ほぼ全部ステルスマーケティングの糸井重里『ほぼ日刊イトイ新聞』の憂鬱

広告が溢れる街中で、何が適切かを考える暇もなく人は通り過ぎる(写真:アフロ)

山本一郎です。ダビスタ的には気性C安定Cの遺伝子持ちです。

ところで、DeNAのキュレーションメディアが炎上し、無事MERYも焼け落ちる事態となりました。

個人的には、ここでいったん非表示とし、襟を正してDeNAが再出発していただく分には良いタイミングだと思いますし、火をつけた酷い奴など気にせず前を向いて頑張っていっていただきたいと願っております。

これだけカロリー高く燃え上がっているところで箸休め的な記事で恐縮なのですが、おそらくはこの問題、上流にあたるクライアントから広告代理店、そしてこのゴミ記事量産キュレーションメディア、下流にSEO対策と駄目ライターや微妙システムエンジニアによる量産システム、さらには何も知らずにスマホでタイトルだけ見て記事をクリックする一般読者という食物連鎖があるわけでございまして、曼荼羅的にも微笑ましいと思います。

そんな中、この騒動をどこ吹く風で、明らかに広告なのに、広告と明記せず、広告リンクを貼って堂々増収増益を続けている怪企業がございます。

それは、広告業界の雄、コピーライターとして著名な糸井重里さん率いる『ほぼ日刊イトイ新聞』です。

ほぼ日刊イトイ新聞

糸井重里さんのプロデュースで19年間やっとるわけですから、個人営業のホームページの趣を残しているわけですが、実際のところれっきとしたECサイトです。糸井重里パッケージで、脱力的で風流な記事を読ませて、その間に広告を踏ませて「おっ」と思った読者がポチリとする。完全なステルスマーケティングで、せめて「広告記事だ」と分かるような仕掛けぐらい残しておいて欲しいと願う業界関係者などいないかのように平常営業を続けています。

これ、駄目ですから。

で、ちゃんと「株式会社 ほぼ日」が特定商取引法上の事業者となっている”ほぼ日ストア”が運営されているわけですが、それとはお構いなしに通常のほぼ日刊イトイ新聞のコラム一覧である「今日の新メニュー」で気になったタイトルを押すと、毎日いくつかはほぼ日ストアが販売したり、販売提携先となるサイトに飛んで、記事と一緒に商品の説明に入るわけであります。

常識的に、普通の記事だと思ってクリッコしたら物販お薦めページだった、ということを避けましょうね、タイアップの場合や広告、物販に直結するならば、なるだけ誰でも分かるように「広告」とか【PR】とつけましょうね、という穏やかで当たり前の話があります。ある種のゆるふわ系の元祖が、無料コラムと高額商品販売ページ混在のハイブローなサイト構造をしているのは、慎ましい小石川の隣に歌舞伎町があるようなものです。

もはや、このほぼ日刊イトイ新聞そのものが通販サイトなのだと明言してしまって、通販サイトにコラムが載っているんだというはっきりした体裁のほうがよほどリーガル的には美しいと思うんですけれども、問題は糸井重里さんって広告業界の人だから、その存在自体が広告なんじゃねえのと錯覚するぐらいに「広告と糸井重里」が一体となっている点にあります。もうどちらが本体でどちらが糸井重里なんだか分かんない。ネイティブ広告とか広告記事とか記事広告とか誘導記事とか言うことも憚られるぐらい、糸井重里さんから強烈に放たれる広告臭ってのが凄いんですわ。セルフブランディングうまくやって頑張ってサイト更新してきたから特殊なECサイトだし誰もノーマークだろうから上場すんぞー、みたいな勢いでヤバイ。

「糸井重里? 誰?」みたいな若い人からすると、通報として「胡散臭い人が通販サイト立ててるんですけどほぼ全部ステマで上場準備とかしてたらマズくないですか」という話になるんですけど、君は正しい。糸井重里さんといえど、商品ページと通常のコラムページは記述として分かるようにタイトルやページに記載するか、「ほぼ日刊イトイ新聞は通販サイトです」と開き直るかの二択じゃないかと思っております。

やっぱり糸井重里さんにはコピーライターとしての遺伝子とかあるんでしょうか。DeNA南場智子女史に相談して、いちど遺伝子検査したほうがいいと思います。