国際刑事裁判所でウガンダ反政府勢力元幹部の審理開始

国際刑事裁判所でウガンダ反政府勢力元幹部の審理開始
アフリカのウガンダで20年近くに及ぶ戦闘の中、大勢の子どもを強制的に兵士にし、市民も殺害したとして戦争犯罪などの罪に問われている反政府勢力の元幹部に対する裁判が国際刑事裁判所で始まりました。
ウガンダでは1980年代後半から20年近くにわたってキリスト教原理主義を掲げる武装勢力「神の抵抗軍」が、政府や軍に対する戦闘を続け、2万人を超えるとみられる子どもを強制的に兵士にするなど市民への攻撃を繰り返しました。

オランダのハーグにある国際刑事裁判所は2005年、武装勢力の幹部5人に対し戦争犯罪と人道に対する罪を犯したとして逮捕状を出し、このうち、去年ようやく身柄を拘束したオングウェン被告に対する審理を6日、開始しました。

検察側は、オングウェン被告が武装勢力の指揮官として2002年から少なくとも3年半の間に戦闘を逃れた市民のキャンプを襲撃するよう指示し、殺害や拷問を行ったり、子どもたちを強制的に戦闘に参加させたりしたと指摘しました。

これに対し、オングウェン被告は「私はウガンダで起きた戦闘行為に一切、責任がありません」と述べて、起訴内容を否認しました。

この裁判では武装勢力の攻撃を受けた4000人を超える被害者が証言や証拠を提出して審理に参加するほか、ウガンダ国内で地元住民に対し法廷の様子を中継で公開する取り組みも行われます。

裁判の意義を強調

国際刑事裁判所のフェルナンデス・デグルメンディ所長は、ウガンダで長年多くの市民を苦しめた武装勢力に対する裁判が始まったことについて「幹部の逮捕には何年もかかったが多くの国の力を借りながらこつこつと証拠を集めようやく審理を始めることができる」と述べて、裁判の意義を強調しました。

また、法廷内の審理の様子をインターネット中継を通じて現地の被害者や住民にも公開する機会を設けたことについて「犯罪がどのように裁かれ正義が示されるのかを被害者自身に見届けてもらうことは極めて重要だと考えている」と述べ、こうした取り組みに力を入れていく考えを示しました。

国際刑事裁判所はことし10月、南アフリカなど3つの加盟国が相次いで脱退を表明し、信頼性の低下が懸念されており、戦争犯罪を裁く唯一の常設の裁判所としての重要性を各国に改めて認識させることが大きな課題となっています。