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2016年11月7日 第4回がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成28年11月7日(月)16:00〜18:00


○場所

航空会館 7階 701〜702会議室


○議題

(1)第3回までの議論の概要について
(2)各構成員からの意見について
(3)その他

○議事

○事務局(濱) 定刻となりましたので、ただいまより第4回「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日の構成員の出欠状況につきまして御報告申し上げます。

 本日は、加賀谷構成員、山田構成員より欠席の御連絡をいただいています。なお、川本構成員は1615分ごろ、桜井構成員は1730分ごろに到着予定との御連絡をいただいています。なお福島健康局長は別の公務のため、本日は欠席しております。よろしくお願い申し上げます。

 それでは、資料の御確認をお願いいたします。

 座席表

 議事次第

 資料1 がん対策に関する行政評価・監視(概要)

 資料2 第3回までの議論の概要(案)

 資料3 緩和ケアに関する意見書(山田構成員)

 資料4 次期がん対策推進基本計画の策定に関する意見書(有澤構成員)

 資料5 次期がん対策推進基本計画への提言(日本ホスピス緩和ケア協会)(池永構成員)

 資料6 がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会意見書(田村構成員)

 資料7 循環器疾患及び非がん疾患全般における緩和ケア推進に関する意見書(平原構成員)

 資料8 日本緩和医療学会からの次期がん対策推進基本計画への意見書(細川構成員)

 資料9 緩和ケアの効果的推進に関する提言書(中川構成員、池永構成員、小川構成員、前川構成員)

 資料10 がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会意見書(桜井構成員)

 また、参考資料1から8は前回までと同様でございます。

 さらに、本日は参考資料9といたしまして、緩和ケア推進コンソーシアムからの要望書をつけてございます。

 また、構成員への机上配布資料といたしまして、

 1 池永構成員資料、2 中川構成員資料、3 中川構成員資料、4 木原構成員資料、5 桜井構成員資料。また、桜井構成員から、第3回までの議論の概要(案)に関する意見がございます。

 資料は以上でございます。資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出をお願いいたします。

 以上をもちましてカメラをおさめていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いいたします。

 この後の進行は、福井座長にお願いいたします。

○福井座長 それでは、議事に入っていきたいと思います。

 本日は、事務局からの報告事項の後に、議題として、本検討会における「議論の整理」というモノを作成するに当たり、「第3回までの議論の概要」及び各構成員より提出されました意見書等を踏まえまして、御議論いただきたいと思います。

 事務局で「議論の整理」という言葉を使っておりますが、これは第3期基本計画の策定に向けまして、がん対策推進協議会における議論の参考となるよう、この検討会での議論の整理を行うものでございます。

 それでは、まず報告事項「がん対策に関する行政評価・監視について」、事務局より説明をお願いします。

○事務局(濱) 資料1「がん対策に関する行政評価・監視」、これは総務省が行うもので、各府省の業務の実施状況を把握・分析するものです。

 資料1の1ページ目、背景等にございますが、本行政評価・監視は、平成29年度以降の次期基本計画の策定に反映されることを企図しております。勧告日は、平成28年9月30日です。

 今回の調査事項につきましては3点あります。3番目に緩和ケアの推進がございます。

 資料をおめくりいただきまして、3ページ目の3に緩和ケアの推進の項目がございます。調査結果としましてマル1と、4ページ目にマル2がございます。

 まず、マル1ですが、一部の拠点病院において最低限提供すべき緩和ケアが提供されていない。また、拠点病院間で緩和ケアの提供体制及び提供内容が区々となっている状況という結果でございます。

 詳細はその下にございますが、緩和ケアに係る必須要件、これはその上の2番目にマル1、マル3、マル4とございますが、緩和ケアチームの構成員である専従の専門看護師が未配置(1事例)。マル3、緩和ケアにおける外来患者に対する苦痛のスクリーニングが未実施(5事例)。マル4、緩和ケアチームによる病棟ラウンドが未実施(1事例)のような必須要件が未充足の疑いのある事例が7事例あったということでございます。

 また、2番目ですが、拠点病院間で緩和ケアの提供体制及び提供内容が区々となっている状況につきましては、マル1で、緩和ケアチームの医師に係る「原則必須」要件等を一部充足していない拠点病院が35施設、約70%あったという報告がございます。また、マル2では、緩和ケアチームの精神症状緩和医に専門資格を有さない耳鼻咽喉科等の医師を置いている拠点病院が2施設あった等の指摘がございました。

 これを受けまして、総務省からの勧告では、右になりますが、拠点病院に求められる緩和ケアの徹底及び整備指針の明確化等による緩和ケアの充実に向けた支援を行うようにという勧告を受けたところでございます。

 おめくりいただきまして、4ページ目にマル2がございます。こちらは、拠点病院及び拠点病院が作成した緩和ケアマップに掲載されている地域の病院・診療所の緩和ケア研修の受講状況は不十分という結果がございました。

 こちらに関しましては、右の勧告になりますが、拠点病院の医師に対する受講指導の徹底及び緩和ケアマップに掲載されている病院・診療所の医師に対する受講勧奨の促進を行うという勧告を受けたところでございます。

 以上、事務局から報告させていただきました。

○福井座長 ありがとうございます。

 この件につきまして、何か御意見がございましたら、構成員の先生方からお願いしたいと思います。

 よろしいでしょうか。調査の仕方にもよると思いますけれども、このような対象について調査した結果はこういう結果で、勧告をされているということです。

 前川構成員、どうぞ。

○前川構成員 これを受け取られて、厚労省からは勧告とかを受けましたと報告がありましたけれども、それに関して、どのようなお考えを持っていらっしゃるのか、お聞きしたいのですけれども。

○福井座長 事務局、何かございますか。

○事務局(濱) 今回の評価・監視につきましては、平成29年度以降の次期基本計画の策定に反映させるとともに、がん対策、特に緩和ケア、我々のところでございますが、さらに進めるように取り組んでまいりたいと考えております。

○前川構成員 よろしくお願いいたします。

○福井座長 よろしいでしょうか。

 どうぞ。

○細川構成員 勧告の中の3 緩和ケアの推進の部分です。専門資格を有さない耳鼻咽喉科の医師を置いている拠点病院というのは確かにあります。しかし現場では専門資格がある精神科医師であっても緩和ケアに興味のない先生も多く居られます。がんを扱っている耳鼻科医師で、緩和ケア担当として患者さんに寄り添っている良い先生もたくさん居られます。資格だけで、さも何も出来ていないような判断や報道をされることについては、疑問を感じます。現在、精神科の専門資格を有している医師を配置せよというだけで、そのポジションの確保とか予算づけが全くされていない状況です。仮に1人の資格のある精神科医師がおられたとしても、多くの大きな病院では若い先生たちはすぐに異動してしまいます。まず、ポジションの確保とその枠への予算付けが必要ではないでしょうか。耳鼻科医師だから緩和ケアが出来ないというような報道には疑問があります。

 もう一つは、最初の主な調査結果で、「最低限提供すべき緩和ケア」と記載されていますが、この総務省は「最低限提供すべき緩和ケア」とは一体どのように定義されているのでしょうか。

○福井座長 事務局、お願いします。

○事務局(濱) 2点目につきましては、拠点病院の指定要件での「必須要件」という認識になっています。

○細川構成員 人員配置のあるなしということだけですか。

○事務局(濱) 拠点病院の指定要件で必ず行うべきであるという必須要件に関して、できていないところが、最低限提供できていないと判断されたと認識しています。

○細川構成員 その判断は、総務省の方のみが判断されたのですか?

○事務局(濱) 今回は総務省の判断ということになるかと思います。

○細川構成員 総務省の判断ですね。総務省の方は、耳鼻科の先生の多くが“がん”治療を行っているということは御存じなのですか。

○事務局(濱) 詳細につきましては、総務省の判断になります。今回の行政評価では、精神科の専門資格を有するかどうかで定義されたと認識しています。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ、中川構成員。

○中川構成員 耳鼻科領域頭頸部腫瘍というのは、かなり重要ながんの領域で、放射線治療の大きなターゲットでもあるのですが、今回の総務省の監査において、精神症状担当という立場が耳鼻科の先生だったというところが恐らく問題になったと思うのですが、この辺は細川構成員がおっしゃるように、例えば精神科あるいは心療内科の具体的な資格が必要なのかどうかについては、事務局はどういう見解をお持ちでしょうか。

○事務局(濱) 拠点病院の指定要件では、精神科の専門資格が必要とは、現時点で規定しておりません。

○中川構成員 診療報酬とはまた別なので、恐らくその辺は総務省の誤解というか、ちょっと確認すべき点はあるのかもしれないですね。

○福井座長 ただ、資格を持っていない人が違う分野のいいケアを提供しているということはどうすればわかるか。簡単にできることではないものですから、どうしてもこういう外形的な評価をせざるを得ないというのも、現場では。

 はい。

○細川構成員 例えば我々でも、せん妄とかうつとか不眠症に関して、精神科の手をかりなければならない実態は確かにあるります。しかし緩和ケアで実際の患者さんが必要とする心理・精神的なものというのは、医療者が患者に寄り添えるかどうかのところが大きいので、資格を持っていて精神科疾患を判断できる精神科の医師が必ず必要でその資格があれば出来るというものではありません。つまり必ず資格のある精神科の必要性は何もないのです。現場を知らない人たちが、こうやって資格のあるなしだけで、患者さんそっちのでだと評価をすることは避けるべきと考えます。

 精神科の中では、いわゆるメジャーと言われるところは、統合失調症や認知症です。緩和ケアで患者さんに寄り添うというような専門分野はリエゾンです。ここはマイナーなのです。若い先生が一旦このリエゾンに足を向けると大学とか大きな病院ではメジャーでないので、すぐに他の病院に転勤となるというのが現場の状況も多くあるのです。そういった現状を全然把握されずに、精神科という資格だけを持っていれば緩和ケアができると幻想というか無知というか、こういった素人考えでの精度は、ちょっと考えていただきたいと思います。本来、緩和ケアというのは“がん”患者さんを治療していた医療者から生まれてきたもので、精神科から生まれてきたものではないのです。

○福井座長 事務局、どうぞ。

○事務局(濱) 御意見、ありがとうございます。

 精神症状緩和医につきまして、これは身体症状もそうですが、専門的な知識及び技能を有する医師と拠点病院の指定要件では規定しております。ただ、判断基準、診療科ということまで明記を指定要件ではしていない状況です。

○細川構成員 何も必ず精神科医を緩和ケアチームに入れておかなければならないという理由はないのです。いつでも患者さんを紹介できる、困った時に呼んだら病棟に来てくれる精神科医の方がおられたらそれで十分です。逆に言えば、ここにも書いてあるような「形骸的な緩和チーム」というのは、無理やりに勝手に定めた有資格者や人員を配置してつまり名前だけ入っているけれども、何も実働していないことです。

有資格者と名前、体裁だけを整えただけで、ちゃんと緩和ケアができていると判断し、少しでもかければ緩和ケアがちゃんとできていないと判断しているというのが、こういう評価や監視だと思います。

 もう一つ、例えば緩和ケアチームに相談される件数というのが評価対象に有ります。どのような相談をもってして相談件数としているのでしょう。新聞には、ある施設がすごい数の相談件数が書かれていました。その施設にその相談とはどんなものかと聞いてみると、実際にはそんな多くは見ていないとおっしゃる。常識的には、普通、相談というのは、患者サイド、もしくは主治医サイドからこんなことやあんなこと、どうしたらいいでしょうかというのが、相談でありそれを1件と考えるのではないでしょうか。そこの施設は何をやっていたかというと、がんと診断されている患者さんに全部こちらから電話して、何かありますか、困ったことはありませんか?これもスクリーニングと言うのかもしれません。この電話をすべて1件と数えているのです。“がん”患者数と相談件数が同じ位なのです。

 緩和ケアチームがもしこの患者さんたちを仮に1人10分で週に2回朝から回診したとしても夜の9時か10時までかかる計算になります。ですから、こういう評価や監視というものは、実際を反映しているかどうかは大きな疑問です。こういった評価や監視の内容がマスコミに出回ると、そういう数字だけをうまく出して立ち回る施設が必ず出てくるのです。こういった施設を新聞やテレビがこういう数字で評価して取り上げるために、実際に真面目にやっているところは実績が上がっていないように見えて、疲弊ばかりしていく。

 実は、我々の施設は緩和ケアチームができてから5年以上緩和ケアチーム加算を取っていませんでした。理由は、自分たちの基準で、これぐらいまでチームでできるようになるまでは取らないでおこうと一所懸命にやっっていたからです。ところが後続の施設は寄せ集めの素人チームができた次の月から、もう加算を取っているのです。そういうところは、事務の上手な人がいる施設です。実務レベルを真面目に考えている施設と、全く考え方が違っているのです。こういうことをやられると、当院もそうでしたが、現場でずっと頑張っている人たちがとても寂しく空しい思いにどんどん落ち込んでいくのです。何でもかんでもデジタルで評価できることを考えるのは、緩和ケアというアナログの世界では違うということを少しは考えていただきたいと思います。

○福井座長 これは、あくまでも評価の一部ですので、先生がおっしゃったように、一人一人の能力とかケアを全部調べることは難しいですね。

○細川構成員 本来、絶対無理なはずです。

○福井座長 ですから、もう少し具体的にどういう基準をつくれば、先生がおっしゃるような方向に行くのかという提言も、またしていただければありがたいです。非常に外形的なものになっていますので、その外形の基準をつくるところに大きな問題があるというのも事実だと思います。総務省のほうは、このような評価をしたということで、できることなら、このような評価をされないように、次回はどうすればいいかという議論をお願いできればと思います。

 それでは、議題の「(1)第3回までの議論の概要について」、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局(濱) 資料2「第3回までの議論の概要(案)」です。

構成員からは事前に御意見を頂戴しております。

 まず、イタリックで記載しているところは、第1回から第2回までのものです。ボールド体の記載のところが前回の議論の内容、また追記した内容です。

 まず、緩和ケア全般について、現状と主な意見を記載しています。

 2ページ目には、がん診療を担う医療機関における緩和ケア提供体制のあり方で、まず、がん診療連携拠点病院における緩和ケアの提供体制について、現状と主な意見をまとめています。

 4ページ目には、2としまして、拠点病院以外の一般病院における緩和ケアの提供体制についてです。

 5ページ目には、推進すべき取組の方向性について、5点まとめています。

 6ページ目には、すべての医療従事者が基本的な緩和ケアを身につけるための方策として、1つ目、緩和ケア研修会受講率向上についての現状と主な意見です。

 7ページ目には、2としまして、研修内容について。

 そして、8ページ目には、3として、研修対象についてまとめています。

 また、4に推進すべき取組の方向性について、4点、取りまとめています。

10ページ目には、循環器疾患に対する緩和ケア。

11ページ目には、その他の意見をまとめています。

 本日の机上配布資料の最後になりますが、本日、おくれていらっしゃる桜井構成員より、事前に「第3回までの議論の概要(案)に対する意見」を頂戴しています。この内容につきましても、議論の整理に向けまして、内容を踏まえて反映させていきたいと考えています。

事務局からは以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 資料2につきまして、何か修正等の御意見がございましたら、お願いいたします。これまでの御意見をまとめたということです。

 どうぞ、道永構成員。

○道永構成員 2ページの現状というところです。桜井構成員からの意見にもありましたが、6つ目の丸です。「整備された」と断言していますが、これはちょっと心もとないような気がいたします。ちょうど桜井構成員が書いていらっしゃるように、「その質や提供体制の現状について課題がある」という一文を入れたほうがよろしいかなと思いました。

○福井座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

○道永構成員 続けて言ってもいいですか。

○福井座長 どうぞ。

○道永構成員 次、3ページですが、一番最後のポツです。緩和ケアセンターが地域連携の役割を担うために、定期的な地域との会議やカンファレンスなどを行うのはどうかということですが、これは以前から申し上げておりますが、医師会のネットワークがございますので、医師会との連携あるいは地域の在宅医療をやっている医療機関との連携ということで、会議、カンファレンス以上のことで、そういった連携を進めるのはどうかと書いていただければと思います。

 あと、4ページ目ですけれども、主な意見の下から2つ目です。訪問看護師やケアマネジャーなどが拠点病院の中に入っているような連携の形もあるのではないかということで、これが議論で出てきたかどうか、ちょっと覚えておりませんが、逆に、拠点病院の看護師さんが訪問看護ステーションに入って、在宅の訪問看護の現状を知るということも大事で、たしか静岡がんセンターはそれをやっていて、連携が非常にうまくいっていると伺っておりますので、そういったことも書いていただければと思います。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 拠点病院の中に訪問看護ステーションを持っているところもあるのでしょうか。

○道永構成員 私が伺っているのは、拠点病院にあるのではなくて、地域の訪問看護ステーションの中に拠点病院の看護師さんが研修に行くような形をとっているということです。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。これがベースになって、議論の整理が行われるわけですね。ですから、途中で何か気がついた点がございましたら御発言いただければと思いますので、次に進みたいと思います。

 どうぞ。

○事務局(濱) 事前に川本構成員から、今、4ページ目の道永構成員が御指摘いただいた下から2つ目のポツの「地域で活躍している訪問看護師やケアマネジャーなど」というところですが、具体的な看護師とかケアマネジャーを挙げるより、「地域ベースで調整を担う人」などの表現がいいのではないかという御意見がございました。事前に頂戴しておりましたので、報告させていただきます。

○福井座長 よろしいでしょうか。

 それでは、各構成員からの御意見を伺いたいと思います。意見書、提言書を御提出いただき、ありがとうございました。

 本日のこの会議の最後の30分間は総合討議の時間としたいと思いますので、できるだけ5分少々ぐらいで御発表をお願いしたいと思います。本日の意見書、提言書の内容のポイントにつきましては、ただいま説明していただいた第3回までの議論の概要に織り込んで、がん対策推進協議会に提出するという手順になります。

 それでは、まず事務局より、本日御欠席の山田構成員からの意見書の説明からお願いしたいと思います。その後、有澤構成員にお願いします。

 事務局、お願いします。

○事務局(濱) 事務局から、資料3で山田構成員からの意見書の説明をさせていただきます。

 山田構成員からは、緩和ケア提供体制の問題と考えられる方策という内容で、1番目は地域格差についてです。

 方策の中では、緩和ケアチーム等の専門チームや優れた人材、そこには専門医や認定/専門看護師・専門薬剤師・臨床心理士などを地域で共有するという提案です。

 また、専門・認定看護師の多くは医療機関に属していますので、それらの人的資源を地域に積極的に出す取組が必要ではないか。

 また、看護師のアウトリーチがあって、そこから自施設の専門チームにつなげていくとよいという方策が挙げられています。

 2番目は、拠点病院と他の医療機関等との連携が十分とは言えないところです。医療者間あるいは介護領域の専門家からの相談支援体制の整備強化と急変時の対応。また、拠点病院に相談窓口や相談支援の体制が必要ではないかという提言です。

 3番目は相談支援についての記載です。方策として、相談窓口に来訪してからではなくて、がんと診断されたとき、できるだけ迅速に医療者、特に看護師あるいはメディカルソーシャルワーカーからの積極的なアプローチが必要ではないかという提言です。

 また、「セカンドオピニオン外来」の対象にも、医学的治療だけでなく、今以上に「緩和ケアに関すること」を入れていく方策が挙げられています。

また、「さらに」の後ですが、電話訪問の重要性を記載されています。

 4番目は家族支援に関する記載です。家族支援に関する体制化を行う必要があるという提言です。

 最後の5番目です。これらの方策の実施には人的資源の確保が大きな課題となるのではないかという提言です。

 事務局からは以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、続けて、有澤構成員から資料4についてお願いします。

○有澤構成員 私ども、薬局を中心として考える場合、緩和ケアに関しては、主に在宅にフォーカスを当てた形で考えております。そういった中で、在宅医療での緩和医療の提供がまだまだ不足しているという現状を認識しております。そして、患者・家族にあっても、できる限り在宅療養という希望がある反面、地域における医療とか介護施設の人的資源あるいは物的資源が充足していないところもあり、拠点病院が緩和ケアの提供体制の中心となっているのが現状ではないかと考えております。こういった施設間の提供体制に差があり、治療を受ける患者・家族にとって、必ずしも十分に満足するものではないと認識しております。

 そういった中で、地域包括ケアが構築されるに当たって、地域包括単位での医療介護提供体制を推進する必要もあり、地域包括資源の不足あるいは偏在する、隣接する地域包括単位の中で、ある意味、こういった専門的な資源については、広域での連携の構築の必要があると考えております。特に、がん診療における薬物治療の分野にあっては、外来化学療法や疼痛緩和療法はさまざまな製剤も出ていたり、あるいは治療の手法が多様化して、投与経路もさまざまありまして、薬物治療の個別最適化の選択肢がふえたのではないかと考えております。

 こういった中で提案していくことは、在宅緩和ケアの質を高めるためにということでありまして、昨年、厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン」が示されております。また、薬機法施行規則の一部改正により「健康サポート薬局」の届け出が10月から始まっております。こういった中で、服薬情報の一元的あるいは継続的管理、そして24時間在宅対応、あるいはかかりつけ医を初めとした多職種連携を基本とした機能で、地域包括ケアシステムの中でしっかりと薬局・薬剤師を活用していただく中で考えていただければと思っております。

 こういった中で、職種を超えた連携研修も必要であり、同じ薬剤師でも拠点病院に勤務する専門薬剤師もおりますので、薬局と拠点病院等の薬剤師間での専門的な手技とか知識も含めた研修についても充実を求めていきたいと思っております。

 それから、手技ばかりでなく、他職種も含めて倫理、あるいはおのおのの職種としての責務を相互に理解する必要性もあると思っております。

 もう一点は、薬局は地域に必要とされる医薬品を過不足なく供給する責務を負っております。特に、在宅の緩和ケアの提供体制を支えるに当たって、薬局にとっては流通の問題が切り離せないと考えております。麻薬に関しては、当然でありますが、さまざまな規制とか制約がありまして、以前よりは法律改正等、はかられて、緩和というか、運用がしやすい状況にはなっておりますが、実際の処方する医療機関における採用、非採用薬にかかわらず、その患者にとって個別最適な医薬品が自由に処方できる、特に麻薬に関しての提供ができるためには、麻薬卸売業者あるいは麻薬小売業者間の業務にかかわる規制のあり方を検討いただければと思っております。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、池永構成員、よろしくお願いします。

○池永構成員 お時間いただきまして、ありがとうございます。私からは、日本ホスピス緩和ケア協会からの、次期がん対策推進基本計画への提言ということで、理事長の志真にかわりまして、池永から御説明させていただこうと思います。資料5と机上配布資料1です。

 日本ホスピス緩和ケア協会は、緩和ケア病棟としては315施設の会員登録がございまして、緩和ケア病棟全体の9割近くの参加率を持っております。また、緩和ケアチームとしての登録は約75施設、診療所としては57施設と、緩和ケアを積極的に取り組んでいる施設の集まりということで御理解いただけたらと思います。

 まずAといたしまして、拠点病院以外における緩和ケアの必要性が現時点ではあるのではないかということです。

 拠点病院のない2次医療圏であったり、また拠点病院以外のところで多くのがん患者が看取られていたり、高齢がん患者や在宅療養している患者、また若い患者等におきまして、拠点病院以外での緩和ケアの必要性に取り組んでいかなければならないと考えております。

 そのためには、一般病院に対して緩和ケアチームの設置を推進し、それを診療報酬上の措置を講ずる必要があると考えております。特に、人材が十分でないような一般病院においての緩和ケアチームの設置、診療報酬上の措置です。

 また、地域における緩和ケアの推進は、地域包括ケアの諸事業との整合性には配慮しなければならないということです。特に、在宅緩和ケアに特化している診療所や訪問看護ステーション、このような施設を地域における緩和ケアの拠点として、都道府県及び郡市の医師会と協働して、在宅緩和ケアの相談や情報提供を行うのがよりよいのではないかと考えております。

 また、地域包括ケアシステムにおいては、緩和ケアの基本教育を受けたケアマネジャーが在宅緩和ケアのコーディネートを行う。そのためにも、ケアマネジャーへの緩和ケアの教育ということを進めていかなければならないのではないかと考えております。

 また、拠点病院では、若年者のがんに対しての専門的な緩和ケアの提供、また生活支援に関する地域の情報を収集し、調整する必要があるのではないかと考えられます。

 Bといたしまして、緩和ケア研修会のこれからについての問題点でございます。

 地域での緩和ケアを推進していくためには、地域の一般病院や診療所の医師にも緩和ケア研修会に出ていただく必要がある。また研修会自体も在宅緩和ケア、地域包括ケアの視点が必要ではないか。また、非がん患者に関する研修も必要であるという課題において、在宅緩和ケアの視点を持った基本教育プログラムを再構築していく必要性があるということであります。

 この点につきましては、さまざまな関連諸団体、または日本医師会等の協力というものも必要でありますし、それによって、地域の一般病院や診療所の方々に参加していただく。また、医師以外のスタッフとともに、多職種の在宅緩和ケアの事例検討会というものを地域で行っていくこととも、教育のためには必要ではないかということです。

 あと、C.緩和ケアに対する診療報酬の適正化です。

 特に、非がん患者に対しての緩和ケアが立ち遅れていること、また緩和ケア診療加算の届け出ができていない緩和ケアチームも多いということです。

 診療報酬の見直しとして、緩和ケアチームの対象疾患を今後、実態調査も行った上で考えていかなければならない。あと、拠点病院以外の緩和ケアチームも診療報酬が得られるような診療加算の見直し。また、緩和ケア病棟を有する一般病院や在宅療養支援診療所においての「外来緩和ケア管理料」も、点数化する必要があるのではないかということであります。

 D.専門的な緩和ケアの質の向上ということに関して、机上配布資料1にありますとおり、日本ホスピス緩和ケア協会では、緩和ケア病棟の認証制度を開始しております。このような形で、ケアの質向上に取り組んでいることをきちんと評価できるようなシステム。また、このような緩和ケア病棟での取組を、緩和ケアチームや在宅療養支援診療所にも広げていく必要があるだろうと考えております。実態調査や遺族調査、患者調査などの取組を関連諸団体とともに行うことによって、切れ目のない緩和ケアの質の向上、またそれを対外的にも示していくことが大切ではないかと考えています。

 最後に、Eといたしましては、がん対策推進基本計画は、今後の地域医療計画とも整合性を持った形で推進していただきたいと考えております。

 以上でございます。

○福井座長 ありがとうございます。

 どうしてもこれだけは確かめたいという御質問がもしございましたら、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、田村構成員からお願いします。

○田村構成員 ありがとうございます。

 相談支援に携わる社会福祉ソーシャルワーカーの立場から、3点、職能団体である日本医療社会福祉協会と一緒に提言させていただきました。

 まず、1つ目は、相談支援の充実ということです。

 現状で、拠点病院の多くがほとんど急性期の総合病院で、がん相談支援センターは地域の基幹病院におかれているということになっているのですが、実際には院内の退院支援を担っているところも少なくない。広く院内の人たちのスクリーニングですとか地域の相談対応というところが難しい現状があるのですけれども、28年の診療報酬によって「退院支援加算1」というものがありまして、相談員の配置がかなり濃くなっております。これは、入院当初からスクリーニングを行うことになっていて、その中で、がんの患者さんも相談できるスクリーニングをする機会が得られるようになってきているという背景があると思います。実際に、がん相談支援センターの職員は、広く地域の相談がなかなか難しい。なぜならば、兼務ということで、地域の相談に時間を割くと、急を要する院内の相談が遅延するという板挟みの現状があります。

 また、拠点病院でスクリーニングということですけれども、十分に心理社会的な苦痛が把握されないという現状があります。特に若年では、生活設計の部分や医療費、役割、家族への負担など、いろいろな問題が実際にはありまして、困りごとの上位には、社会生活、家庭生活というものが、医療・ケアより上に出てきたという調査結果もあります。

 もう一つ、桜井構成員も前回、お話されていましたけれども、若年の介護保険の活用ということが非常に知られていなくて、いろいろな活用できる制度が使われていないこともあるということです。

 もう一つ、就労支援ですが、社労士さんとの連携が進められてはいるのですが、実際には対応が限られておりまして、もともと制度活用のもとに福祉士、社労士さんに会えない、普通の病院で、社会福祉士ソーシャルワーカーが、就労相談をしているということがあります。業務指針の「社会復帰援助」に該当するものです。

 そして、がん相談員は、地域への連携・繋ぎの役割を考えましたところ、介護保険とか特に地域へのコンタクトが薄いので、資源に精通しておらず、多職種・地域としっかりつなぐところがなかなか難しいという現状もあります。

 さらに、ほとんどの治療が外来に移行しているのですけれども、そこでの意思決定とか本人の御希望をどのようにつないでいくのか、という連携が十分ではないという現状があると思います。

 そこで、このような相談に携わる者、社会福祉士、看護師を専従にしていただいて、そこのバックアップを濃くする。社会生活についての最新のリソースとか、今まで蓄積させた地域の情報などをきちんとアドバイスして、生活を支えていくことが大事ではないかと思います。

 そして、心理社会的問題の特に就労については、28年2月に出された「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」にも、社会福祉士が医療機関側と事業所側との窓口と連携を担うとなっておりますので、こういう働きが発揮できるようにできればと思います。

 また、緩和ケアチームの人員配置ですが、今は「協力する生活相談に携わるもの」の中に「社会福祉士等」というのも書き入れていただいて、生活相談を充実させてはどうかということ。

 そして、外来に移行している現状ですが、緩和ケアチームに社会福祉士を専従に配置することで、外来での対応あるいはスクリーニング、外来での直の相談に介入しやすくするというのは改善策としてどうかと思います。

 2番目が、地域緩和ケアネットワーク構築のことですけれども、緩和ケアセンターを中心にということでしたけれども、皆さんもいろいろお出しになっておられるように、現実的にその地域をよくわかっていて、掘り起こし機能を発揮しながら、実際にネットしていくというところでは、相談機能の今までの実績としても、社会福祉士も加わってやっていくという形がいいのではないかと思います。

 とにかく地域の実情に合わせた体制を、皆さんがいろいろ書いておられるように、在支診とか訪問看護ステーションとか、いろいろ携わっている人たちを中心にネットワークをつくっていく上で、地域緩和ケア連携調整員を社会福祉士も担っていくという形がいいのではないかと思います。

 それから、相談の部分で、看取りケアの充実ということも出しました。遺族会、遺族の相談も引き続き受けておりますので、特に多くの拠点以外の医療機関でみとられている方の遺族の語りでは、看取りのケアに課題が非常に大きいという現状を相談窓口から感じております。ですので、こういう点も教育研修に盛り込んでいただけたらと思います。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 何か御質問ございませんでしょうか。よろしいですか。

 それでは、平原構成員から御発表をお願いします。

○平原構成員 お時間、ありがとうございます。

 私からは、循環器疾患及び非がん疾患全般における緩和ケア推進に関する意見書として出させていただきました。1枚目が本文でございまして、裏に少し資料がございます。

 緩和ケアは、がん、非がんなどの疾患を問わず、場所を問わずに提供されるべき基本的ケアであることは、世界の緩和ケアの歴史から見ても自明のことです。

 今回、本検討会において「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方」が検討課題に挙がったことは、全ての人に緩和ケアが提供されることを望む患者様、家族、そして我々、そういうことを考えている医療者にとっても非常に大きな意味を持っていると考えています。

 我が国においては、近年、専門領域の学会において、各非がん疾患の終末期の緩和ケアのあり方についての議論が活発に行われております。参考資料の2番に、この世紀になってからの各学会の終末期に関する提言あるいはガイドライン、ステートメントをまとめたものを書いております。この知見を持ち寄ることが必要だと思われまして、それなくしては、有効な議論、実効的な施策をつくることはできないのではないかと思います。

 今回、木原構成員、安斉構成員が中心になられた高齢者の心不全のステートメントも出ておりまして、地域の連携のことや終末期のことも書かれておりまして、私もすばらしいものだと拝見いたしました。

 今回、がんの緩和ケアの課題も非常にたくさんありますので、この平場で十分議論することはなかなかかないませんので、できましたら、循環器疾患の緩和ケアを検討するワーキンググループなどのようなものも設置して集中的に議論させていただいたものを、ここで上げていただくという形をとっていただくと非常にいいのではないかと思われます。

 3点目ですけれども、循環器疾患のみならず、先ほどの参考資料2にありますけれども、呼吸器学会や透析学会、老年学会、神経学会、各専門領域でそれぞれ提言等が出ておりまして、これらの学会には終末期の緩和ケアのことを考えていらっしゃる専門の方がかなり育ってきております。そういう領域には緩和ケアが必要でありますし、有効であることは明らかです。今回は、非がん疾患の緩和ケアの第一歩として循環器疾患ということを検討していただくわけですが、今後、非がん疾患全体の緩和ケアに関しての議論をどういうふうに進めていくかというアクションプランができれば、非常にすばらしいのではないかと思う次第です。

 よろしくお願いいたします。

○福井座長 ありがとうございます。

 何か御質問ございませんでしょうか。よろしいですか。

 それでは、先生方に非常に短時間でプレゼンテーションしていただいて、予定外に時間が余ってしまいそうですので、資料の多い細川先生、中川先生は、ちょっと長目に時間を使っていただいて結構ですので、よろしくお願いします。

○細川構成員 御配慮ありがとうございます。

 緩和医療学会には19のさまざまな委員会がございますが、その各種委員会から上奏されたものを委員長がまとめ、各委員長が書かれたものを、私がまた全てをまとめるという形でこの意見書を作成いたしましたが、あくまで提出責任者の私が最終責任を負います。

 まず、第1ですけれども、私、緩和ケアという言葉がない1983年に初めてがん患者さんにかかわって以来、今までずっと1,800人くらいの患者さんとのかかわりがありました。そういった中で、ここまで国を挙げ、さまざまな組織が緩和ケアというものを本邦に浸透させようという大きな流れとうねりの中で、常々不思議に思うのは、緩和医療学講座というものが医学部にほとんど整備されていないということです。79の医学部に19です。

 例えば、日本人に字や算数を教えようとすれば、寺子屋をつくったり、小学校をつくったりするのが当たり前です。もし、目について、目の病気を防ぎ、直し、視力を守りましょうということで眼科が必要となれば、眼科を教える眼科学講座をまず作るというのが当たり前だ誰でも思います。にも関わらず、緩和ケア外来や緩和ケア科を作っているのにその基本的なインフラ整備である講座の設置がなされていないということが非常に不思議です。

 既に10年にわたり、1期、2期のがん対策推進基本計画が示され、実行されてきたわけですが、この2期には「大学等の医療機関では、実習などを組み込んだ緩和ケアの実践的な教育プログラムを策定する他、医師の卒前教育を担う教育指導者を育成するため、医学部に緩和医療学講座を設置するよう努める」と明記されていました。ところが間もなくこの第2期も終わるわけですけれども、今、申し上げましたように、79の医学部のうち19の大学、それもここに示しておりますように、実際に正規の講座となっているところはさらに少ないわけで、がんプロフェッショナルでありますとか企業等々が支援している寄附講座が殆どであります。ですから、将来的に恒久性のない講座がこの19講座の中でさえ多く含まれているのです。

 まず次期のがん対策基本計画におきましては、今後、国策として緩和ケアの国民への普及というものを考えていただくなら、早急に緩和医療学講座をすべての医学部に設置していただきたいのであります。その理由は、非常に多いので、すべて説明できませんが、まずは学生の緩和ケア教育を行うべき講座がないということが第一義です。

 次に、大学に講座がないということは、緩和ケアを目指す医師たちが博士号の資格を得るべく場所がないということになるということです。そうしますと、教育機関とか大きな病院におきましては、博士号、学位を持っているということが就職の条件になるわけですから、この医師たちは長くはそこにはいられないことになります。その結果、緩和ケアを目指す医師が長期・安定的に緩和ケアの教育や実践に従事できないという状況があるということをご理解ください。それが緩和医療学講座の整備を第1に挙げた理由です。

 それから、第2番目、緩和ケア教育ですが、この10年間、ずっと申し上げてきたことですが、研修医の2年必須修得科目の中に緩和ケア研修のPEACEの受講を入れていただきたいということです。医政局が研修医の終了資格や研修カリキュラムに関与されていることから、今までは上手く調整ができなかったわけです。もしこれを早くに実施していれば、先ほど池永構成員から出たような、大学病院やがん診療連携拠点病院以外の病院の医師たちも、全てPEACE研修を受けているという状況ができ上がっていたはずです。毎年8,000人の新卒でございますから、これをぜひ入れていただきたい。できれば、患者との接点、つまり臨床経験を積んだ研修医の2年目の医師が後半の1年間の間PEACEに受講を必須とすることを条件に加えていただきたい。

 これを実行していただくと、現在、健康局のがん・疾病対策課が非常に頑張っていただきました卒後2年から5年目におけるがん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会受講を必須とするという項目が、4年後には必要でなくなるということです。研修医にPEACEを受講させるということが医師への基礎緩和教育への一番の近道ですので、ぜひ盛り込んでいただきたい。

 看護師の緩和ケア教育に関しましては、まず、今後、緩和ケアというものががん以外の疾患に広がるということを考えますと、一言で言えば、end of lifeというところにどうかかわっていくかという基本知識が必要になります。これは疾患だけではなく、普通に老衰で亡くなる方も全部含めてで、緩和ケア精神という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、この概念を看護教育としていただくには、現在、ELNE-Jと呼ばれるエンド・オブ・ライフ、日本語版ができています。これは、小児版もできています。これをコアにして、今後看護師の緩和ケアやエンド・オブ・ライフのケアの研修をやっていきたいということです。

 これは、今後、5ページ、(4)の“がん”以外の疾患に対する緩和ケアに含まれます。そのためには、がんを中心になされた緩和ケア教育、PEACEELNECも多少そこに寄っているのですけれども、これを2つの段階に分けまして、第1段階は、今、言いましたような緩和ケアの精神といいますか、概念といいますか、人はおずれ亡くなる、その際必ず人は苦しい、医療者に何とかして欲しいというところをどうするかという緩和ケア教育の部分と、がん患者さんの症状に分けたり、先ほど出ました循環器疾患、それ以外の呼吸器、神経難病を含めた、そういうところに携わる方々については、少し専門性を高めた専門的緩和教育を行うという2段階に分けた教育をやっていければ、それで対応できるということです。現在、日本緩和医療学会ではその具体的対応を関係諸機関と模索中です。

 4番の“がん”以外の疾患に対する緩和ケアにつきましては、既に先ほど話をされましたので、我々の考える方向性というものと余り変わりがございません。いずれにしても、2つの段階に分けて、まず緩和ケア概論を学ぶということと、それぞれの専門領域を次に専門的に学習していただくということに終始する話でございます。

 こういった緩和ケアががん以外のものに広がると、7ページの健康保険改正が必要になってまいります。「緩和ケア診療加算」や「緩和ケア病棟入院料」は、現在、がん、エイズのみしか算定できません。このためには、がん以外の疾患にも算定できるようにするということが当然必要になってまいります。

 また、先ほども申しましたが、精神科医の常勤がいなければ緩和ケア診療加算ができないというところが、緩和ケアチームがあったとしても、緩和ケア診療加算が算定できていない大きな原因になっております。もちろん、精神科の専門のドクターがいればよりよいのですけれども、この制度があるがために、ほとんど興味がなく、精神科医であるだけで緩和ケアチームに名前だけを貸しているようなことも起こってしまいます。

 それよりも、先ほど言いましたように、がんを扱っている各科のドクターの中で、そういった心理面につきましても対応ができている施設もあります。実際には、院内に精神科医がいれば、専門的なアドバイスを受けることは可能です。もう一度この精度は考え直していただきたい。

 6番目の緩和ケア提供体制でございます。インフォメーションの統合と管理、運営がまずい。先日もがん対策推進協議会がございましたけれども、そこの委員の1人が、みずからががんになられたときに、自分の受ける専門の治療が受けられる場所を調べるだけでも数カ月を要してしまったと話されていました。つまり、全くインフォメーションが得られない。

 私は1991年にイギリスに行ったときにすごいなと思ったのは、国中の緩和ケアが提供できる施設の情報を全部把握している組織があったことです。そこにアクセスすれば、イギリスのどこに行けば、どれぐらいの緩和ケアをいつからどのように受けられるか、全部分かるというものでした。ここは、どの分野でも日本の最も弱い部分であろうが、Palliative Care Information Centerというようなものの設立が必要な時期に来ているのではと思います。

 その他、各地域によりまして、さまざまな緩和ケア提供体制というものがつくられるべきは、ほかの方々もおっしゃっていますので、省きます。

 我々は都道府県がん診療連携拠点病院でございますので、緩和ケアセンターがあります。最初にこの緩和ケアセンターをつくらなきゃならないということで、看護部長のところに相談に行ったときに、ざっと目を通した看護部長が、これは名前は別として、今でももうできているねと言いました。逆に言えば、緩和ケアをある施設でキチンとやろうと思えば、センター設置について書かれている内容ができていてしかるべきということです。

 しかし、都道府県は大きさがさまざまです。京都も一番北から南の端まで行くと、4時間ぐらい時間がかかります。そういった中で、都道府県拠点病院だけに緩和ケアセンターを1つつくったとしても、それでその都道府県の緩和ケアセンターとしての機能を果たせるというのは無理があります。これは、最初に緩和ケアセンターをつくるという話が出たときに、私はもし作るなら、全てのがん診療連携拠点病院に設置すべきであると言いました。そのときはあくまでテストケースで始めるということでございました。残念ながら、今、緩和ケアセンターの現場にいる人たちには、本当に必要かどうかというのを疑問視している方が非常に多いのです。

 ですから、緩和ケアセンターを全てのがん診療連携拠点病院に設置するという方向で行くか、もしくはその廃止も前提として、再考すべきではないかという意見が多いということを、御理解いただきたいと思います。

 最大の問題は、センターと言うと、言葉尻から何かすばらしいものができたように錯覚して思えるのです。実際には名前だけのセンターというものが種を問わずたくさんございます。まず、センターというのは、場所と人が配置されているということがあって初めて機能するものです。人員配置ということを全く考えずに他から人を回してセンターだけを作ってしまったわけです。結果、そこに勤務する人の仕事がただ増えまして、本来、病棟に行って患者や家族と接したい、接すべき時間をそちらに割かれてしまうケース続出です。

 それから、次々と機能評価、アンケート等で資料をつくらなきゃならない。我々の施設も労基が入ってくると問題になるぐらい残業せざるを得ないという状況になっています。今後も続けるのであれば、まず人員配置から入っていただきたいということであります。

 9ページ、8番目、スクリーニングですけれども、この苦痛のスクリーニングに関しましても、私が一般国民の立場なら、苦痛をスクリーニングして、それにすぐに対応するという言葉はすばらしく聞こえます。しかし実際に先行してこのスクリーニングを行ったほかの国では、エビデンスとして有効であるとのアウトカムが結局出てこずに、スクリーニングの意味があるのかと疑問視されいています。評価には、エビデンス、アウトカムが重要と言われるのに、もともとエビデンスやアウトカムのないスクリーニングをいきなり持ち込まれたというのは甚だ疑問です。

 評価時期、評価方法、評価内容といったことを再検討していただいて、負担がふえるだけで形骸化していくと考え、現場の医療者が憂慮していることを御理解いただきたい。

 スクリーニングに関しましては、もしやるなら緩和ケア領域だけではなく、医療全般に対してやる必要があります。病院そのものがスクリーニングという機能を持つように、緩和ケアチーム、緩和ケアにかかわる者は、その中で、緩和ケアに関係するところだけを担当するという形のシステムを考えていただきたい。

 小児緩和におきましては、小児は、がん以外で亡くなる人たちが非常に多い。御存じのように、小児がんというのは年間2,000から2,500人ぐらいですけれども、それ以外の疾患で亡くなる小児がより多いということです。小児がんに関しましては、最初から小児の緩和ケアという大きな括りの中でやっていきたいというのが小児科サイドの気持ちということです。

 もう一つ、医療用麻薬でございますけれども、先ほど麻薬という言葉が盛んに使われましたが、モルヒネ、麻薬という言葉に対して、国民の抵抗感や誤解を消すということはどうやっても非常に難しく限界があります。これは日本に限らず、外国映画などでも、モルヒネというと、リスクの高い薬剤であるとされています。医療用麻薬というものを麻薬取締法の中できちんと規定するのであれば、医療用麻薬については麻薬という言葉を使わずに、一般に医療界で使われるオピオイドもしくはオピオイド鎮痛薬と呼称したほうがいいということを提言させていただきたい。

11番ですけれども、今、皆様方、御存じのように、「WHO三段階“除痛”ラダー」という言葉が盛んに使われます。この“除痛”という用語ですけれども、“除痛”ですので、意味は“痛みを除く”ということです。除痛は医療の中では主に麻酔科領域だけで使われる用語で、実は日本語の熟語としてはこの2字熟語“除痛”はありません。除痛というのは、例えば皆さん方が歯を抜くときに局所麻酔で手術を受けますが、痛みがあればたまらないです。このときの痛みはゼロ、“除痛”すべきということです。それで“除痛”という言葉が麻酔科領域でよく使われました。

 しかし、一般的にはもちろん“除痛薬”などという言葉はありません。鎮痛薬となっています。通常の痛みというものは、“鎮”、つまりある程度おさまればいいということです。実際に現場でがんの痛み、そのほかの痛みの患者さんというのは、11段階痛み評価ですと、下から3番、4番あたりまでで十分で、それ以上の鎮痛薬は要らないとおっしゃる方が非常に多いわけです。

 ところが、除痛率という言葉が使われ、「あなた、痛みがありますか、ありませんか」の質問をしてしまいます。そうすると、少しでも痛みがあれば、“これはだめだ、除痛できていない”と判断される。そうするとそれ以上必要でないオピオイド、麻薬を投与されてしまい、ほとんど寝た状態にしてしまうということが往々にしてあります。

 除痛率96%という施設がありました。驚いて見学に行きました。確かに除痛はされていました。でも患者さんは殆どの方が寝ておられました。つまり、寝てしまうぐらいの量を使わないと、全く痛みのない状態にはならないのです。これはもう麻酔です。除痛は、実際に最初に私ががん患者さんを診ていた30年以上前は、がん病棟というのは絶対自分ではがんになりたくないと思うぐらいひどいものでした。本当に残酷なほどに痛みが放ったらかしの状態で、殺してくれと患者さんが叫び、家族がなんとかしてえと走り回っているという状態が普通の日本のがん病棟でした。

 そういった中で、除痛したい何とか痛みをとってあげたいという気持ちから、この「THE WHO three-step analgesic ladder」というものを「WHO三段階“除痛”ラダー」と訳されたのだろうというその気持ちは痛いほどわかるのです。けれども、英語のanalgesicという単語は、鎮痛もしくは鎮痛薬もしくは鎮痛性のという3つの日本語訳しかありません。analgesicというのは、WHOが考えたのは、本質的には鎮痛薬の書かれているラダーにおきましては「薬」しか書かれておりませんので、鎮痛薬ラダーなのです。

 ただ、日本では鎮痛ラダーとしたほうが受け入れやすいとも考えます。この“除痛”を使っている限り、痛みが少しでもあれば患者には非常に害があるということで、痛みをとるための不必要な更に害となりうる鎮痛薬の処方がなされるということが実は現実になっています。

 もう一つ、時間的に詳しくは話せないのですが、今、5年生存率が平均63%の時代です。乳がんや前立腺がんでは5年生存率は90%を超えるような施設がほとんどで、今は10年生存率も使われ始めています。そういたしますと、がん患者さんであって、がんと直接関係のない腰の痛みや膝の痛み、もしくはがんの治療に伴って生じた痛み等々を持った患者さんが沢山おられます。こういった方の扱いというのは、除痛ではなくて、まさしく鎮痛になるわけです。ところが、がんの患者さんだから“除痛”しなければならないということで、こういった本来のがんそのものの痛みでない患者さんに対しても、不必要に非常に多いオピオイド鎮痛薬、その他の痛みどめが使われているケースが非常に多くあります。

 結論として、もうそろそろ、“除痛”という言葉を除して、普通の“鎮痛”にしてもいい時期が来ているのではないでしょうか。厚労省も含めまして、関係各省、関係学会も含めて、“除痛ラダー”はもともとの適切な訳である“鎮痛ラダー”に変えるべきであることを提言させていただきます。

 地域医療に関しましては、既に多くのところから報告がありました。一つ、地域連携パスというものを導入しろということからすでに10年たちました。どの分野においてもほとんど機能していません。確かにあれば便利と思えるのですがうまくいかないのです。その必要性と効果について、もう一度検証していただきたいと考えております。

以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 何か御質問ございませんでしょうか。

 どうぞ、三宅構成員。

○三宅構成員 大学で緩和ケア講座をつくることは非常に大事だと思うのですが、これも先ほどの議論で出たように、緩和ケアセンターと緩和ケアチームなどの経験から、まず箱を決めてしまうと非常に形骸化したものができてしまうということを非常に危惧します。というのは、大学の特性上、業績とかで教授・責任者が決まってくるので、緩和医療学分野・講座という名前でも、実際には専門性が違って業績の多い人がなってしまう可能性も危惧されるのです。先生のこの案で、例えば学生の卒前の教育であれば、一般の病院とか地域、訪問診療というところと連携した教育の可能性はいかがでしょうか。

 もう一つ、博士号ということを考えると、むしろ大学院の教育になってきますが、そのあたりについて、大学の分野(講座)ができた場合の、先ほどの私が危惧する形骸化してしまう可能性と。それから、教育のフォーカスを卒前に当てるのか、それとも大学院に当てるのか、その辺のことを伺いたいと思います。

○細川構成員 考えや御意見はもちろんいろいろあると思います。しかし長い目で見て、緩和ケアを広めるということ、それから緩和ケア科という言葉が出てきていること、緩和ケア外来を行うということと緩和ケア病棟があるということから、基盤となる講座なしに今後継続していくことは難しいと思います。例えば、私が明日から耳鼻科医ですということは、耳鼻科の講座に鞍替えでもしないと絶対言えないわけです。緩和ケアに関しましては、三宅構成員も御存じのように、突然、明日から私、緩和ケアをやるという方がおられるしまた言えるわけです。こういったことからも質の担保ができないのです。

まず講座を作るからでなければ始まらない、何もスタートしないと考えます。これは国単位で行っていかなければできないことだと思いますので、御理解をお願いいたします。

○三宅構成員 ありがとうございます。

○福井座長 ありがとうございます。

 中川構成員。

○中川構成員 これは、細川構成員が述べられましたが、緩和ケアを担う、とりわけ大学病院での医師のかなりの部分が、いわゆるがんプロで雇用されているという現実があります。そして、予算的には第1期、第2期という言い方ではないのかもしれませんが、現行のがんプロが今年度で終了ということ。また、3期目というか、新たながんプロは、緩和ケアにとって非常に重要だと思いますので、これを改めてこの場で皆さんと意見を共有できればなと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、中川先生から資料9を使ってお願いします。できましたら15分ぐらいでお願いしたいのですけれどもね。

○中川構成員 はい。資料9をごらんください。この資料9は、私、中川と池永構成員、小川構成員、前川構成員の4名からなる連名でございます。私から、この提言書の提案理由、そしてその経緯、構成をお話ししまして、詳細については、この後、池永構成員、小川構成員から御説明いただきたいと思っております。

 2ページ目をお開きいただきまして、ここに本提言書提出の理由、経緯が書いてございます。私どもは、7月の第3回の検討会に意見書を提出させていただきました。この意見書を提出した責任という意味合いを込めて、単なる意見から提案・提言へと深化させる、深めるためにはどうしたらいいかということを構成員の間で協議いたしました。そして、有志を募って勉強会を開催することになりました。ここで論議を深め、次期基本計画の緩和ケア分野について、具体的な提案ができるようにということでお話をしてまいりました。

 この勉強会は、がん・疾病対策課の協力もいただいて、厚労省内の会議室をお借りしながら、8月から10月にかけて1回3時間以上の会議を7回開催し、延べ21時間に及ぶ議論を重ねてまいりました。この勉強会では、私ども構成員のほか、5人の医師を含む8人の専門家にも御参加いただいて、現場の実態を含めた幅広い突っ込んだ議論を重ねてまいりました。たまたまですが、総務省、先ほど話題になりました行政評価も発表されて、拠点病院の緩和ケア提供も不十分という勧告がなされましたので、ちょうど符節を合わせた格好となりました。

 資料9の3ページをごらんいただきたいと思います。ここに目次・構成があります。

 次期基本計画の緩和ケア分野にかかわる分野として、まず「取り組むべき施策」及び「個別目標」を明確にいたしました。(2)(3)でございます。そして、その基本計画が実際に実行されなければ絵に描いた餅になりますので、基本計画を実質的に推進するための方策も重要として論議し、(4)として、実質的に推進するための方策の提言も行っております。15ページ以下になります。

 本提言書は、このように「取り組むべき施策」及び「個別目標」。そして、もう一つ「推進するための方策の提言」、この二本立てという形になってございます。

 それでは、まず池永構成員にバトンタッチいたしまして、具体的な御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○池永構成員 前半部分を池永から御説明させていただきます。

 まず、5ページ目です。緩和ケアの現状でありますが、我が国においては診断時からの緩和ケアという、世界では類を見ない新しい概念での緩和ケアが推進されているところです。その中において、緩和ケア研修、緩和ケアセンター、またがん教育等が取り組まれているわけですけれども、まだまだ緩和ケアが十分ではない。十分に緩和ケアを受けられていない方が4割近くいらっしゃる。総務省の行政調査でもそういう結果が出ている。また、現在、緩和ケア病棟も数はふえていますけれども、質の担保という点においては、日本ホスピス緩和ケア協会の取組等はありますが、まだ十分ではないという現状です。また、依然として医療用麻薬の誤解等もあります。

 また、特に拠点病院以外の病院については、大きな問題が残されています。緩和ケアに関して、十分な知識がない、人的余裕がない。オピオイド鎮痛薬の採用が乏しい等の問題があるという現状と捉えております。

 それに基づきまして、7ページ目から始まります基本計画において「取り組むべき施策」について御説明させていただきます。

 まず、1番目はスクリーニングの問題です。当然、スクリーニングの目標というのは、細川構成員も述べられたとおり、形骸的なものではいけない。単に質問用紙を配ることを目指すことではないというのは当然です。苦痛をしっかりと確認するということ。苦痛を診療の場面で取り上げ、確認し、その問題について話し合うということがなされないことには、スクリーニングのそもそもの目的が達成されないということです。患者と家族は、主治医に痛みやつらさをなかなか訴えることができないという心理状態にある中で、きちんとその苦痛を確認するという体制を取り組むべき施策として提言したいと考えております。

 2番目ですが、患者・御家族への配慮・支援というところであります。前回の基本計画の中でも、主治医の面接において、看護師や医療心理に携わる医療従事者の同席を基本とするような体制が強化されておりますが、このような体制をより一層強化していくべきだと考えております。また、面談後の補足説明や、いつでも相談できるようにすること。特に国は、主治医以外の医療従事者の同席が確実に徹底されているかどうか、拠点病院からの報告を求めるべきではないかと考えています。

 また、希少がんについては情報が不十分であるがために、情報提供をする十分な体制が求められるということでございます。

 3番目、症状緩和の専門家へのつなげ方でありますが、ここにおいては、患者同士や自主的なセルフヘルプグループ、サポートグループ、またはさまざまな専門家の相談支援において、より一層体制が強化されるべきだと考えております。

 4番目でありますが、さまざまな専門職の適正配置について述べております。緩和ケアセンターの問題が細川構成員からも述べられましたが、この提言書でも、できるだけ全ての拠点病院にそのセンターが配置されることが重要ではないかと考えております。センターの意義としては、拠点病院の重要な機能として、緩和ケアがあるということを対外的にも示すためにも重要です。

 また、緩和ケアセンターの役割としては、院内組織のコーディネート、研修管理機能、ケアの質の評価・改善という機能が重要になってまいりますが、このようなものが決して現場の負担にならないように、現場で緩和ケア提供をするスタッフの負担にならないように、病院を挙げて緩和ケアセンターを設置し、これらの機能を持っていただくということが重要だと考えております。しかし、さまざまな理由から、緩和ケアセンターを全ての拠点病院に設置できない場合であったとしても、緩和ケア統括室のようなコーディネート機能と監査機能を持ったものを病院内に設置し、また第三者を含めた外部評価等の監査体制も整えていくことは重要ではないかと考えております。

 5番目でありますが、在宅医療の提供体制です。ここにおいては、拠点病院などの主治医は、早期から地域を担う医療従事者との連携を図るということを挙げさせていただいております。そのためには、病病連携・病診連携は当然のことながら、診診連携、またここで挙げさせていただきましたが、がん患者に対しての「2人主治医制」。病院の主治医に加えてと地域の主治医を配置していくという取組も考えられるのではないか。また、病院看護師と訪問看護師、また病院薬剤師と保険薬局の薬剤師の連携等も今後必要ではないかと考えております。

 6番目でありますが、緩和ケア病床を実際に機能させていく必要性があるということであります。しかしながら、地域においては、さまざまなニーズが2次医療圏によって異なってまいりますので、「地域緩和ケア連携協議会」を設置し、定期的に緊急の相談や受入体制、または地域での困難事例について、拠点病院と地域の医療機関と意見交換をふだんからしておくことが重要だと考えております。それは、病床数の把握、施設数の把握だけでは決してなくて、実際に拠点病院から地域の施設を訪問する、また退院後のフォローを行うということを考えております。

 7番目でありますが、オピオイド鎮痛薬についてでございます。さまざまなオピオイド鎮痛薬がふえてきておりますので、そのような教育研修も地域に向けてしていかなければならないと考えています。

 8番目、医療従事者の研修でありますが、2次医療圏において、医師だけではなくて、さまざまな医療従事者を対象とした研修等を今後、積極的に行う。特に、拠点病院以外の医療機関を対象として、拠点病院は受講状況の把握と積極的な受講勧奨をしていくことが大切ではないかと考えております。

 あと、先ほどから述べられています緩和医療学講座ということ。また、全臨床研修医に対しての緩和ケア研修の義務づけということを挙げさせていただいております。

10番目ですが、緩和ケアは、医療・介護・福祉の基本であり、また患者・御家族が痛み、つらさがなく過ごすことは基本的な人権だという社会を目指すということ。その上で、抵抗感を減らすために医療用麻薬という言葉をオピオイドという言葉に変更することを検討してはどうかという意見も出ております。

 あと、拠点病院以外の緩和ケアの推進に関しては、特に病院単位ではなくて、全てのがん医療に携わる医師に緩和ケアの研修を義務づける必要があるのではないかということ、

拠点病院からさまざまな医療従事者がアウトリーチや共同診療を地域に行うということ、

感染領域においては、感染防止対策地域連携加算という総合監査のようなシステムができ上がっておりますが、緩和ケアにおいての地域連携加算というものも考えられたらと考えております。

12番目、小児緩和ケアでありますが、小児の場合には大人と異なって、さまざまな大きな問題がありますし、長い年月にわたって出てくる問題もあります。特に、拠点病院以外の医療機関であったとしても、小児の緩和ケアに対する研修・実習、また回診、アウトリーチ等も取り組んでいただく必要があるのではないかと考えております。

 そして、3番目の項目として、13ページでありますが、「個別目標」について挙げさせていただいております。

 1番目が、全医療従事者への緩和ケア研修の体制を5年以内に達成すべきだろうということであります。

 あと、臨床研修医の緩和ケア研修については、次期臨床研修医制度の見直しから適用すべきではないかということです。

 緩和ケアセンターについては、機能を明確にした上で、現在の緩和ケアセンターの課題と改善点は何かということを各施設から毎年度報告していただき、地域拠点病院における緩和ケアセンターのあり方を2年以内に検討してはどうかと考えております。

 4番目ですが、拠点病院以外の緩和ケア提供の充実について、地域緩和ケア連携協議会を3年以内に設置し、地域の実情に応じた緩和ケアを協議していただく。その調整役は、都道府県や地域緩和ケア連携調整員が担うということであります。

 5番目、緩和ケア病棟についてでありますが、緩和ケア病棟は現在、認可権限は都道府県にありすので、地域における緩和ケア病棟の機能を明文化し、現況報告を毎年行うべきではないかということであります。また、国はその現況報告書をもとにホームページに公開し、患者・家族に利用していただく。そして、国は緊急緩和ケア機能や療養機能など、機能別の緩和ケア病棟の質の維持・向上のために、2次医療圏における緩和ケア病棟のあり方、適正な配置や目標病床数などについて、3年以内に検討し、5年以内に整備すべきではないかと提言したいと考えております。

 後半部分は、小川構成員から御説明いただきます。

○小川構成員 それでは、池永構成員に続きまして、残りの(4)基本計画を実質的に推進するための方策の提言について述べさせていただきます。小川でございます。

 大きくは、3つの項目に分けております。これは、基本計画を着実に実行するために、その提言とは別に、幾つかこのような点が検討できるのではないかというものをまとめたものでございます。

 まず、マル1で、今後、優先的に取り組むべきことということで、幾つか関連する提案がございます。

 まず、1つは、サミットとここでは書かれておりますけれども、がん診療連携拠点病院あるいは都道府県等の中で成功事例とか、それぞれの試みが現在、余り共有されていないという事情もありますので、そのあたりを各病院あるいは都道府県で情報交換して、その情報を共有する。そして、質の向上を図るシステムが望まれるのではないか。

 また、2番目として、拠点病院の指定要件とか現状報告というのが、今、提出するだけで済んでいるということがありますので、それをPDCAサイクル等に組み込んで改善に生かすなり、あるいはそれぞれの内容を深めるなり、そのあたりの工夫というのが必要になってくるかと思います。このあたりを総務省の勧告とどうつなげるかというのも、一つの工夫のありどころかと思います。

 3つ目は、PDCAサイクルとも関連するのですけれども、実地調査を継続し、現状というものを常にフィードバックをするのが重要ではないか。当然、この中には、今まで進めてまいりました拠点病院というものがありますけれども、同じように拠点病院以外の一般の病院の緩和ケアというものは、実態がほとんどわかっておりませんので、そのあたりを明らかにしたり、あるいは関連する緩和ケア病棟とか地域でのあり方等を検討するのが重要かと思います。

 また、4番は毎回出てきているのですけれども、緩和ケアの定義をいかに共有するのかということ。特に、緩和ケアの診断時からということが、早期からの緩和ケアと混同されるというのがありますので、そのあたりは細かく共有することが重要だと思います。

 5番目は、これも先ほど細川構成員等が御指摘くださったところかと思いますけれども、スクリーニングとか緩和ケアセンターという言葉がある意味ひとり歩きしてしまって、その中で現実に一体何をするのかというのが現場で余り共有されず、そして誤解を招いているという面があると思います。

 スクリーニングに関しましても、先ほど池永構成員が解説くださいましたように、その本来の趣旨が何か。あるいは、緩和ケアセンターと相談支援センターがよく混同されたりするのですけれども、求めるところというのは、院内の横のコーディネートであったり、管理、フィードバックというところですので、そのあたりを現場で共有すれば、このあたりの問題がもう少し整理できるのではないかと思っております。

 6は、先ほど池永構成員が示したように、緩和ケアの研修というものが実際の施策として進むときに、どういうふうにあるべきかというのはもう少し検討すべきところかと思いました。

 2番で、今後、早急に方向性を確認すべきことというものが幾つかございます。

 まず1つは、緩和ケアチームの質というのは、こちらの前々回あたりでも議論が出たかと思うのですけれども、どのように質の向上を図るのかというのが緊急の課題かと思います。これは先ほども出ましたように、緩和ケアというのがなかなかはかれない。外から見てどうするのか、その質の担保ができないということが議論で出ましたように、一体何をもって緩和ケアが提供されているのか、あるいは緩和ケアチームの質が確保されているのかというのが見えないというところで問題となっております。

 専門と言うならば、その保証をどうするのか。特に、緩和ケアチームというものが明日から緩和ケアと名乗ってできてしまっているという状況では、質の担保もできませんし、それで一般病院に普及と言っても、それが質の確保というものには到底至りませんので、そこを明らかにして、質の向上から一歩ずつ固めていくのが重要かと思います。

 同じように、拠点病院の指定要件とも関連するのですけれども、修了バッジ等が出てきているけれども、浸透していない。それならばどうするべきなのかというのも明らかにしていくのが重要かと思います。

 また、基本計画全体を通しての評価です。緩和ケア全体がストラクチャー中心の話が進んでいて、フィードバックがかかっていない。質であるとか具体的にどういうふうに向上させるのかを見えるようにするためには、ある程度患者目線でのフィードバックが重要であろう。特に、幾つか試行されてきました患者体験調査等を利用して、それを各拠点病院のフィードバックに生かすというのは、このあたりの1つ現実的な施策かと思います。

 同じように、医療用麻薬とかも、指標というところの一環で議論になろうかと思います。特に、拠点病院から、今後、一般の病院において緩和ケアをどういうふうに評価していくかというところでは、このあたりの関連調査も重要と思います。

 また、地域連携というところでは、薬剤師の先生等、医療従事者とのかかわり。特に、医師との連携とか、そのあたりはもっと明確にしていくことが重要かと思います。今、がんの治療は外来を中心に動いておりますし、緩和ケアにおいても同じように地域でということが重要になります。特に、薬剤師の先生の病院での活躍というのは非常に目ざましいものがありますけれども、地域でこれをより展開するためには、保険薬局等との連携なり、知識の向上等は1つ重要な柱になるのかと思います。

 緩和ケア研修の今後の方向性等に関しても、先ほど出ましたけれども、具体的な目標の設定が重要かと思います。

 また、8番も池永構成員のところとの関連ですが、相談支援センターの整備・充実というのも、同じように緩和ケアの施策の一環として重要かと思います。これは、がんのカウンセリングという言葉の中で盛り込まれたり、がんサロンの話としてあるのですけれども、その中で十分に広まらない背景は、総務省の指摘のように、質の担保というところが出てきております。現実にがんサロンという言葉の中には、幾つかのグループの運営なり、基本的なプログラムとか技術研修というものが、ある程度ベースとしては必要になりますので、そのあたりのベーシックな情報をどう提供していくかというのは、緩和ケアの1つ柱になるかと思います。

 また、9番で基本計画の達成状況の評価というところで、先ほど出ましたように、PDCAサイクルとあわせて、具体的なプロセスやアウトカムというものを含めた、拠点病院の指定要件等の評価が必要かと思います。

 また、それとあわせて、こういう評価には、ピアレビューとか外部レビューというものもありますので、それは都道府県等がある程度音頭をとってするというのも一つの方策かと思います。

 また、拠点病院の中の情報共有とか研修会等も、前々回のこちらの議論でもありましたけれども、幾つかロールプレイを含めた今後の研修のあり方も重要かと思います。

 最後に、今後の底上げということで、幾つか共有できた面がありますけれども、1つは、都道府県レベルでの取組というものが、全国ではどうしても地域差を埋められない面がありますので、都道府県レベルでそのあたりの情報共有なり、医療従事者の育成等で積極的に動くというのも重要。

 また、幾つか今まで出されてきました報告書等も、今後の提言・検討等にぜひ生かしていただければと思います。

 最後、全体を通して前川さんからまとめていただければと思います。

○前川構成員 まとめる力はないのですけれども、がん経験者として、この中で医療者以外は私だけなので、ちょっと感じたことを話させていただきます。

 最後のページにワーキンググループ報告書のことが書いてありますけれども、ワーキンググループで体を動かして現状を見るということがいかに大切かというのをとても感じました。ですから、今後、ワーキンググループをつくっていただいて、机上の空論とは言いませんけれども、机上で話すことと、実際、目で見て考えるということが大切ではないかなと思います。

 2番目に、緩和ケアセンターのことが出ましたけれども、前の緩和ケア推進検討会のとのときに緩和ケアセンターという話が出まして、それが実現したわけです。そのときに、痛みでとても大変なときに駆け込む場所ができたと、すごく希望を持ちました。でも、現実は、せんだって、ある病院でお話を聞いたのですけれども、緩和ケアセンターができた、そしてがん相談支援センターがある。そうすると、自分たちは何をすべきか役割がわからなくなって、現場が混乱していると聞いております。なので、そこのところも整理すべきではないかと思います。

 それと、修了者バッジのことです。この一番後ろにあります。ワーキンググループですごく考えたのです。今、バッジをつけていらっしゃる先生はいらっしゃいません。この緩和ケアのチラシも貼っているところはありません。ですから、ここも税金の無駄遣いにならないように、何かいい方法を考えて実行してほしいなと思っております。

 基本計画を現場で検討して実行されることを、患者経験者として願うのみであります。

 以上です。

○中川構成員 以上が提言書の概要です。前川構成員がおっしゃった現状については、机上配布資料2、3もお目通しいただいて、実はここに書かれていることが今回の総務省の行政評価とかなり符合しているということです。したがって、まだまだ我々は真剣に改善していく必要があると思います。

 私は、がん対策基本法の立法時からかかわってまいりまして、そして第1期、第2期の基本計画の策定にも関係してまいりました。がん対策推進協議会で第1期から委員を務めさせていただいているのは、門田会長と私だけであります。その経験から申すならば、仮にどんなによい基本計画がつくられたとしても、それが国民あるいは患者さんにきちんと届くものでなければ、まさに絵に描いた餅かなと思っております。

 最前線の医療現場では、多くの患者・御家族が苦しんでいるという現状があり、それは先ほど申し上げた机上配布資料にも実例としてあるわけですけれども、この第3期の基本計画を絵に描いた餅にしないためには、その担保が必要ということであります。申し上げたように、この提言書の中の後半部分、実質的な推進のための具体的な方策を、厚労省においてはぜひ取り入れていただきたいなと思います。

 長時間、お時間いただきまして、ありがとうございます。

○福井座長 ありがとうございました。

 桜井構成員がいらっしゃいましたので、今、いろいろな問題点や提言についてのプレゼンテーションをしていただきましたので、5分程度でお話ししていただければと思います。

○桜井構成員 おくれまして申しわけございません。私のほうからは、机上配布資料5と資料10を使わせていただきたいと思います。

 それから、今、お手元のほうに遺族調査の小冊子が配られているかと思います。それは、私ども患者会として、多くの患者さんの看取りに立ち会っております。その中で、一向に緩和ケアに届いていない現状がございます。そこでおきている現状をどうしても私として数字で物を言いたくて、そういった調査を行いました。現実、私自身の感想としても、この机上配布資料5番にあるような負のスパイラルが10年来、ずっと続いていると思っております。

 どういったことかといいますと、この円環図にあるように、まず最初に介護保険制度が使いにくいということ。これは、平成22年から協議会などの席上、患者会が再三申し出を行ってきておりますけれども、一向に改善されておりません。末期がんという名称をぜひ変えていただきたいと思います。迅速な対応が必要な患者さん等々の名前に変更していただきたいと思います。こういった問題がきっかけになり、患者さんあるいは御家族が、積極的な治療がなかなか難しいということ。それから、緩和ケアを受けようよという一言。それを医療者も家族も患者も受け入れがたい。そして、言い出しにくいという状況がひたすら続いております。

 したがいまして、緩和ケアの中身が幾らよくなっても、患者はそこに到達できておりません。緩和ケア外来の受診者は16%、緩和ケア病棟の利用率は12%しかございません。これが現実です。その理由というのは、知らない、紹介されなかった、この2つが本当に大きいのです。ですので、主治医、治療医のほうとの連携というものをシステムとして用意しない限り、私はこの歯車は動かないと思っております。

 結果として、ここで介護保険を使えませんので、家族の離職も起きております。御家族の方が介護休暇制度を使えないのです。介護休暇制度は御本人が介護認定されないと使えない制度ですので、ほとんどの方が有給休暇なり欠勤なりで対応しているのが現状。100人に1人が離職されております。死亡前半年間、お仕事を持っている方の家族の介護平均日数は19日です。お仕事を持っていない方は、60日間ぐらい寄り添えております。しかし、お仕事を持っている方は仕事を理由に寄り添えていないのが現状。

 その結果として、亡くなった後の遺恨です。見ていてつらかった。しっかり話し合いができなかった。仕事で付き添う時間が限定されたということが出てくるのです。この負のスパイラルを何とかしていただきたい。

 かつ、緩和ケア外来に届いていない現状から、1カ月前まで抗がん剤等の積極的な治療をしていた方が65%もいらっしゃいました。これは、看取りの場所は一般病棟が多いという結果とも私は一致していると思っています。緩和ケアがなぜこんなに届いていないのだろうか?中に入ればいいことがあるかもしれないけれども、届いていないというのが現状です。

 したがいまして、私のほうからは、資料10に意見をまとめました。これは調査結果をもとに、在宅医の先生とか地域の中で緩和ケアの移行、あるいはそことの連携というものが比較的スムーズに行っている地域の患者会の方、それから現場の医療者の方、医師会の先生たちにもヒアリングをさせていただいて、私なりにまとめてみた8つの項目を提案させていただいております。

 まず1つ目は、がん患者版の地域包括支援会議のようなものをやっていただきたい。キャンサーボードは、がんを治すことを考えるボードになっています。そうではなくて、地域の在宅医の方、訪問看護師の方、ケアマネジャーの方、こういう方たちが一緒に参加して考えるような包括支援会議というものを、月に一度は開催していただきたいと思います。

 それから、在宅医との連携の登録システムが非常に有効ではないかと思っております。この中でバックベッドの確保というのは、地元の医師会の方あるいは在宅医をされている方にとっては、後方支援要素として非常に有効です。実際には、これは使われていることはほとんどないです。ないですけれども、こういったものをちゃんと用意していますよということが、姿勢を拠点病院が見せることが私は必要だと思っています。

 3つ目が、介護認定制度へのアクセス強化です。末期がんの名称改定をお願いしたいと思います。

 4つ目は、この緩和ケアの検討会の中で私、初回からずっと申し上げておりますけれども、小児期、AYAがんの療養環境の創出ということ。どこで彼らの看取りを行っているのか。AYA期のがん患者の科学研究費の調査結果では、在宅での療養を望むという声が非常に多く出たのです。にもかかわらず、40歳未満の患者さんは介護保険制度を使えませんので、誰が、一体どうやって見ているのだろうということがわからなくなっております。今、自治体によっては、これを条例で支援するような制度を設けておりますけれども、非常に数少ないのが現状です。ぜひ若年者の療養環境の創出を私は検討していただきたいと思います。

 5つ目は緩和ケア病棟の質です。利用したとしても、痛みがとれていないというケースが実際あります。これは、研修会をきちんとやっていくこと。かつ、研修会の内容についても、私はしっかり見直しをする、あるいは中身をちゃんとアウトカムで見て検証していくことがすごく重要だと思います。緩和ケアというとオピオイドの投与量ばかりが強く言われておりますけれども、それ以外に私ども患者会のところには、栄養管理とか褥瘡管理ですとか、非常にいろいろな生活問題が来ているわけです。そのあたりの内容もぜひ含んだ形で考えていただきたいと思います。

 6つ目は、意思決定支援を考える上で、ACPも研修会の中の話のテーマとして含めていただきたいと思います。特に、これは慢性期の患者さん、非がんの患者さんにも非常に重要だと思っておりますので、ACPの研修も追加していただきたい。

 7つ目は、主治医と緩和ケア医の連携です。治療がなくなったから緩和ケアではなく、両方の診療科を行き来できるような関係性というものをつくっていただきたい。幾ら緩和ケアチームがあり、幾ら緩和ケアセンターがあったとしても、外来なり入院をしない限り、私たちはそれを利用できないのです。ですから、主治医との間を取り持つような橋渡し役を果たすような看護師の配置というのを、ぜひしていただきたいと思います。現状、外来看護師の配置基準1対30、昭和23年のまま変わっておりません。これを変えていただかないと、がん患者はいつまでたっても緩和ケアに届きません。

 そして、8つ目、最後ですけれども、患者の満足度調査が行われておりますが、私はそれと同時に遺族調査というものをしていただきたいと思います。最後の6カ月間の患者の声は、倫理的にも患者自身からなかなか聞き取れない現状があるかと思います。御遺族のケアというものが非常に重要だということは、私はこのがん遺族200人の声の調査を行って痛感いたしました。この遺族調査というのは、継続的に実施し、その結果をもって緩和ケア検討をしていただきたいと思います。

 イギリスでは、遺族調査を2年に一度、定点観測、質の検証がされております。イギリスでは、とれない痛みはないと緩和ケアの先生が断言しておりました。そういう状況が日本でも実現できるように、何としてでも、この検討会の中で、私はこの8つの項目を盛り込んで考えていただきたいと思っております。

 本日は、おくれまして申しわけございません。以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 非常に幅広い、いろいろな問題提起、それから提言をいただきました。あと10分程度時間がございますが、全体討議で特にこういう点を強調してほしいとか、何かございましたら。

 服部構成員、どうぞ。

○服部構成員 今の桜井さんからのお話は、身に詰まされる思いでした。5年ぐらい前からワーキンググループの中でこういうものに携わっていますが、10年後も全く同じ話をしてしまうことになってしまうのではないかという疑問がすごくあります。それで、ずっと前から僕も言っていたのですけれども、1つだけに絞って言いたいと思います。

 細川構成員や、ほかのところからも出ていた大学に講座を設置すること。これによって何が解決するのか、いろいろ考えてみました。全てが完全に解決するわけじゃないですが、結構多くの問題点が解決すると思います。まず、医師全てが学生時代から「人として診るのですよ」というのが、医の倫理とともに徹底されるということ。研修会についても大学で実施することが可能になってくるし、専門医がどんどんできてくれば、地域にどんどん緩和ケアの専門の医師が広がっていく。

 さらに、学際的なものができる。先ほど形骸化という話が三宅先生のほうからも出ましたけれども、今、すでに緩和ケアは形骸化しているので、まず大学の講座をつくることが必要です。仮に外科の教授戦に落ちた先生が来たとしても、それはそれですごくアカデミックなことを、「おれは緩和ケアで徹底的にやるよ」という新しい風を吹き込んでくれるかもしれない。ベースとして、そういう講座があるということが僕は大事だと思います。

 それと、一般の方々が緩和ケアのところに行けない、知らない。それはそうです。緩和ケア科というものが医学部にないから。耳にすることが少なくなります。病気になって初めて、いろいろなところに行く。そのときに緩和ケアのどうこうなんて、一々調べませんので、大学の医学部には、外科、内科、眼科、緩和ケア科があるとなれば、まず緩和ケアという言葉自体も国民全体に広がるということがあると思います。

PDCAサイクル、地域連携、いろいろな問題点があるのですけれども、これも79大学あるわけですし、全県に最低1個ずつはあるわけですから、そういったところにいろいろな機能を持たせるようにすればいいのではないでしょうか。例えば緩和ケア研修会、5年後に全部受けさせるようにしましょうと、何年前から同じことを言っているのですか?この10年で受けなかった先生たちは、仮に3万円払うと言っても受けに来ませんよ。学会には1週間出かけるけれども、2日間の研修には来ないわけですから。

 それよりも、先ほど細川構成員が言った、医政局にお願いして研修医時代に受けることを義務化させる。そして、学生のころから、もっと基本的なところを入れる。そして、国民全員が緩和ケアという名前を知るように、医学部の中に設置するということが、多くの点を解決するのではないかと思います。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 安斉構成員。

○安斉構成員 私も緩和医療学講座の設置に非常に大賛成でして、非がん領域の緩和ケアが推進されていないというのは、今までオンコロジストが中心になって緩和ケアをやってきたということがあると思います。ですから、緩和医療学というものを設置して、全ての領域に対しての緩和ケアというものを充実させることが重要ではないかと思います。

○福井座長 がん対策推進協議会には、文部科学省から委員として出ているのでしょうか。つまり、文部科学行政と厚労行政と突き合わせして、そういう講座をつくってくださいという声が通るようなルートはあるのでしょうか。

○事務局(濱) 文科省からも協議会には御出席いただいて、協議しております。

○福井座長 ルートはあるようです。

 平原構成員、どうぞ。

○平原構成員 済みません、違った点ですけれども、2点、意見を言わせていただきたいと思います。

 がん診療連携拠点病院の最大の問題は、外来での緩和ケアをちゃんと提供されていないということが、恐らく共通した認識かなと思うのです。そこで、先ほど桜井構成員が言われた、治療医をどう巻き込むかということができていないことが最大の問題かなと私自身も思っています。

 苦痛がある時点からスクリーニングするということもいいのですけれども、化学療法が始まった時点で、既に多くの化学療法は延命のために行われているわけですので、その時点で何らかの話し合いが、意思表明を支援することがスタートしないとだめだろうというのは思います。そして、ファーストライン、セカンドライン、サードラインになっていくにつれて状況は厳しくなっていくので、治療が変わるときにきちんとした話し合いを、治療の話だけじゃなくて、どう暮らしたいかとか、今後どうなっていくかという話し合いをちゃんとしていくようなシステムを外来につくるということが、緩和ケアの質をよくする上で、最も肝になるのではないかと思うのです。

 もう一つ、化学療法を中止する基準というのが、先ほどのデータを見て非常に驚きましたけれども、1カ月前まで6割の方がやっていらっしゃるという状況があるわけですね。非常に化学療法も進歩しているので、実際、いつ中止するかというエビデンスはないと思います。ただ、亡くなる前の2カ月の化学療法は余り意味がないのではないかというのが多分世界的に言われ始めていると思いますし、いつやめるべきなのかという基準が明確に、エビデンスというと難しくなるのですけれども、治療医と緩和ケア医の中で話し合いがされていないことが非常に大きな問題じゃないかなと思います。

 その中で、治療の話ばかりずっとやっていくので、情報の偏りがあるということ。患者さんがみずから決める意思表明をするための情報が余りにも偏っているところが、すごく問題じゃないかなと思います。そのためには、先ほどのソーシャルワーカーや看護師や心理職などもそうですし、報告書の中にありました2人主治医制など、地域のかかりつけ医あるいは訪問看護師などがそこにかかわれる、情報が早くからきちんと届くような意思表明プロセスを支援するような仕組みを外来の中につくっていくことが、恐らく解決の最も重要なポイントだと思うので、拠点病院の課題は恐らくそこにあるのではないかと私は思っています。

 もう一点申し上げたいのは、研修についてですけれども、基本的な研修を学部教育、そして初期研修の中に入れるのは大賛成です。それはもっと普及しなきゃいけないと思いますけれども、その上のステップの研修といいますと、実際、世の中で働いていらっしゃる専門職の方の研修、リカレント研修を全て国が決めたりというのは現実的でないように思うのです。これから、基本的な研修以外はティーチングじゃないので、現場のコンテクストに応じた研修が必要ですから、非常に多彩になってきます。

 だから、研修に無料でアクセスできるような、いい研修リソースをたくさんつくることは必要ですけれども、全部これをやりなさいというのは絶対無理があるので、在宅だったり、中小の病院だったり、それぞれのコンテクストでどういう研修がいいかというのは、それぞれの場で枠組みを考えていってやるべきかなと思うので、その辺をちょっと分けて考えたほうがいいと思います。実際、在宅ケアの中では地域緩和ケア普及プロジェクトということで、在宅でどういうふうに研修するかという議論も始まっていますし、東京都の中では看取り支援の委員会の中でそういう研修をやろうという話も、あちこちで始まっているわけですね。

 ですから、そういう研修がたくさんつくられても迷ってしまうだけなので、少ない労力を1点に集中して、それぞれのコンテクストでいいものをつくるという形にしたほうが現実的かなと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 桜井構成員。

○桜井構成員 ありがとうございます。

 大学の中に講座を設けるというのは、私、非常に重要だと思っています。医学は治すことを学ぶ学問だけじゃないのですよね。治せないことをどうするかというのを考える学問というのは、これから必要だと私は思います。ただ、今から配置していったとしても、これは遅効薬でして、かなり年数がかかると思っています。その間に患者は痛みを抱えながら亡くなっていくのが現状です。そう考えたときに、即効薬は何なのかと考えたときには、これは本当につなぐためのシステムというものを用意しない限り、私は問題解決できないと思っています。

 では、医師同士がやったらいいのか。私は少し難しいのかなと思っています。というのは、緩和ケアというのは生活とのかかわりですとか、心理とのかかわりとか、家族背景など社会とのかかわりとか、いろいろ複雑な状況をはらみます。患者としてこうした話がしやすいのは看護師さんです。看護師さんには、子供のことだとか、いろいろな話ができますので、私はゼネラルマネジャー等々が緩和ケアチームに配置されておりますけれども、そことの間を結ぶような専門の看護師さんを配置していただきたい。それが私はシステムを変えるところの一番なのではないかと思っています。

 診療報酬の絡みもあり、非常に難しい話とは思いますけれども、総務省の勧告も入っておりますし、いい加減メスも入れないと、私はもう日本の緩和ケアは進まないと思っております。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 中川構成員。

○中川構成員 今の桜井構成員の件に私も非常に同意いたします。

 桜井構成員の机上配布資料5で、緩和ケア外来の受診者が16%、緩和ケア病棟の利用者は12%。この中で、桜井構成員がその理由として、知らない、紹介されなかったとおっしゃいましたが、実はもう一つ、本人が希望しないというところが非常に大きいのです。私どもも、これは常に日常的に経験するのですが、緩和ケアを中心としてウエートを変えたいというときに、患者さんが緩和という言葉だけは聞きたくないというケースがたくさんあって、これは患者さんに非があるわけではなくて、そこをきちんと伝え切れないのです。

 今、桜井構成員が、例えば治療医と緩和ケア医だけで話すと、そこに患者さんは大きな抵抗感を感じます。そういう意味では、桜井構成員、コーディネーターとしてナースと言われましたが、ここはまさに医師以外の医療者の活躍の場ですね。このコーディネーションは、それはナースのほか、ソーシャルワーカーの方もいると思いますし、ここは非常に重要なことで、緩和ケアが提供されないというのは、少なくとも医師だけの問題ではない。患者さん側もそこは積極的に知ろうというような、主体的に知るという立場になっていただきたいし、それを支える仕組みをつくっていかないと、結局、みんなが不幸になるような気がしますね。非常に重要なポイントだと思います。

○福井座長 田村構成員。

○田村構成員 意思をつないでいくとか、意思をどうしたいのかということを今後話し合う場というところで、資料にも出ていました、面談に必ず私どもソーシャルワーカーが入ったりして、先生が提供される情報がつらかったり、自分にフィットしないなと最初は思うのですけれども、その方がどんな暮らしをしていて、どんな仕事をしていて、このままこれでいいのかと折り合ったり、自分に引きつけて情報を自分の中に入れていくという事には、話し合いがすごく大事です。

 それは、私どもソーシャルワーカーや看護師さんが、その人に暮らしに引きつけて情報を吟味することをお手伝いしながらいくと、実際に自分に何が必要かというところに向いていくというのを、たくさん相談をお受けしながら実感しておりますので、ぜひそういうところも御一緒にチームでやれたらいいのではと私自身も思います。

○福井座長 木原構成員。

○木原構成員 机上配布資料4をごらんください。分厚い資料ですので、お手すきのときに読んでいただければと思いますが、私も安斉構成員もこのステートメントの作成にかかわっておりますので、紹介させていただきます。

 後期高齢者の心不全は、心不全の半数以上を占めるのです。それが何故このようなステートメントを出さなければいけなくなったかの理由でございます。循環器は、今日まで行け行けどんどんでやってきました。とまった心臓をまた動かして、元気にしてみたいな助ける医療ばかりやってきたわけですが、75歳以上の高齢者では、なかなかそういうわけにもいかないのです。

 そこで、いろいろ試行錯誤の末、どういう人は救えて、どういう人は救えないのか、あるいは救えない患者に対して、どういうことが我々循環器医にできるのかということを、3年以上かけて話をしてきたまとめでございます。

 中に、緩和のことであるとか、いろいろなことも入っておりますが、ポイントは、がんであっても、非がんであっても、全部共通しているということであります。心不全というのは非がんの代表と考えていただければよろしいわけですが、今日、循環器領域が立ち至った大きな問題である高齢者心不全を見てみると、拠点病院を中心として循環器専門医がたくさんいる病院に救急車を走らせて、そこに患者を収容したら元気になるという構図では立ち行かなくなったということです。拠点病院を中心として、今までそこで集中的な医療をやってきた管理体制の限界というものが、そこに見えてきているということでございます。

 その背景には、日本の中での人口構成の変化であったり、高齢化社会であったり、そういう社会の要請があるわけでございます。そういう中でどうしたらいいかということを考えたら、先ほどから先生方の中で出てきているキーワードが全く合致するのです。地域を考えないといけないとか、患者さんの在宅状況を考えないといけない、家族の立場を考えなければいけない、あるいはその患者さんの生活環境・社会環境・経済環境を考えないといけないとか。あるいは、早期介入や、日常介入ということをしていく。救急車に乗るようなアップアップの状態になってから、やおら治療をしましょうでは高齢者は間に合わないということです。

 そうすると、元気でへっちゃらなときからの介入が必要です。そうすると、誰がそこで介入するのかといえば、地域のかかりつけの先生、即ち非循環器専門医が関与してもらわないといけないとか、多職種であるとか、いわゆるチーム医療ということが全部出てくるわけでございます。そういう考え方は、今の緩和ケアの考え方、あるいはACPの実践ということと全くオーバーラップする話であります。そういう意味で考えたら、非がん領域の緩和ということは、がん領域の緩和と何ら違わないのではないかということを私どもは強く感じております。

 一部の御意見として、非がんは別に考えようという意見もあったかと思いますが、我々は先輩として、がん領域でこれまでいろいろ開発されてこられた先生方、あるいは関連の方々の御意見を聞きながら充実させていくべき問題ではないかと考えております。あなたたち、どこか別でやってという話には違和感を感じるのが実情ではないかと思います。

 

○福井座長 ありがとうございます。

 そろそろ時間になりました。

 次回の検討会で、本日いただきましたさまざまな御意見をリストアップして、そこでまた御意見を伺って、最終的にがん対策推進協議会に、この検討会の意見として出すことにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最後に、事務局から連絡事項はございますでしょうか。

○事務局(濱) 構成員の皆様方、長時間にわたり、まことにありがとうございました。

 ただいま座長からもございましたように、次回検討会におきまして、本検討会における議論の整理案を御提示させていただく予定でございます。

 次回の検討会開催日等につきましては、事務局より追って御連絡申し上げます。

○福井座長 それでは、本日の会議を終了します。ありがとうございました。


(了)

健康局がん・疾病対策課

代表 03−5253−1111(内線3826)

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