ブスから見た「美金」とは、意識が大気圏を突き抜けている考え
最近、「美金」という言葉が流行っているそうだ。
もうこの言葉を聞いた時点で、レベルの高いブスならタンを吐いて、それがつま先にかかっている。
また新しい美容法のお出ましだ。毎年必ず、新しい美容法やダイエットが生まれ、それに飛びついたブスたちが経済をトリプルアクセルさせたあと、それらはそっと消えていく。
別に消えるのは、その美容法が間違っていたというわけではない。どんな方法でもそれなりに効果はあるはずだ。ただ、それを成果が出るまで続けられなかったブスたちが、次の美容法に飛んでいくから廃れていくのだ。ブスというより、もはやイナゴである。
「美金」は美容法というより「次の日が休みの金曜日の夜こそ、遊び歩かずに半身浴など、いつもより時間をかけて美容にイイことをしよう」という、ブスからすれば意識が大気圏を突き抜けている考えである。
よって、最近では「花金より美金!」と言われているようだが、まず花金が三十代以上にしか通じないというトラップがある。
つまり「皆が浮かれている金曜の夜こそ、凡百の女に差をつけるチャンス」というわけである。
もちろん、ブスにとっても金曜の夜は〝差をつけられる〟ビッグチャンスだ。
まず、ブスが金曜の夜に仕事を終えて家に帰り、ドアを閉めた時点で、沢田研二の『勝手にしやがれ』のイントロが流れる。そしてそのまま、3ℓのコーラのボトルを抱いて、朝まで中学のジャージでふざけよう、ワンマンショーで、なのである。
明日が休みの金曜日だからこそ、いつも以上に破天荒に過ごそうというのがブスの発想である。もちろん、お肌のゴールデンタイムなど完無視だ。
ブスにとって「美金」は一週間溜めた洗濯物を週末に洗う感覚
さらに、「寝なければ永遠に金曜の夜」というルールのため「就寝」という概念すらない。あるのは「寝オチ」だけであり、目を覚ますと、そこは床で、見ていたアニメがつけっぱなし。さらに風呂にすら入ってなかったりもするので、梅雨時に放置されたコロッケのような姿で土曜の朝を迎えるのは、まだいい方なのだ。昼、もしくは夕方までワープしてしまうブスもいる。
もちろん、この「美金」とやらに飛びつく、イナゴブスもいるだろう。
しかし、美意識の高い女性とブスの「美金」の捉え方はまるで違う。意識の高い女性は、平素から平均以上のケアをして、金曜にスペシャルケアをしようという発想だ。
一方、ブスは一週間溜めた洗濯物を週末に洗う感覚なのである。つまり、月〜木曜日に、化粧すら落とさず寝ていたものを美金でチャラどころか、「美金するからいいよね!」という感覚で、平素のケアをさらに怠ったりするのだ。
このように、新しい美容法に飛びついては挫折するブスは、一度のスペシャルで今までの邪智暴虐をなかったことにしようとする傾向がある。これは「飲むだけで食ったカロリーがチャラになるサプリ」が主食のブスに似ている。
こういうブスは、「一日も休まずブス、ブス皆勤賞、ブス界の超優等生」なのだが、美人界になると完全な不良なのである。それも、学校も行事もサボりまくりのくせに、たまに捨てられている子犬を拾って好感度を上げようとするような、性質の悪い不良である。
イケメンの不良なら、この方法によりマジで好感度が上がるが、何せブスである。子犬を抱いていても、「昼飯をゲットした人」にしか見えない。
美を手に入れられる女は、週一でうどんが打てるぐらいの継続力がある
「美金」などと言ったら、いかにも優雅で、自分を可愛がっています感があるが、実際はうどんを打つぐらい大変そうである。
まず〝半身浴〟。正直、暑い。そして暇である。暇度としては、ウンコしているときぐらい暇だ。30分間、湯につかるだけといっても、実は相当難易度が高い。特に、平素「湯船に3秒浸かれば風呂に入ったことになる」という3秒ルールを適用しているブスにとっては至難の業だ。
それ故に、本を持ち込んだり、音楽を流したりと、優雅なバスタイムを演出する小物が登場するわけだが、何せ暑いため、本なんてそう落ち着いて読めない。ウンコしてる時の方が湿気もないし、よほど集中して読める。つまり、半身浴というのは、優雅どころかウンコタイム以下なのである。そういうのが平気な人はいいが、早風呂で落ち着きのない人間にはかなりの忍耐を要する。
また、ワンランク上のバスグッズでセルフマッサージ、などと言えば聞こえはいいが、文字通り「セルフ」である。人がやってくれるなら良いが、時間をかけて念入りに、洗ったり揉んだり擦ったりは、はっきり言って重労働だ。
それにスペシャルケアというのは、顔の洗い方ひとつとっても、手順がある。「①を塗って、それを洗い流して、②を塗って、そのあと③を…」など「顔面で、ねるねるねるねでも作ってんのかよ」というくらい、ややこしくて面倒くさい。
1回だけなら良いが、週一でも続けるのは大変だと思う。やはり、美を手に入れられる女は、週一でうどんが打てるぐらいの継続力があるのだ。
しかし、最近の美容法は、なんでも楽に簡単に、さらにオシャレで楽しくできるというイメージを持たせ過ぎな気もする。だから想像と違うことが多く、さらに続かなくなるのだ。
なので、「美金」とか「自分の体にご褒美」とか、しゃらくさい言い方をせず、「高温多湿な場所でのウンコタイムぐらいの難易度(だが効果はある)」くらい、最初から現実的な言い方をしたほうが良いのではないかと思う。
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