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ロードバイク、狭い視野 「ながらスマホ」の車並み

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(上)特殊カメラで撮影した、ロードバイクでの視線の動き(赤線)。路面とその前方の縦方向に偏っている(下)ママチャリでの視線の動き(同)。縦、左右とも広く見える=いずれも愛知県蒲郡市の愛知工科大で(小塚教授提供)

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 速度が出るロードバイク型の自転車に乗っている時の周囲の見え方は、視線が下向きになるなど車を運転しながらスマートフォンを操作する「ながらスマホ」に似ていることが、本紙と専門家が行った実験で分かった。名古屋市で八月、ロードバイクが歩行者をはねて死亡させた事故でも、運転していた愛知県瀬戸市の男性調理師(54)が本紙の取材に応じ「(顔を上げると)目の前に人がいた」と証言した。専門家は「乗る側が危険性を認識し、場面に応じて速度を落とす必要がある」と警鐘を鳴らす。

 実験は十一月末、愛知工科大の小塚一宏教授(交通工学)の協力を得て、視線の動きを追う特殊カメラを着けた学生ら四人で実施。一般に「ママチャリ」と呼ばれる軽快車とロードバイクを乗り比べ、見え方の違いを調べた。

 軽快車の場合、上半身が起きた姿勢のため、視線が縦、左右方向とも幅広く動いていることが確認できた。これに対し、サドルが高いロードバイクは前傾姿勢になるため視界全体が下向きとなり、視線も手前五メートル前後の路面に集中。数十メートル先を見る縦方向の視線の動きはあるが、左右方向は軽快車の半分以下の範囲(角度)しか見ていなかった。

 「ながら運転」の危険性を研究する小塚教授によると、視界自体が下を向き、縦方向に限られる視線の動きは、スマホのながら運転と共通する見え方。前方の脇から出てくる歩行者などに気づくのが遅れやすいという。名古屋市のロードバイクによる死亡事故で運転していた男性が「目の前に人がいた」と証言した状況も、こうした見え方が影響した可能性がある。

 実験に参加した男子学生(22)は「ロードバイクはこぐのをやめたら周りを見る余裕があるが、こいでいると前傾姿勢なので周囲になかなか目を向けられない」と話した。

 時速四十キロで走った場合、一秒だけ下を向いてもその間に十一メートル進む。自転車は速度規制がないが、小塚教授は「せめて人が多い街中では低速で走るなど、乗る側が安全に配慮すべきではないか」と指摘する。

 (河北彬光)

 

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