダで、今も例外ではなかった。
「パンダを見に来たが、その姿を充分に見ることができない。たとえ鬼と呼ばれる存在であったとしても、そんな悲しい思いをさせる訳にはいかない。さあ、思う存分見るが良い! 見てそのラブリーさに癒されるのだ!」
 下妻はコートのど真ん中で踊りだした。どこからでも堪能できるように、全方位に正面を向くのを忘れない。まさにパンダの鑑。
「ほとんどが中央選択か、人のことを言えないが手堅いなぁ」
 パンダダンスを横目に見ながら、龍崎海(ja0565)がつぶやく。走りやすいジャージ着用で参加。
 まず最初は鬼の様子見ということで、皆中央を選んだのだろう。
 ブラブラと手足をほぐしつつ、エイルズレトラ マステリオ(ja2224)は自分以外の参加者を観察する。
(下妻さんは自分以外にあまり興味なさそうだけど、他の人は注意した方がいいな)
 自分なりに分析、逃げ方などを考えるのだった。
「俺は負けない! なぜなら幸せの絶頂だから! 俺の勝利を婚約者に見せるんだ!!」
 と誰よりもやる気を見せているのはミハイル・エッカート(jb0544)だ。
 こういう戦いの前に戦い後のリア充的な未来予定を語るのは死亡フラグというお約束だが、ミハイルの場合は吉と出るか凶と出るか。
 そんな男達の中に可憐な少女がポツンと佇んでいた。
 彼女はベアトリーチェ・ヴォルピ(jb9382)。
「予想以上に……年上……アンド……男性社会……紅一点……ガンバルゾー……。一番も……狙うけど……楽しめると……ハッピー……」
 うっかり紛れ込んだ迷子のようであるが、ベアトリーチェとしては頑張る気満々なのであった。

 審判役の山本が、皆が位置に着いたらしいのを見計らって、
「鬼ごっこ開始ー!!」

 ピリリリリー!

 笛が吹かれた途端、4番のボックスから鬼役の滝田が飛び出して来た!
 黒いジャージを着て、手にはハリセンを持っている。
 位置的に、中央に固まってる一団が一番近くなった。一番遠いのは鳳だ。当然鬼は中央に向かって猛然とダッシュする。
「行くでぇーーっ!!」
「ハリセン……大きい……痛そう……エスケープ……」
 ベアトリーチェは男性参加者に隠れながらジグザグに走り出す。
「早速来たか! 手始めとしては悪くない!」
 ミハイルも瞬発力を活かしてその場から一気に全力疾走。
 エイルズレトラはボックスが開く音がした途端、今向いている方向へすぐダッシュしていた。それからちらと鬼に振り返る。
「鬼はあっち行ったか。動きはそこまで素早くはないが……、脚力で勝負するタイプかな」
 『あっち』とは龍崎と下妻の方だ。
 龍崎は駆け出しが皆より一瞬遅れたため、滝田がロックオン。しかし、ダンスしていたせいでやはり初動が遅れた下妻がいた。
「ごめんね下妻さん」
 龍崎は謝りながらも、下妻に寄って行って鬼の狙いをパンダに移そうとする。
「パンダのマジ走りてなんやおかしな光景やなあ!」
 滝田鬼は下妻もターゲットに入れたようだ。
「むむ、ジャイアントパンダは心優しき動物ゆえ、争いは好まないが」
 かと言って大人しく捕まるわけにもいかない。
 可愛い仕草で、『あっちを狙ってね★』とばかりに龍崎を指差す。だが龍崎との脚力の差か、下妻が遅れてきた。
 ニヤリと滝田が笑う。下妻を捕まえることに決めたらしい。
「パンダはその黒い模様でカワイく思われとるが、ホンマの目は笑てへんのを俺は知っとんで!」
「ラブリーパンダちゃんたるこの私を捕まえたくなる気持ちはよく分かる。だがしかし、パンダはあくまで眺めて癒されるものであり、お触りは厳禁なのだ。これもまた非情なる現実。なので私を捕まえるのは諦めて欲しい」
「おまホンマモンちゃうやんけ!」
 鬼はだっと加速して、パンダの着ぐるみに飛びついた。
「下妻OUT〜!!」
 山本の声の後、ピーーッと一回戦終了の笛が鳴った。

「おかしい、私の計算上では捕まる可能性はほぼゼロだったのにィ!」
 仰向けになり両手足をじたばたさせ目一杯悔しがる下妻。それはそれで可愛いが、この鬼ごっこもまた非情な勝負なのだ。
「でも捕まってしもたんやからしゃーないなぁ。罰ゲームいくでぇ!」
 滝田は容赦なくパンダにハリセンを振り下ろし、スパーーン! と小気味いい音が辺りに響き渡った。

●二回戦
 いつ鬼が現れるか分からないため、皆は警戒しつつも何となくコート内をぶらつき、場所移動する。
 鳳のシズラッコは、1番と4番ボックスの中間に身を置いた。
 1と4のボックスを時折注意ししばらく鬼が出て来ないのを見ると、ごそごそと比翼鳳凰扇を取り出し舞い始める。
『キュゥキュゥー♪』
 ぼーっと待っているだけでは芸がない。ゆえにシズラッコは舞う。
 ラッコの割に中々優雅な舞だった。

 咲村とベアトリーチェは3、4番の間の場所に一緒になった。
 ストレッチをして体をほぐし準備に余念がない咲村。
「さっきはハリセンだったけど、今度は何かな。まぁ、何にせよ捕まったら精神的にくるだろうな」
「叩かれると……嫌な得物……多そう……ガッデム……。もし捕まったら……手加減……期待……ラッキー……」

 他の皆はやはり中央に固まった。
「待ってる間することないからなぁ」
 龍崎はチラチラと2番3番のボックスを視界に入れながら待機の姿勢。
「暇ならパンダを眺めていればいいぞ」
 下妻はでんぐり返ったりパンダ体操をして皆の目を楽しませる。
「俺はザッシィでも読むかな」
 幸せが溢れんばかりのミハイルは、いそいそと結婚情報誌を読み出した。
 そんな彼らのやり取りをエイルズレトラはさり気なく聞いていた。

 そんな待機状態で15分程経過すると。

 1番ボックスから鬼が現れた!
 皆は一斉にその持っている物をチェック。今度は柄杓だ。痛くはなさそうだがイラッとはしそうである。
「そこのラッコ、覚悟せぇや!」
 鬼が一番近い鳳に行くのは必然。
『キュキュゥー!?』
【やれそら逃げろー!】
 と書いたボードを持ち、シズラッコは脱兎のごとく逃げ出した!
 とにかく逃げるが、鳳は皆がいる方へは行かなかった。誰かを犠牲にするのは流儀に反する。
【ウィンウィンがラッコのスポーツマンシップ!】
 だがそのせいで滝田がしつこく追って来て、結局はコーナーに追い詰められて捕まってしまったのだった。

【仕方あるまい……】
 そっとシズラッコは滝田の前に正座した。
「潔ええやないか、ラッコ」
【潔く罰ゲームを受ける……これがラッコ流!】
 ボードに書かれた文を見た滝田は、
「その漢気や良し! 俺も遠慮はせぇへんで!」
 ココココココ!
 と連続でラッコの頭を柄杓叩き。
 大して痛くもないのにこの叩き方にイラッとくるのを、鳳はぐっと飲み込んだ。

●三回戦
 ベアトリーチェは1、2番ボックスの間辺りに座って、一人地面にお絵描きして暇つぶし。
 描いているのは学園長や担任の先生やらの似顔絵である。
「結構……上手く描けた……渋いチョイス……ジャスティス……」

 鳳は気分一新、2番と3番の中間地点でラッコの舞。
 コート中央では下妻がパンダダンスをしているので、何だか大道芸のようだ。

「なあなあ、俺の婚約者の写真見るか?」
 パンダの傍らで、ミハイルは龍崎や咲村、エイルズレトラに彼女の写真を見せる。
「美人だろう。美人なだけじゃないぞ、料理も美味いし、清楚で優しいし、まさに大和撫子だ。羨ましかろう」
「いや、僕に教えてくれなくて結構です」
 とそっけなく言ったのはエイルズレトラ。
「へー、すごいなー(棒読み)」
 咲村は全く心のない適当な相づちで聞き流して、
「そうですね、そんなに完璧な人はめったにいないですから、羨ましいです」
 なんて最初は真面目に相手をしていた龍崎も、そんな自慢話が30分も続けばだんだん面倒くさくもなってくる。
 ミハイルに悪気は無いのだろうが、聞かされている方は猛烈にウザイ。正直勘弁して欲しいと三人ともが思ってきた時。

 4番のボックスから鬼出現!
「悪い子はいねがー!!」

 特撮ヒーローもののオモチャの剣を振り回した鬼は、一番人が集まっている中央に走る。
 皆当然弾かれたように逃げ出すが、エイルズレトラにミハイルが併走していた。
「え、ちょ、何ですか? 付いて来ないでくださいよ!」
「そうはいかん、まだ話は終わってないぞ。彼女は俺には勿体無いほどのお嬢様でな、もっと彼女の素晴らしさをだな」
「充分解りましたから」
「そんなはずないだろう、俺はまだ彼女の良さを語り尽くしてない」
 完全にエイルズレトラの邪魔になっている。しかも、他の者達はミハイルに巻き込まれるのを嫌い違う方向に逃げていた。
「でな、彼女の優しさは北半球を駆け巡るほどでな」
「いやそれどころじゃないですって!」
 鬼が二人に迫る。
「待てやー!」
「おぉッ、鬼か! だが俺の愛は止められないッ! インフィの瞬発力は世界一ィィィィ!!」
 ミハイルがぐんとスピードを上げエイルズレトラを追い抜いて行く。
「しまった!」
 鬼がエイルズレトラに追い付き、
「捕まえたで!」
「エイルズレトラOUTー!!」
 山本の笛が三回戦終了を告げた。

「やられた……」
 エイルズレトラはゴキゲンな滝田を、若干恨めしそうに上目遣いで見る。
「必殺! ファイナルクラッシュ!!」
 滝田はエイルズレトラの背中にテレビの特撮ヒーローよろしく切りつけた。
「僕は悪役ですか。屈辱だ……」
 もう絶対にミハイルには近寄らないようにしよう、とエイルズレトラは心に誓った。

●四回戦
 今度も長く待たされている。

 咲村は3番と4番のボックスの間で、リラックスしつつも警戒を怠らない。
「だんだん叩く物がおかしなモノになってきたな」
 滝田の得物を予想したりしながら、待ち時間を過ごす。

 鳳は1番と4番の間で新たな動きを取り入れたりしての舞い踊り。
『キュゥーキュゥ』
 舞う度に精度が上がってきているようだった。

 中央では、下妻はもふもふとお菓子を頬張っていた。
「パンダ……カワイイ……ラブリー……」
 今回はベアトリーチェもこの位置で待機し、パンダのお絵描きを始める。
「中々上手いな! でも俺の婚約者の方が可愛いぞ!」
「婚約者も……着ぐるみ……?」
 ミハイルは今度はベアトリーチェにノロケ話を聞かせるのだった。
 エイルズレトラと龍崎は慎重にミハイルから少し距離を取っていた。

 一時間程経過し、そろそろ競技自体の制限時間が迫って来た頃。

 3のボックスから鬼登場!
「待たせたなあー!」
 分厚い辞書のような本を抱え、一番近い咲村へと駆けた。
「こっちへ来たか」
 咲村はすぐに中央にいたメンバー達の方へ逃げて行き、一人で逃げている龍崎に目をつけた。
「ここで……仕掛ける」
 円を描くように走っていた咲村は、龍崎の進行と交差するように逃げる。
「そっち行くのか、ほなら!」
 追いかけやすさから鬼の狙いが龍崎に移り、龍崎が捕まってしまったのだった。
「龍崎OUTー!!」

 龍崎は膝立ちさせられ、六法全書を高々と掲げた滝田が罰ゲームを宣告する。
「六法全書コーナーアタック!」
 重たい書物の角部分を、龍崎の頭に落とした。
 ごす!
「いったぁ〜……こんな使い方しちゃだめだろ」
「この本はもはや鈍器やからええんや。じゃ、最後お楽しみに!」
 そそくさと滝田がコートから出て行き、皆がまたそれぞれコートに散る。

●五回戦
 のも束の間、ついさっきの罰ゲームから一分も経たないうちに、2番のボックスから滝田が出て来た!

「呼ばれてへんけどジャジャジャジャーン!」
『キュキュゥ!?』
 すぐそこにいた鳳に向かって行く鬼。今回の得物は冷凍鰹丸々一尾です。
【二度も狙われてしまうとは!】
 逃げるシズラッコ! 追う滝田鬼!
 鳳は広く空いた所を選んで逃げる。そこにちょうど咲村がいた。
「これは予想外の展開だな」
 鳳と鬼の接近で咲村も逃げようとした時、その進行方向を塞ぐようにエイルズレトラが寄って来た。鬼の注意を引こうというつもりだったらしいが、それによって鳳が唐突に方向転換、咲村は反応が遅れた。
「その遅れが命取りやで!」
 スパートをかけた鬼にガッと腕を捕まれた。
「咲村OUTー!」

 ピッピッピーー!!
 一際大きく笛が鳴り、
「鬼ごっこ終了ーーっ!!」
 山本が五回全ての戦いが終わったことを宣言した。

「これは思った以上にヘコむな……」
 咲村はかなりがっかりしている様子だ。
「打っていいのは打たれる覚悟のある奴だけだ。お前にその覚悟はあるか?」
 意味深な咲村のセリフに首を傾げる滝田。
「? 何やよう分からんが。罰ゲーム、鰹のたたきや!」
 冷凍鰹で、咲村の頭を思い切り叩いた。痛そうな音がして、咲村は頭を押さえる。
「〜っ、『たたき』違いだろ」
「この鰹は後でスタッフが美味しく頂くんで、安心してな!」
「スタッフ……誰……?」
 ベアトリーチェが素朴な質問を発するが、エイルズレトラが聞くな、と首を振っていた。


●競技後のお楽しみ

 まずは山本が結果を発表した。
「一位、ベアトリーチェ・ヴォルピ!
 二位、ミハイル・エッカート!
 三位、鳳 静矢!
 おめでとう!」

 三人はメダルと共に皆から拍手を送られ、鳳は上位の二人を称えるダンスを踊るのだった。
 それから鳳はラッコの着ぐるみの上にコック服を着てラッコックになり、試合前に作っておいた豚汁を温め直して持って来た。
【競技が終われば鬼も逃走者もノーサイド!】
 という訳で、皆に豚汁を振舞うラッコック。
「気が利くなあ〜、鳳さん」
「美味そうや」
 豚汁をもらおうとした山本と滝田の肩を、誰かが叩く。
 二人が振り向くと、ゴリラの被り物を被ったゾンビ? が立っていた。手に何か持っている。これは実はゴリラに扮装し死霊粉を振りかけたミハイルなのだが――。
「ご、ゴリラの天魔?」
 戸惑う滝田へ、ゴリラはその手の物を投げ付けて来た。
「うわっ、やめぇや! これはまさか」
 よく見るとそれはウ○コ(模造品)で。
「うわああ、やめてくれぇーーっ!」
 必要以上にゴリラに恐怖したのは山本だった。
 二人は以前、ウ○コを投げてくるゴリラ天魔に遭遇したことがあったのだが、その時の記憶は山本の方に大きな傷を与えていたらしい。
「もうリズムネタはしたくないんだあーーーっ!!」
 逃げようとする山本に咲村が足をかけて転ばす。
「ヤマ!」
「うわあっ」
 焦る山本と滝田に、ミハイルはウ○コをバンバン投げる。
「やめろおー!」
「ごめん、ごめんて!」
「安心しろ、火葬して消毒してやる」
 咲村は満足そうに嫌がる二人を見下ろし。

 二人の叫び声と皆の笑い声がサッカーコートに響き、まさにノーサイドな幕引きとなった。


依頼結果/参加キャラクター

依頼成功度:大成功面白かった!:4人
MVP一覧
 ピーマンはフェンリルの餌・ミハイル・エッカート(jb0544)
重体一覧
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パンダヶ原学園長・
下妻笹緒(ja0544)

大学部2年3組 男 ダアト
歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部7年9組 男 アストラルヴァンガード
超絶回避・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

中等部3年1組 男 鬼道忍軍
天姫と未来を繋ぎし者たち・
鳳 静矢(ja3856)

大学部4年8組 男 ルインズブレイド
ピーマンはフェンリルの餌・
ミハイル・エッカート(jb0544)

大学部4年9組 男 鬼道忍軍
翼万能説・
咲村 氷雅(jb0731)

大学部6年5組 男 ナイトウォーカー
揺籃少女・
ベアトリーチェ・ヴォルピ(jb9382)

中等部2年1組 女 バハムートテイマー


依頼相談掲示板

鬼ごっこ逃げ切り卓
ミハイル・エッカート(jb0544)|大学部4年9組|男|ダア
最終発言日時:2016年11月24日 08:03
挨拶表明テーブル
宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2016年11月24日 07:55


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