山内深紗子
2016年12月6日21時03分
貧困や虐待などで実親と暮らせない子どもの9割は施設で暮らし、里親などの家庭的な環境で暮らす子は1割です。国は今年、家庭的な環境を積極的に増やしていく方向を示しました。子どもにとって最善の育ちの場を、どう整えていくのか。先進の取り組みとともに報告します。
3Dゲームの時間をまったく守れない。反省を促すとすぐすねてしまう。イライラすると傘や贈り物のグラブも大切に扱えない……。
福岡市の元会社員の女性(58)は昨年3月から、育児放棄(ネグレクト)で保護された小5男児(11)の里親になった。長男(24)と同じように愛情を注いでいるが、「どうしてこんな行動を?」と悩み、つい叱る日が増えた。
この夏、地元のNPOが主催する里親研修を受けた。医師や心理学者らが治験に基づいて作った英国のプログラムだ。里親6人が参加し、計36時間、傷ついた子どもが示すことがある「問題行動」の原因と対処法を話し合っていく。子どもの行動を記録し冷静に観察する目を養ったり、「なぜ」と問い詰めずに、複数の答えから近いものを選んでもらったりする。
日本での里親研修の多くは、自治体への登録前後に基本1回ずつ。その後は更新(2年か5年)時のみ。短期間の研修はあるが座学が中心だ。「生活の困り事は24時間起こる。迷うたびに児童相談所に電話をするのは気がひけて孤立しそうだった。研修で、あの子の行動の理由が分かり、叱る回数も減りました」と女性は話す。
国は2011年、保護が必要な…
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