News Up “社会との距離縮める”寺の専門誌

News Up “社会との距離縮める”寺の専門誌
「遺骨をゆうパックで送りつける送骨の実態」「外来動物被害からお寺を守る法」。すべて「お寺の住職向けの専門誌」の記事のタイトルです。ネットで一般の人の間でも話題になっている「月刊住職」というこの雑誌。どんな雑誌なのか取材すると、寺と社会との関わりの課題が見えてきました。
ことしの夏、記者は東京都内の書店で「月刊住職」を手に取りました。都内で雑誌を購入できるのはこの書店を含め数か所だけ。気になる記事があったので探し歩いて手に入れました。

このころ、世間で話題になっていたのはゲームアプリ「ポケモンGO」。各地の寺にモンスターが現れると話題になり、境内での使用を禁止したり、逆に禁止から解禁に転じたりした寺が出ていました。
そのとき月刊住職で特集されたのが「ポケモンGO 各寺院はどう対処すべきか」という記事でした。ここでは、各地の寺の対応や、各宗派によって対応に大きな違いがあることを紹介。さらには、ゲームのアイテムが手に入る「ポケストップ」にお寺の境内が設定されることに法的な問題がないのか?などについて、8ページにわたって詳細に記載されていました。あまりにタイムリーな内容だったのです。

ポケモンGOめぐる対応を紹介

ことしの夏、記者は東京都内の書店で「月刊住職」を手に取りました。都内で雑誌を購入できるのはこの書店を含め数か所だけ。気になる記事があったので探し歩いて手に入れました。

このころ、世間で話題になっていたのはゲームアプリ「ポケモンGO」。各地の寺にモンスターが現れると話題になり、境内での使用を禁止したり、逆に禁止から解禁に転じたりした寺が出ていました。
そのとき月刊住職で特集されたのが「ポケモンGO 各寺院はどう対処すべきか」という記事でした。ここでは、各地の寺の対応や、各宗派によって対応に大きな違いがあることを紹介。さらには、ゲームのアイテムが手に入る「ポケストップ」にお寺の境内が設定されることに法的な問題がないのか?などについて、8ページにわたって詳細に記載されていました。あまりにタイムリーな内容だったのです。

現役住職が編集長

「月刊住職」は誰がつくっているのか?。編集部の住所は東京・港区の芝大門でした。雑居ビルの中に月刊住職の編集部がありましたが、そこに編集長の姿はありません。なぜなら、編集長はお寺の現役の住職だからです。
編集長は、横浜市にある安楽寺の住職、矢澤澄道さん。編集作業は、住職としてのおつとめが終わったあとで、徹夜して作業することも多いということです。住職の息子として生まれた矢澤さんは、ジャーナリズムに興味を持ち、大学を卒業したあと、流通業界紙の記者になりました。そして、26歳のときにみずから創刊したのが「月刊住職」でした。

寺と社会との距離を縮める

矢澤さんが大事にしているのは、「寺と社会との距離を縮めていくこと」です。「ポケモンGO」についても、対応に戸惑う住職の声をひろう一方、歓迎する寺の声をあわせて紹介しました。スマホ用の充電器を用意して歓迎する寺もあれば、「お参りしてから存分にポケモンを捕獲してください」と貼り紙をする寺もありました。

熊本地震が起きた直後には「炊き出し」の方法に注目しました。炊き出しの経験が不足していると悩む寺の声に応えようとしました。記事では、限られた材料で工夫して食事をつくる方法を解説。さらには「釜」の種類や性能、価格や購入方法まで事細かに調べ上げました。

地域のためにお寺ができることは何か。矢澤さんはこの雑誌を通じて伝えようとしているのです。「待っているだけじゃいけない。むしろ時間があれば外に出て行って、人々の心を打つような取り組みをする。その方法をこの雑誌を通じて伝えることができたらうれしい」。矢澤さんはこう話しています。

お供えのおすそ分け

檀家などから寄せられたたくさんのお供え物のお菓子を経済的に厳しい子どもたちに“おすそ分け”する。そんな寺の活動もこの雑誌で紹介されたことがあります。奈良県にある安養寺の住職、松島靖朗さんは、2年前に「おてらおやつクラブ」という組織を作り、お供え物のおすそ分けを始めました。支援団体と連携して、各地の子どもたちに配っています。松島さんは、こうした取り組みが新しい寺の役割だと考えています。

この活動が月刊住職で紹介され、広がりを見せています。記事を見た全国各地の住職から「うちのお寺でも行いたい」と多くの問い合わせがあったそうです。
静岡県伊豆の国市にある正蓮寺の住職、渡邉元浄さんは、松島さんの取り組みを知って、自身の寺でも「おてらおやつクラブ」の活動を始め、現在では事務局のメンバーにもなっています。この取り組み、今では全国の500を超えるお寺が参加し、4400人の子どもが支援を受けるようになりました。

情報共有の場に

記者の知り合いの中には、創刊時から購読している住職もいました。寺院運営のさまざまなノウハウだけでなく、その時代その時代の寺と社会との関わり方についての考察まで。単なる専門誌ではなく、社会との接点に切り込むジャーナリズムの場にもなっているようです。