筆者の住むイギリスや台湾では、子供の虐待を発見すれば教師や医師でなくてもすぐに警察に通報するという義務が法律で定められています。社会全体が「虐待を許さない」という監視下にあり、たとえ親でも子供を躾のつもりで軽く叩いても誰かが見ていて通報すれば逮捕されます。
今や世界中で、児童虐待が大きな社会問題となっています。日本でも虐待される子供は後を絶ちません。でも日本やアメリカではこうした虐待の通報率が60%以上であるのに対し、実は韓国は29%という非常に少ない数字が。それに反比例するように近年の韓国での児童虐待は増加傾向にあるのが現状です。
離婚率の増加に伴う虐待数の増加
韓国では今、1日当たり11組が結婚し4組が離婚するという割合だそう。それに伴って継母・継父や同居人という家族形態になり、子供が虐待されるケースが増えているのだとか。体罰で育ってきた子供たちが大人になり、次の世代の子供たちを「躾」と称して体罰を加えそれがエスカレエートして虐待となる場合が大半だといいます。
限度を超えた「躾」
韓国での親子の縦の繋がりは日本のそれよりも遥かに厳しく、親が君主となっている家庭では子供はどうしても弱者の立場となります。それを「躾」と称して虐待の凶悪さがエスカレートし、残虐な殺人も増えているという韓国。
韓国の警察庁や保健福祉部が行った調査によると、2010年に把握されている児童虐待件数は約5,700件未満であったのに比べ、4年後では1万27件と77%もの増加率が明らかになったということで、いかに韓国の虐待数が増えているかがわかります。
そして、通報率も日本に比べて2分の1という低さ。虐待の項目は日本同様、ネグレクト(育児放棄)に次いで精神的虐待、そして身体的虐待、性的虐待が挙げられています。これらの虐待の二つが重なった確率は50%という驚異的な数字を打ち出していて、虐待者の80%が子供の親だということも判明しています。
33%が躾と体罰をはき違えた親による虐待
韓国では、20%が両親の社会との隔たりによる孤独が原因の虐待、10%が継母・継父、同居人による虐待、そして最も多いのは33%の体罰を躾とはき違えた虐待という調査結果が出ています。児童虐待をしている約33%が失業中など職についていない人ということも明らかに。
「韓国では虐待はあくまでも家庭内の出来事」
韓国では、家庭内で子供が虐待を受けていても公になることは少ないと言います。それは社会が子供の躾は家庭内のプライベートなことだという観念を持っているから。たとえそれが限度を超えた「虐待」になっていても、犯罪という意識が少ない韓国だからこそ通報率も30%未満という悲しい現状になっているのです。
昔から、韓国では「子供は親の所有物」というニュアンスで子育てが行われてきたそうです。そのため、親が子供に躾として多少の体罰を加えるのも当然のことだという社会が出来上がってしまっているために、現在虐待が増加している傾向にあってもその対策が十分に出されていないといった状況。
0歳~3歳の虐待率も15%未満
1万人を超える児童虐待のうち、15%未満が3歳児以下に対する虐待ということも明らかになっています。親のストレスや社会との隔たりによる孤独、また失業からのイライラなどで虐待を受ける子供たちは、将来、当然それがトラウマになり自分の感情をうまく引き出し表現することができなくなってしまいます。
国営児童保護協会のスタッフは「虐待者を罰するだけでは虐待はなくならない」と指摘。政府では近年、罰則を強化したりと一応の対策は立てて来たものの韓国での虐待数は増加の一方だということです。
これは日本でもいえることですが、虐待が増えれば増えるほど子供たちが安心して暮らせる社会は減っていきます。身体的な虐待を加えなくてもネグレクトだけでも十分子供を死に追いやることができるのです。過去に体罰で育てられた子供たちが大人になって、躾をはき違えて子育てをしていることがいかに危険かということを、国自体が認識する必要があるのではないでしょうか。
でも、伝統的な子育ての文化はその国を作り上げてしまっているために覆すのはなかなか容易ではありません。どこの国でも犠牲になるのは弱者の子供や動物ばかり。増え続けるテロや戦争、貧困、飢餓、そして虐待…悲惨な事件ばかりが溢れる世の中になってしまったのは本当に悲しいことだと思わずにはいられません。
この記事を書いたユーザー
公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。
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