ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)は重工系企業の集合体
ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)はもともとはボーイング(BA)やユナイテッド航空(UA)とルーツを同じくします。
ユナイテッド・エアクラフト・アンド・トランスポートという空や輸送に関わる大きな企業体でしたが、1934年に反トラスト法により分社化されました。
現在でも事業ポートフォリオは多岐にわたります。航空機のエンジン、宇宙産業、ヘリコプター、空調装置、燃料電池、エレベータ・エスカレータなどです。
それぞれの分野でブランドを持ちます。ユナイテッド・テクノロジーズという大きな傘の下にたくさんの子会社群があるイメージです。
ユナイテッド・テクノロジーズの事業で特に有名なのが航空機エンジン事業です。
航空機エンジンでビッグ3と言われるのがゼネラル・エレクトリック系のGE・アビエーション、イギリスのロールス・ロイス、そしてユナイテッドテクノロジーズ系のプラット・アンド・ホイットニー(Pratt & Whitney)です。
民間機ではもともと関係の近いボーイングだけでなく、エアバス、ボンバルディアなど世界の航空機製造企業にエンジンを供給しています。
※ユナイテッド・テクノロジーズのサイトから
軍用機ではF-22 ラプター、F-35 ライトニングIIといった最新鋭機から1952年に初飛行をし、2045年まで運用を予定されているB-52ストラトフォートレス、F-14A トムキャットなど歴史上の名機に属する機材のエンジンにも採用されています。
プラット&ホイットニーのエンジンは戦闘機、爆撃機問わず広く使われています。
また、エレベータ・エスカレータ事業ではオーチス(OTIS)ブランドで有名です。世界シェア1位を占めています。オーチスはもともとエレベータの落下防止装置を開発したエリシャ・オーチス氏がルーツの別会社でしたが、1973年にユナイテッド・テクノロジーズに買収されました。
ドイツのシンドラー(Schindler)、ThyssenKrupp(ティッセンクルップ)やフィンランドのコネ(KONE)などとシェアを争っています。
ちなみにオーチスは米国外の売り上げが8割にもなり、文字通り多国籍企業として事業展開しています。日本でも千葉県に工場を持ち、霞が関ビルに設置されるなど古くから有名です。
空調設備事業ではキヤリアブランドで製造販売しています。日本では東芝と合弁し、東芝キャリアとして事業を行っています。
ヘリコプター事業はシコルスキー・エアクラフトというブランドです。元はウクライナ生まれのアメリカ人であるイーゴル・シコルスキー氏によって1923年に設立された会社です。
エアバスヘリコプターに次いで世界で2位のシェアを占め、現在も世界最大級のヘリコプター会社の1つと言えます。しかし、原油安に伴う採算性の難しさなどからロッキードなどへ部門売却が噂されていました。
ハミルトン・サンドストランドは国際的な宇宙計画の中心的役割を果たしている企業の1つです。航空宇宙制御や宇宙システムの設計、製造を行っています。
このように重工系の機械製造で様々な事業展開をし、シェアを持っています。
ちなみに、2015年にユナイテッドテクノロジーズ本体もハネウェル(HON)から合併を持ちかけられていました。その額は907億ドルにも及ぶもので、実現していれば年間売上約1000億ドル(約11.4兆円)の巨大重工系コングロマリットの誕生になるところでした。
ハネウェルは積極的でしたが、ユナイテッドテクノロジーズ側が消極的で、実現にいたりませんでした。 売上高の規模はハネウェル(400億ドル)よりユナイテッドテクノロジーズ(550億ドル)のほうが大きいです。
ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)のチャートと配当
2006年11月 株価66ドル 配当0.265ドル
2016年11月 株価106ドル 配当0.66ドル
株価は1.6倍になっています。毎年売上を伸ばしていた2015年には120ドルを超えてきましたが、その後年末にかけて急速に調整しました。83ドルまで落ちています。その後、チャイナショックを経て再び100ドル台を回復しています。
配当は2.5倍です。この10年で順調に増配を重ねてきた企業の1つです。特筆されるのは、リーマンショック中でも減配せずに、増配を守りつづけてきたことです。比較的成熟した企業で、株主還元に積極的な姿勢は好感が持てます。
ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)の基礎データ
ティッカー:UTX
本社:アメリカ・コネチカット州・ハートフォード
来期予想PER:17.50倍
PBR:3.3倍
ROE:19%
ROA:13.6%
EPS:4.5ドル
配当:2.64ドル
上場:ニューヨーク証券取引所(NYSE)
配当利回りはおおよそ2.5%近辺をうろうろしています。確かな技術を持つ企業でありつつ、経営にも敏感で、事業ポートフォリオの見直し、構築を常に行っているイメージがあります。
シコルスキーの売却検討やプラット&ホイットニーの三菱重工への部門売却は、ついこの1,2年の話であり、今後もこう言った買収、売却の話は尽きないことでしょう。
3年ほど前に売上成長率とROEに惹かれて買いました。その後、思うところあって売却してしまいましたが、時々チェックしている銘柄の1つです。