関口一喜 イチ押し週刊誌

激安居酒屋チェーンの裏側

  • 文 関口一喜
  • 2016年12月7日

写真:居酒屋で元を取るならビールに焼き鳥は「ねぎま」ということに……
居酒屋で元を取るならビールに焼き鳥は「ねぎま」ということに……

写真:      AERA(朝日新聞出版)2016年12月5日号

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 忘年会シーズン到来で、居酒屋で飲む機会が増える。街には「全品300円均一」「1500円飲み放題」と、「あれで儲(もう)かるのかな」と客の方が心配になるような看板も目に付く。『AERA』(12月5日号)が<激安居酒屋チェーンのカラクリ教えます 飲めないお客はお店のいいカモ>と安さの裏側をリポートしている。

 フードコンサルタントの白根智彦さんによると、飲食店の原価率は25~30%で「最も原価率が高いのは生ビールで35%程度。レモンサワーやウーロンハイは10%台。最もお店にとってうまみがあるのはハイボールで、11%と言われています。総じて、“混ぜ物”の原価率は非常に低い」という。小売り価格がわかりやすいビールに比べ“混ぜ物”は薄めに作るなどで儲けを大きくすることができるからだ。酎ハイの原価は1杯30円程度、ソフトドリンクも同程度で「アルコールを飲めないお客もお店にとってはいい客」と某居酒屋チェーン店員が明かしている。

 “混ぜもの”がお店にとってうまみが大きいのは飲み物だけではない。焼き鳥でもつくねは、骨を砕いてミンチにした“ボーンミート”を使えば「限りなく原価を抑えることが可能」「植タン(植物性タンパク)が大量に加えられている」と食品安全教育研究所代表の河岸宏和さんは話す。注文が多いフライドポテトも「飲食店の強い味方(笑)。その原価率は10%程度」(白根氏)だ。居酒屋で元を取るなら、ビールに焼き鳥はねぎまということになりそうである。

 しかし、ここで見落としてはならないのは、激安でも儲かるもう一つのカラクリは、従業員の人件費が安いという点だ。低い時間給、長時間勤務、短い休憩時間など、ブラックといわれる実態は少なくない。安さの人気で店が繁盛すればするほど、しわ寄せは店員にいく。

 リクルートの「アルバイト・パート募集時平均時給調査」では、三大都市圏の居酒屋・バーのホールスタッフ時給は977円、調理場スタッフ(見習い含む)は975円である。全体の平均時給より約20円安い程度だが、殺到する注文を次々さばき、勤務は夕方から深夜、常に人手不足と仕事はキツイ。都心部を外れれば、時給はさらに下がる。

 店は激安競争に生き抜くためメニュー価格をギリギリまで下げているから、あとは店員の賃金を抑え、できるだけ少ない人数で切り盛りするしかない。安く飲めるのはありがたいが、あまりにも“安すぎる”のはやはりどこかにひずみがあるということなのだ。

PROFILE

関口一喜(せきぐち・かずのぶ)

1950年横浜生まれ。週刊誌、月刊誌の記者をへて76年に創刊直後の「日刊ゲンダイ」入社。政治、経済、社会、実用ページを担当し、経済情報編集部長、社会情報編集部長を担当後、統括編集局次長、編集委員などを歴任し2010年に退社。ラジオ番組のコメンテーターも10年つとめる。現在はネットニュースサイト「J-CAST」シニアエディター。コラムニスト。

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