academistスタッフからの一言
私たちに身近な生き物のように感じられるウミガメ。実はその生態は不明なところが多く、幼少期から大人になるまでの間、ウミガメがどこで何を食べているのか、どのように生きているのかということは、ほとんど明らかにされていません。東京大学大学院で研究を進める木下千尋さんは、PITタグとビデオカメラを用いて、その謎に迫る研究を進めています。
担当者:柴藤亮介
テレビなどで、ウミガメの産卵シーンや子ガメが海に戻っていくシーンを見たことがある方は多いのではないでしょうか。ウミガメは、産卵時に陸地に姿を現わすことから、私たちに身近な存在だと思われがちです。しかし、ウミガメについて分かっていることのほとんどは、産卵のために上陸する大人のメスや、卵から孵った子供に関するものです。言いかえれば、海に出て行った幼少期から大人になって砂浜に戻るまでの間、ウミガメがどこで何を食べ、どのように生きているのかということは、ほとんど明らかにされていません。
私たちの研究フィールドである三陸沿岸域は、北からの冷たく豊かな栄養を含んだ親潮、南からの暖かい黒潮、津軽海峡から抜けてくる津軽暖流の3つの海流の潮境に位置し、世界有数の漁場だと言われています。水温は夏でも20℃前後と比較的寒冷な海域ですが、夏の間だけアカウミガメとアオウミガメが来遊していることが分かりました。それも、産卵場では観察できない大人になる前のウミガメばかりだったのです。
DNA分析によると、三陸沿岸域に来遊するアカウミガメとアオウミガメは、それぞれ小笠原生まれと屋久島生まれがほとんどでした。では、生まれた場所から最大1,500kmも離れた三陸沿岸域にやってくるのはなぜでしょうか。そして、三陸沿岸で青春時代をすごしたウミガメたちは、あと何年かけて大人になるのでしょうか。
私たちは、青春時代を三陸ですごすウミガメの生態を明らかにするために、長期のウミガメモニタリング調査を行います。具体的な研究方法は以下の通りです。
STEP1:定置網に入ったウミガメを漁師さんから港で受け取り、研究所まで輸送する。
STEP2:甲羅の長さ、体重、頭の大きさ等を計測する。
STEP3:ウミガメに個体識別用の体内標識「PITタグ」を、一部のウミガメには甲羅に「ビデオカメラ」も装着して、放流する。ビデオカメラは時間がたつと自動的に甲羅から切り離されて海面を漂うように仕込んであるため、切り離され次第、船で回収に向かう。
ウミガメたちを海に帰すとき、半永久的に個体番号を読み取れるマイクロチップ「PITタグ」をウミガメの体内に挿入します。三陸沿岸から放流したウミガメが産卵上陸した場合には、読み取り機で確認できるPITタグの識別番号から個体情報を呼び出すことができます。すると、そのウミガメが放流後どれくらいの時間をかけて大人になったかを知ることができます。また、一部のウミガメの甲羅に取り付けたビデオカメラの映像から、ウミガメが三陸の海中でどんな行動をとり、何を食べているかを垣間見ることができます。
これまでのモニタリング調査では、2014年から115頭のウミガメにPITタグを挿入しました。しかし、未だ産卵上陸した報告はありません。ウミガメは、私たちが想像しているよりもはるかに長い時間をかけて大人になるのかもしれません。また、2007年より16頭のウミガメにビデオカメラを取り付けたところ、三陸沿岸域ではクラゲや海洋ゴミを食べていることが明らかになりつつあります。しかし長い時間をかけて成長するウミガメのような生き物のモニタリング調査は、短期間では目に見える結果が出にくいため、継続するための資金が得難いのが現状です。
そこで今回、モニタリング調査のための費用をクラウドファンディングで補いたいと思い、挑戦を決めました。みなさんからいただいたご支援は、PITタグの購入費用(100匹分)、ビデオカメラの回収時に傭船費用、港から研究所までカメを運ぶための軽トラック借用費に使わせていただく予定です。挑戦期間中に無事に目標金額を超えた場合には、PITタグの追加購入費に使わせていただきたいと思います。
「青春時代のウミガメは、なぜ生まれた場所から離れた三陸沿岸にやってきて、何年かけて大人になるのだろう?」。この疑問に対する答えを見つけることが、私たちの研究の目標です。ぜひ一緒に、ウミガメの青春時代の生態を解明していきませんか? ご支援のほど、どうぞ宜しくお願いいたします。
木下千尋(Kinoshita Chihiro)と申します。東京大学大学院大気海洋研究所の博士課程前期2年で、岩手県沿岸域を中心にウミガメの研究をしています。ウミガメは温暖な海域に生息するイメージの強い動物ですが、水温15℃以下の低水温でも生き延びることができ、北は北海道まで目撃例があります。外温動物であるにもかかわらず、さまざまな環境に適応できるウミガメの不思議さとタフさに魅了されました。その仕組みを解き明かそうと、漁師さんから引き取ったウミガメの計測や実験を日々行っています。どうぞ、よろしくお願い致します。
以下のスケジュールで研究を進めていきます。
2016年9月 | クラウドファンディング挑戦 |
2017年6月〜 | モニタリング調査開始 |
2018年3月 | 学会発表
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( 数量制限無し )
( 数量制限無し )
( 限定30個 )
( 数量制限無し )
( 限定5個 )
( 限定5個 )
( 限定2個 )
Hiroki Nodaさん
2016-12-08 10:15:17
Metamonさん
2016-12-07 23:41:27
itsumolaさん
2016-12-07 14:28:45
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