こんにちは!ricoです。先日の記事をたくさんの方々に読んでいただきまして、ありがとうございます。 皆さんのそれぞれの想いというか、感じ方の違いというものを実感でき、とても良い勉強になりました。
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それにしても、どんどん上がっていきましたよ。何がって「ハードル」もはやハードルではない。棒高跳びかってくらい高くなりましたね。全然、跳べる気がしないのですけども。まあ、無理して創作なんかやってしまってたら実体験になりませんのでね。さて、続きです。あ、その前に、前回の記事はこちらです。
結局、バイト料を割り増ししてもらうつーことで、面識の全くない新婦の披露宴でスピーチまでやることになってしまったのですけども。親友から1枚の紙を渡されまして。その内容は新婦がスピーチの際に話してほしい事が書かれていました。
とても明るくて仕事がテキパキできる女性
いつもお弁当を持参する家庭的な女性
ベタっちゃ、ベタですけどね。ここは外せないんでしょう。もうね、こんな時はよくあるお祝いの言葉を並べてチャッチャッと話すのが吉。きっと誰も真剣に聞いてないって。「これからは2人で力を合わせて幸せな家庭を築いてくださいね」おぉ、これこれ。
新婦の会社はABC証券(仮名)新婦の名は森山みどり(仮名)そんでもって私の名は松田香織(仮名)新婦の部署の主任です。パイセンです。お局です。えっと、私の名は?もう忘れてるよ。手のひらにでも書いとく?
さてさて、結婚式当日、駅の前のコンビニで他の4人の社員もどきと待ち合わせの指示を受け向かう。なにせ、この4人とも面識がないので、ちゃんと会えるのかと心配したのですけど、わかるもんですね。もちろん服装がそれらしいし、めっちゃこっちを見てくるんで、すぐに「あ~アナタね」ってビビっとくる。私、高級レンタル着物だしね。
1人は背が高くて細マッチョな男性。推定30歳。無理やり芸能人に例えるなら、子役の鈴木福君かな。後の3人は中肉中背、平均的女子。それぞれ紺、薄いピンク、黒のパーティードレスに身を包んでの登場です。駅前に送迎バスが来てまして、社員もどきの5人はひとかたまりになって乗り込みました。
他の方もいらっしゃるので他言は厳禁。式場に近づくにつれ、心臓の高鳴りが止まらない。他の4人を横目で見たけど、冷静です。紺のドレスの子なんてバスの中でメイクしてるし。新婦の名は森山みどり、私の名は松田香織、新婦の名は森山みどり、私の名は松田香織・・・私は呪いの呪文のように心の中で繰り返した。忘れちゃなんねぇ。
式場に到着して、受付で名前をと案内されました。指示通り、空のお祝儀袋を受付の方に渡してっと。えっと、私の名は・・・
え?住所?松田香織さんの住所、知らないって。どうしたらいいの?
後ろに並んでる女子社員に蚊のなくような声でそっと聞いてみた。「私、どこに住んでるの?」完全に挙動不審。しかし答えは
「さあ」
もういいよ、知らないよ。適当に書くよ。こんな住所あんのかよって思ったけど、書くしかない。
「いや~最近、引っ越したばかりなんですよね、主任!」あたふたしている私を助けてくれたのが鈴木福。アンタ、なかなかやるね。にしても、他3名の後輩女子は使えねぇ。
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チャペルに入りABC証券の社員もどき5名は横一列で着席。オルガンの音と同時に扉が開き、初めてみる新婦の顔が参列者の間から見えた。色白でとても可愛らしい人だった。ウエスト細めのふんわりしたウェデングドレス。どうやらデキ婚ではないようです。お父さんと腕を組みバージンロードを歩きます。
「おめでとう!みどりちゃん!」
大声で声をかけたのは鈴木福。おい、こら。ひっそりしてろ。目立つなよ。本気だすんじゃないよ。
式は順調に進み、いよいよ、指輪の交換。新郎が緊張のあまり、右手に指輪をはめそうになると
「そっちは右手だぞっ」
またしても鈴木福。福の勢いが止まらない。もうね、君、チェンジしてほしい。讃美歌も全力で歌ってたし。
命からがら式が終わり、披露宴会場へ。新婦から1番近い丸いテーブルに案内された。ま、そうだよね。身内でも友達でもない、私ら、新婦の会社の人だもの。「主任!スピーチ頑張ってくださいね!」薄いピンクのドレスを着た女子社員から役に徹した声援をいただいた。ここは余裕みせとくわ、任せといて!の気持ちを込めて、にっこり笑顔でかえす。内心、もう帰りたい。
出席者が揃って、あたりが暗くなって新郎新婦の入場です。2人で選曲したであろう洋楽が流れ人生最大のイベントの始まりです。迫りくるスピーチの時間。ああもう、急用ができました、今日のところはこれにてバイバイ。ドロンで帰りたい。
そんな気持ちをよそに披露宴は華やかに行われておりまして。カンパーーイ!それでは、皆様、ごゆっくりご歓談ください。披露宴がゆるんだ感じになってチラリと新婦を見たら彼女とガチで目があった。彼女はクチパクで「ありがとうございます」そう言った。
その瞬間、新婦とはずっと前から知り合いだったような気持ちになって、がぜんやる気がみなぎってきた。ハッスルハッスル。さあ、どっからでもかかってきなさい。
とはいえ、新郎の会社の社長さんが祝辞を述べたら、マイターン。やはり、この胸の高鳴りは誰にも止められないのです。もう心臓が飛び出してます。今なら「マスク」のジムキャリーにも負ける気がしない。
さて、お次はABC証券会社、どこどこ支店主任でいらっしゃいます松田香織様からお祝いのお言葉を頂戴いたします。キターー。とうと、キターーー。膝が笑ってる。ケケケ。高級レンタル着物の中で膝が笑ってる。ガクガクブルブルケケケ。
どうぞ、こちらへ。と司会者に呼ばれ、しゅっと立つ。しなりしなりとスタンドマイクのところまで約2m。笑いが止まらない膝をなだめながら、どうにか辿りついたと思った瞬間、スタンドマイクの床の支えにつまづいた。
スタンドマイク、転倒。
そんなパフォーマンスいらないつーの。松潤かよ!いや永ちゃんかよ!今日はオレのために集まってくれてありがとう!ベイビー。じゃなくて
慌てて司会者がスタンドマイクを拾い上げ、所定の位置へ。近視で裸眼でごめんなさい。すみません。ほんっと、すみません。
「はい、それでは、松田様、お願いします」司会者は何事もなかったかのように進行した。やっちまった感でウルウルになった目を新婦にむけ、私はスピーチを始めようとした。
〇〇ちゃん、結婚おめでとう!まずは、そう言いたかったのだけど、新婦の名前が出てこない。新婦の名は、なんだっけ。もう、頭の中は真っ白け。新婦、笑顔でこっちを見てるけど、目が笑ってない。これじゃ任務が果たせない。
「も~松田主任!緊張しずぎですって〜」
黒のドレス社員が駆け寄ってきて
「みどりちゃん、おめでとう!!」
薄いピンクのドレス社員もやってきて
「主任、ほらほら、せっかくスピーチ、考えてきたんでしょ!」
紺のドレスの社員も追ってきた
3人の優秀な後輩に支えられながら、半泣きでスピーチを終えた。なんかとても感動した。新婦が嬉しそうに笑ってた。
ていうか、鈴木福は?
ビールやら焼酎やらを呑みすぎてグダグダになっていた。お前はクビだ!ガルルルル。
完
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