朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は6日、与党セヌリ党の李貞鉉(イ・ジョンヒョン)代表、鄭鎮碩(チョン・ジンソク)院内代表と会談し、弾劾よりも自ら退陣することを望むと明かしたことが分かった。朴大統領はセヌリ党が進める「4月退陣、6月大統領選挙」を受け入れることも検討したが、与野党の合意が成立しなかったことを残念がったという。一方で鄭院内代表は大統領に対して9日の弾劾訴追案採決が避けられないことと、提出直後のセヌリ党議員総会で党として採決を自由投票にせざるを得ない事情を直接かつ明確に伝えた。
都心で抗議行動を続ける市民や野党各党は弾劾を強く求めている。もちろん弾劾にも幾つか問題点はあるが、取りあえず法に基づいて粛々と手続きを進めることは長所と言えるだろう。ところがいざ採決を目前に控えるようになると、野党は「弾劾されても下野せよ」などと新たな要求を始めた。これまでは「法に基づいて弾劾を」と主張していたが、実際に弾劾が視野に入ると「法とは関係なく大統領職を辞任せよ」と言い出したのだ。
最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)元代表は一昨日、国会前で演説し「弾劾が成立すれば、余計なことは言わず(朴大統領は)直ちに辞任すべきだ」と訴えた。当初は挙国内閣を主張していたが、事態が進むと退陣を求めるようになり、その後再び弾劾を主張したかと思えば、今度は即時退陣を訴えているのだ。
弾劾案が可決された場合、朴大統領が憲法裁判所の決定を待つことなく自ら辞任を決断する可能性もないわけではない。しかし弾劾を推し進めた側が弾劾の手続きを無視し、即時退陣を強要するとなれば、これは完全な矛盾でありなおかつ法を無視した発想だ。「憲法に違反した大統領」だからこそ「憲法に基づく弾劾」を主張していた彼らが、今になって「憲法に定められた手続きなどどうでもいい」と言い出したのだ。これではまるで占領軍のような言動と言わざるを得ない。
仮に朴大統領が今すぐ辞任すれば、来年2月初めには大統領選挙を行わねばならない。これは誰が考えても無理な日程だが、共に民主党と文在寅氏は「そうなれば自分たちに有利」と考えているようだ。ちなみに文在寅氏に無責任かつ強硬な言動が一気に増えている背景には、野党側に有力なライバルが出つつあることへの焦りがあるようだ。彼らは今でこそ国民を味方につけているようにも見えるが、それが永遠に続くことはあり得ない。