小学生の頃の話になる。サンタさんから全く想定外のプレザントをもらって嬉しかった話です。
もし僕のブログを読む人がいるなら、子供への些細なクリスマスプレゼントに是非参考にしてください。
今でこそ夢も希望も無く現実を直視できない捻くれ者の権化のような大人であるが、子供の頃はそれなりに僕も純粋だった。
どのくらい純粋かというと、サンタさんをちゃんと信じていることになっていた。
我が家ではサンタクロース伝説が信仰されており、例年子どもたちはサンタさんへのお願いを第三希望まで紙に書いて親に提出するシステムが慣習的に成立していた。
パチンコの換金システムレベルの穴だらけのシステムである。
しかしこの体系が維持されている限り、我々子どもは"サンタを信じている純粋な子供"という建て前が与えられ、一方の両親は子供の願いをサンタに届ける中間管理職の役割を全うすることができた。
サンタという偶像崇拝を暗黙の了解とすることで、僕らの家庭は極めて形式じみたクリスマスを送ることができた。
無論、我々の希望がすんなりと通ったことは一度もない。
だいたい、僕たちの手紙は参考意見とされるにとどまり、毎年少し歪められて与えられた。仕方がない。サンタは神であるし、手紙が適切に処理されるとも限らない。
サンタからの施しは、恣意性を帯びたまさに神の気まぐれなのだ。
「世の中は伝言ゲームで成り立っている」
子供の頃の僕が学んだ数少ない教訓の1つである。
サンタから何をもらったのか?嬉しかったのか?
……今ではもうあまり覚えていない。
さて、そんな官僚主義的サンタからの贈り物の中で、ひとつだけ嬉しかったものがある。
それが「紙ヒコーキの本」である。
当時、紙飛行機にハマってたかは定かでは無いし、こんな本をサンタさんにねだった覚えは無い。僕の親…ではなくサンタさんは、どうしてこの本が喜ばれると思ったんだろう?
しかしいずれにせよ、この本は僕にはまるで秘密の設計図のように見えた。もらって本当に嬉しかったのだ。
『飛べとべ、紙ヒコーキ』という、紙飛行機好きなおじさんが書かれた本で、「ハヤブサ」や「スペースシャトル」など、おじさんが編み出した独自の紙飛行機の折り方がたくさん掲載されている。
なんと巻末には紙飛行機専用の折り紙まで付いてくる。おじさんが発見した折り目がよく付く紙らしい。
掲載されている折り方が、これがまた結構難しい。特に「スペースシャトル」なんか、紙を上手に膨らませないと綺麗な形にならない。
生来の不器用な小学生には本当に難しかった。毎日毎日、チラシ紙を使って何機も作ったものである。
そんな複雑で繊細な折り方でできた飛行機は、なかなかよく飛んだ。
実際、学校で友達の目の前で紙飛行機を飛ばすと、あっと驚かれたものである。
気持ちいい風が吹く放課後なんかは、中庭の端から端まで、氷を滑っていくようによく飛んだ。
友達にどこで折り方を覚えたのか尋ねられるたび、僕はこう答えた
「サンタさんからもらった本に書いてあった」
純粋ぶった表情で答えるものだから、毎回変な顔をされたけど、僕はあの本を確かにサンタさんからもらったのだ。
あれほど苦労して折り方を覚えたユニークな紙飛行機も、今では全く覚えていない。
それでも、贈り物の包み紙を開けて中身を取り出した瞬間、『とべ飛べ、紙ヒコーキ』の表紙が、パッと光り輝くように見えた。
あのクリスマスの朝のことだけは今でもはっきり覚えている。