◇ソフトバンク2位指名
「世のため人のため」--。いっぷう変わった目標を立て、プロ野球界に飛び込む17歳がいる。北海道幕別町にある江陵高から、10月にドラフト2位でソフトバンクに指名され、入団する古谷優人(ゆうと)投手。障害を持つ妹の応援を背に、新たな舞台での飛躍を誓う。【角田直哉、生野貴紀】
【写真】SB2位指名を受け、チームメートと喜ぶ古谷選手
古谷は球団との間で11月16日、契約金6000万円、年俸700万円(推定)で入団契約に合意。22日には福岡市内での新入団選手記者会見後「有名になって、障害を持つ方たちを(試合に)招待したい。社会貢献活動にも関心がある」とはっきりとした口調で答えた。その傍らで、記者に「お兄ちゃん、かっこいい?」と聞かれた古谷の妹、みりあさん(9)が満面の笑みでうなずいた。みりあさんは、ウイルス感染症の影響で、歩行可能だが、左半身が少し不自由だという。
古谷は中学の野球部引退後、みりあさんに付き添って歩いたり、積み木をしたりするなど介助を手伝うようになった。「その中で、人を助けたいという思いが強くなった」という。
江陵高に進んだ古谷のそんな気持ちは日ごろの練習に懸命に取り組む姿勢につながった。ほぼ毎試合、応援のため球場に駆けつけたみりあさんの声援も力になり、最速154キロを誇る速球派左腕に成長した。甲子園の土こそ踏めなかったが、3年夏の北北海道大会で4強入りし、プロのスカウトに注目されるようになった。
ソフトバンクは今季のパ・リーグで、2位に最大11.5ゲームの大差を付けながらも、最後に日本ハムに逆転優勝を許して2位。日本シリーズにも進めなかった。チームは左腕が不足しており、「将来のエース」として期待は大きい。父輝紀さん(44)は「口だけではなく、言動が伴った社会人になってほしい」と頼もしそうに見つめた。多くの思いを背負って、古里の北海道・十勝から約1500キロ離れた福岡で研さんを積む。
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