アーカイブ(ズ)概論

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清原和之、国立女性教育会館平成28年度「女性情報アーキビスト養成研修(基礎コース)」講義資料、2016/11/30

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アーカイブ(ズ)概論

  1. 1. アーカイブ(ズ)概論 清原和之(学習院大学) 国立女性教育会館平成28年度「女性情報アーキビスト養成研修(基礎コース)」 於:東京大学伊藤国際学術研究センター 中会議室(3階) 2016/11/30
  2. 2. アーカイブ(ズ)とは何か?  HHKアーカイブスー過去のなつかしい番組の保存・公開  「デジタルアーカイブ」―文化資源コンテンツのデジタル化 →「優品主義」、長期保存意識の欠落(後藤真、「アーカイブズからデジタル・ アーカイブへー「デジタルアーカイブ」とアーカイブズの邂逅」、NPO知的資 源イニシアティブ『アーカイブのつくりかた 構築と活用入門』2012年)  全国歴史資料利用保存連絡協議会『文書館用語集』(1997年)の「アーカイブズ」 の定義:①史料、記録史料、②文書館(もんじょかん)、③公文書記録管理局、 ④[コンピュータ用語では、複数のファイルを1つにまとめたり圧縮したファイ ルのこと.] ・アーカイブズは「古い」資料か? ➢時間とは無関係 ・アーカイブズは「文字」資料か? ➢文字以外の資料も。形態・媒体を問わず ・アーカイブズは「コンテンツ」重視か? ➢資料「群」の構造と機能を重視
  3. 3. アーカイブズとは何か?  アーカイブズの定義 http://www.ciscra.org/mat/ (1) 業務上の過程で個人又は組織により作成・収受されて蓄積され、並びにそ の持続的価値ゆえに保存された文書。 (2) アーカイブズを保存し、閲覧利用できるようにする建物又は建物の一部。 (3) アーカイブズを選別、取得、保存、提供することに責任をもつ機関又は プログラム。 ⇒人間が社会的な営みを行うなかで生み出され、蓄積されてきたものの総体 =アーカイブズ資料 ※「文書」に限らない(写真、図面、音声記録、映像資料、ビラ、チラシ等々) →資料とそれを生み出した人、資料同士の結びつき=コンテクストの重要性
  4. 4. 「かたまり」として資料を捉える ・フォンドー特定の組織や家、 個人が活動するなかで、有機的 に作成され、蓄積され、使用さ れた記録の総体 ・サブ・フォンドー作成組織の 下部組織(部・課)、あるいは、 資料自体の地理的区分、編年、 機能、主題などのまとまり。 ・シリーズーファイリング・シ ステムに従って編成された、又 は同じ蓄積・ファイリング過程、 同じ機能や活動に由来するため に一つの単位として維持された 文書群。 ・ファイルー文書を組織化した 単位。 ・アイテムー管理上、それ以上 は情報として分けることのでき ない最小単位。 ISAD(G)の階層構造モデル(アーカイブズ・インフォ メーション研究会編訳『記録史料記述の国際標準』北 海道大学図書刊行会、2001年、54頁。)
  5. 5. 「かたまり」として資料を捉える  全体から個別へ。資料群を階層構造のなかで捉える。  26項目の記述要素:レファレンス・コード/タイトル/年月日/記述レ ベル/数量と媒体/作成者名称/組織歴または履歴/伝来/入手先/資料 内容/評価、廃棄処分、保存年限/追加受入/編成/公開条件/複写条件 /使用言語および文字体系/物的特徴および技術的要求事項/検索手段/ オリジナル資料/複製/関連資料/出版書誌情報/ノート/アーキビス ト・ノート/規則または取り決め/記述年月日 ⇒最低限必要な要素 a. レファレンス・コード、b. タイトル、c. 資料作成年月日または蓄積年 月日、d. 数量、e. 記述レベル、+f. 作成者名称、g. 記述年月日 http://www.icacds.org.uk/eng/ISAD(G).pdf
  6. 6. 出所原則 出所(Provenance): 自らの活動をと おして記録を作成、蓄積、あるいは管理 してきた機関または個人。 出所原則:出所の記録/アーカイブズは、 いかなる他の出所のものとも混ぜては ならないという基本原則。
  7. 7. 原秩序尊重の原則 Principle of respect for original order :単一の出所のアーカイブズは、現存してい る関係性や証拠としての重要性、及び作成 者による検索手段の有用性を失わないよう にするために、作成者が確立した配列を保 持すべきであるという原則。
  8. 8. 図書館、博物館におけるアーカイブズ資料  機関アーカイブズ(in-house archives) :ある組織(親機関)によって作成ないし収受された記録を保管するアーカイブズ 美術館アーカイブズの例)カナダ国立美術館 National Gallery of Canada http://www.gallery.ca/en/library/index.php ➢館運営の方針を定める評議会の議事録、展覧会に関する記録、美術館と作家と の間で交わされた書簡、戦争美術の記録、建築記録などを移管し管理 (川口雅子「美術館アーカイブズが守るべき記録とは何かーカナダ国立美術館の事例 を中心に」『国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇』第8号、2012年)  収集アーカイブズ(collecting archives) :親機関以外の個人、家族、組織から資料を収集して保管するアーカイブズ ➢図書以外の地域資料の収集(行政資料、古文書、地域情報誌、ミニコミ、写真、 ポスターなど)
  9. 9. 震災記録の収集、保存活動  「震災文庫」(神戸大学) http://www.lib.kobe-u.ac.jp/eqb/  SaveMLAK http://savemlak.jp/wiki/saveMLAK  「張り紙は地震の生き証人 熊本の司書ら、集めて次世代へ」(朝日新聞 デジタル、2016年11月16日付) ⇒収集された資料をどう整理し、活用するか?
  10. 10. アーカイブズ資料を整理する  Bentley Historical Library(University of Michigan)  https://sites.google.com/a/umich.edu/bhl-archival- curation/processing-archival-collections  なぜ整理することが重要なのか? 「アーカイブズは利用されるために存在する」 ☆整理する人の3つの仕事 ①「どのような資料を保存するか」:評価 ②「どのように保存された資料を編成するか」:編成 ③「調査者が興味を持つ資料を特定し、位置づけるには、資料にどのよう な情報を記述すればよいのか」:記述
  11. 11. 整理の計画を立てる  全ての資料群(収集資料)に対して同じだけ時間をかける必要はない。 :効率的な整理によって、利用者に対する十分なアクセスを提供 ・資料の総体的な重要性や価値 ・利用者にとっての潜在的なアクセス要求 ・利用可能な時間と資源 ・監督者から伝えられる付加的情報 ーレベル1:ある物理的なまとまり(箱単位)で整理する ーレベル2:資料を機能や形態ごとに分類して整理する(シリーズ・レベル) →階層性を持たせた方が良い場合 ーレベル3:ファイル・レベルまで整理する →資料的価値が高く、より高度な調査が見込まれる場合
  12. 12. 資料を評価する  全ての収集資料を保管できない場合、遺すもの・捨てるものを評価 ー遺すもの ・作成者の活動や機能を決定づける重要性を持つもの ・組織の歴史や個人の生活史、特定の学術領域の歴史、社会的・政治的動因、国 家の歴史にとって重要な側面を示すもの ・決定や行動の基礎となる個人の目的や信念、動機を明確にするもの ・BHLの優先的に収集すべきものに合致するもの ー捨てるもの ・作成者によって/について作成されたものではないもの ・公刊物 ・州外の記録 ・ひどく傷んだ資料 ・領収書類 ・管理維持(housekeeping)記録 ・重複する資料
  13. 13. 資料を編成する  編成とは:「資料のコンテクストを保護し、資料の物理的・知的管理を行 うために、資料の出所や原秩序を尊重して資料群を組織化するプロセス」 (Society of American Archivists Glossary http://www2.archivists.org/glossary/terms/a/arrangement)  作成者が資料に与えた秩序を発見する :資料のまとまり、内容の種別、箱やフォルダーのラベルなどから ☆機能、活動、主題、記録種別ごとに編成  資料の順序がばらばらであったり、無秩序に箱詰めされている場合は? →無理に下位のレベルまで編成する必要はない →アルファベット順、年代順が有効な場合も
  14. 14. 資料を記述する  記述とは:アーカイブズ資料を正確に表現すること。資 料が生み出されたコンテクスト(誰によって、 いつ)や階層ごとの簡潔な特徴を記し、アクセス を促進させること →記述の分量や詳細さは資料の重要性、管理上の必要性、利用 者に対するアクセス要件に応じて調整 ◎記述することの意味 ・明確で簡潔な導入を提供すること ・資料群の物理的・知的編成を文書化すること ・資料群の範囲や内容の特徴に対する指示を与えること
  15. 15. 資料を利活用してもらうために  アーカイブズとは何か?  資料を整理し、持続的に保管し、利用可能にすること =アーカイビング(archiving) ・どんな人に利用してもらいたいか? (自分の組織の職員、研究者、地元の人、女性、男性、 お年寄り、子ども、日本人、世界の人々…) …より豊かで創造性のある未来のために
  16. 16. ご清聴ありがとうございました。 (公開にあたり、当日の資料に一部加筆・修正した箇所があります。)

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