安倍晋三首相の在任日数がきのう、第1次政権時と合わせて1807日となり、中曽根康弘元首相を抜いて戦後4位となった。第2次安倍政権が発足する前まで、ほぼ1年で首相が交代していた時代から一転し、久しぶりの長期政権である。
「戦後政治の総決算」をうたった中曽根氏と、当初「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍首相とは憲法改正を目指す点をはじめ共通点は多い。野党が弱体化し、自民党にライバルが少ない状況も似ている。特に今夏の参院選で自民党は27年ぶりに参院でも単独過半数を獲得し、中曽根政権時代と同じように自民党1党支配が一段と強まっている。
しかし、強い政治基盤を背景に旧国鉄(現JR)改革など行政改革で大なたをふるった中曽根氏と比べ、安倍政権の実績はどうか。集団的自衛権を一部容認する憲法解釈の変更や安全保障関連法の成立など安保政策は数の力を頼りに強引に進める一方で、首相自身が「経済が最優先」と言ってきた割には経済政策での成果は乏しいと言わざるを得ない。
首相が絶えず気にしていると言われる株価が堅調なのは確かだが、アベノミクスのおかげで「経済の好循環」を実感しているという国民は依然少ないだろう。「物価上昇率2%」の目標は達成できずに先送りを続け、「景気回復の結果」と自賛してきた税収増も今年度は国の一般会計税収が7年ぶりに前年度実績を下回る見通しだ。今後、新規国債発行額を増やせば財政状況はさらに悪化する恐れがある。
「三本の矢」「地方創生」「女性活躍」「1億総活躍」「働き方改革」と次々とスローガンを打ち出してはいるが、いずれも中途半端になっている印象だ。一部の国民には痛みを伴う構造改革や規制改革も強い政治基盤があるからこそ実行できるはずだが、「中曽根行革」に匹敵するものは見当たらない。
第2次安倍政権ができて間もなく4年になる。にもかかわらず首相が「アベノミクスはまだ道半ばだ」と繰り返しているのは理解に苦しむ。
自民党が党総裁の任期を「連続3期9年まで」に延長すると内定したことから、安倍政権は場合によっては2021年秋まで続く可能性がある。在任期間は戦後最長だった佐藤栄作元首相を上回るばかりか明治以降でも最長になるかもしれない。
だが、まさかそれを前提として「道半ば」と言っているのではあるまい。「まだ道半ばだから今後に期待を」ではもはや通用しない時期だ。
まずはこの4年間の経済政策を政権としてきちんと総括して、国民に示すことだ。「戦後4位」はその作業のための節目とすべきだろう。