オーストリア大統領選で当選確実となり、記者会見するアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏=ウィーン市内で2016年12月4日午後8時22分、三木幸治撮影
【ウィーン三木幸治】オーストリア大統領選の決選投票で、当選が確実となった左派・緑の党出身のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン元党首(72)が4日記者会見し、「この勝利はオーストリアが(右傾化から)変化している合図だ。党派を超えた多くの選挙運動が実を結んだ」と語り、勝利を喜んだ。
決選投票では難民保護を訴えるファン・デア・ベレン氏と難民・移民の排斥を主張した極右・自由党のノルベルト・ホーファー国民議会議員(45)の一騎打ちとなった。
内務省によると、開票率約85%でファン・デア・ベレン氏の得票率は51.7%、ホーファー氏は48.3%。ホーファー氏は自らのフェイスブックで「勝てなかったことは非常に悲しい」と投稿し、敗北を認めた。
欧州連合(EU)初となる極右政党出身の大統領は誕生しなかった。
オーストリアは低い経済成長率や失業率悪化に苦しむ中、昨年は約9万人が中東などから難民申請。今年も既に約3万人以上が申請しており、国民の反発が強まっていた。だがイスラム教徒「排斥」という極端な主張をするホーファー氏は「国家を分断する」などと敬遠され、穏健なファン・デア・ベレン氏が支持された形だ。
オーストリアでは国政の実権は首相にあり、国民議会は連立政権を組む中道左派・社会民主党と中道右派・国民党が過半数を握っている。大統領は国民議会の解散などの権限があるが、選挙戦で両党から支援を受けたファン・デア・ベレン氏は政権と連携して職務を進めるとみられる。
5月の決選投票ではファン・デア・ベレン氏が小差でホーファー氏を破ったが、自由党は「不在者投票の開票で不正があった」として憲法裁判所に提訴。裁判所は選挙やり直しを命じていた。
◆オーストリア大統領選の得票率◆
ファン・デア・ベレン氏 51.7%
ホーファー氏 48.3%
(開票率約85%)