シンポジウムで発言する尾野剛志さん=2016年12月6日、山田泰蔵撮影
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の殺傷事件で家族が被害に遭った尾野剛志さん(73)が6日、東京都内で開かれた障害者施策に関するシンポジウムに出席し、事件について「警察にも責任があったのではないか」と指摘した。その上で、神奈川県の第三者検証委員会が警察の対応に問題がなかったとの報告書をまとめたことに対し、検証のやり直しを県に求める考えを示した。
尾野さんは同園の元家族会会長で、入所していた長男一矢さん(43)が重傷を負った。遺族や被害者家族の中で唯一、実名を明かしている。
尾野さんが疑問を示したのは、植松聖容疑者(26)が事件前に衆院議長に渡そうとした犯行を予告するような手紙を巡る対応。県警津久井署は「立件できるような内容ではない」と判断し、手紙を園側に見せず内容だけ説明した。検証委は「署は必要な情報提供は行ったと評価できる」と結論付けていた。
これに対し尾野さんは「衆院議長宛てだから施設への脅迫ではないというのはおかしい。文面を見たら、全員が脅迫文だと思うだろう。手紙を園側に見せていたら、防犯体制は変わっていたのではないか。(報告書は)園が悪かったとしか読めない内容で、検証が正しかったのか疑問だ」と指摘した。
シンポジウムには検証委の委員長だった石渡和実・東洋英和女学院大教授も参加。「同じ意見が検証委でもたくさんあった。市民感覚としては、その通りだと思う」と述べた。【山田泰蔵、熊谷豪】